【ソシャゲ】グラブルのガチャ修正方針は本当に正しいのだろうか?


 

一昨日(2/16)に4gamerに興味深い記事がアップされました。

【山本一郎】ソシャゲのガチャで,本当にヤバい問題はどこなのか

「切込隊長」こと山本一郎氏が、全国地域婦人団体連絡協議会の長田三紀女史と対談したものです。長田さんは消費者問題の専門家として内閣消費者委員会の委員も務める方です。

以前よりソシャゲのガチャについては様々な問題をはらむと指摘されていましたが、今回の退団では、それらソシャゲガチャについて、消費者問題のスペシャリストである長田さんが見解を延べています。

最近発生した大きな問題として、対談の軸にグラブルの「アンチラ問題」が挙げられています。

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アンチラ問題については私も以前見解を書いたので、こちらの記事もご参考いただければと思います。

 

私が読んだ中で、ピンときたのは以下の三点です。

  • 「基本無料」という言い方に問題はないのか
  • ガチャは射幸心を煽る「賭博」ではないのか
  • 課金されるゲーム内アイテムが運営の都合で価値が変動して良いのか

■課金されるゲーム内のアイテムの価値の問題

ソシャゲの多くのアイテムは、安くはない金額(つまりガチャ)によって入手されたにも関わらず、新しく実装されたアイテムのせいで価値が下落するという事が、現状野放しになっています。
価値の下落は運営の継続、つまり運営のマネタイズの都合によって起こされており、決してユーザーフレンドリーといえるものではありません。こうして場合によっては万を越えるお金をつぎ込んだキャラの価値が下落していく事について、今回の対談で取り上げられています。

ユーザーがお金を支払って得られたものには、対価として価値が付加されます。3000円払って買ったものには少なくとも3000円の価値が、ン万円払ったものにはン万円の価値がなければなりません。
しかしソシャゲの場合、より強いキャラやアイテムの実装により陳腐化することは当然のことながら、対戦という仕様のため、強力なキャラクターを手に入れた相手にはかなわないという残酷な現実が立ちはだかります。結果、次々と更新される強キャラ、アイテムを追って課金し続けなければならず、逆に陳腐化されたキャラは本当に価値を失ってしまいます。

そこをごまかすステータスとは別の価値をつけるために作られたのが、(主に)男性のリビドー(性欲)を直撃するセクシーなキャラクターです。これはマーケティングにも積極的に使われ、インターネットに接続すればあちらこちらに胸や胸の谷間や尻を強調したアングルのイラストが貼りまくられています。
(リビドーマーケティングの見解はまた別項で)

陳腐化したキャラでも絵柄が好きとかキャラの造形が好きだと、価値の下落もごまかされがちです。もちろんキャラやイラストに価値観を見いだすように仕向けるのは悪い事ではありません。むしろコンテンツビジネスとしては健全なです。

なおゲーム内アイテムは、法的には物品ではなくサービスなので、実価値(現金に換金できる)はありません。よって価値は運営側が「サービス」の状態によってある程度決めることができるわけですが、それを逆手に課金をエスカレートさせているのが問題なのです。

装備更新によってプレイの継続をはかる仕組みは、もともとMMORPGなどで使われている手段でした。MMORPGもユーザーにプレイし続けてもらうことで収益をあげるビジネスモデルとなっているので、ユーザーを飽きさせないために最強装備を一定のスパンで更新していました。
「初月無料」「基本無料」も、もともとカジュアル系と言われたMMORPGやネットゲームで生まれたものでした。それらの潮流をモバゲーやGREEが受け継ぎ、怪盗ロワイヤル等のソーシャルゲームを生み出していったのは既知の通りです。

なお、これら初月無料、登録無料などのビジネスモデルはゲーム以外にも波及し、特にガラケーのサービスではキャリア自身が初月無料に対応したため、一気に国民に認知されることになりました。
結果としてゲームをはじめとするコンテンツビジネスは、定額商品として販売できる価値を破壊され、追い詰められていくことになります。それは破壊した側のソシャゲ自身にも言えることなのですが。

 

■ガチャは射幸心を煽る「賭博」ではないのか

基本無料というおためごかしが蔓延る中で、ガチャという集金手段がやたらとクローズアップされ問題視されるのは、ガチャという方法が荒稼ぎできてしまう危険な側面を一切解消していないからです。

対談の中でもこのように延べられています。

長田氏:
だから私は,同じゲームだといっても,PlayStationやWii,Xboxなどのゲーム機で,最後まで遊べるデータも入って5000円,6000円という値段をつけて売られているゲームと,ソーシャルゲームのように後からいろいろ出てくるゲームとで,同じ仕組みや法律で判断されるのはおかしいのかなぁ,と思うんです。もともと同じ「ゲーム」でも,それはもう違うものじゃないのかしら,と。

山本:
なるほど。

長田氏:
だから,コンプガチャの絵合わせやまもと註:景表法上のカード合わせのときに,とりあえずガイドラインで「そういう商売の仕方は駄目ですよ」と伝えたつもりだったのに,結局ほかの方法を編み出して,ある種消費者を騙すような方法が出てきてしまったというのは,行政もどうにかしないといけないし,業界も低きに流れないようにしてほしいと思うんです。

コンプガチャ禁止の時に消費庁が提示した見解は、絵合わせだからダメということではなく、ガチャという手段そのものに対する警告だったと明かされています。

長田氏:
でも彼らも面白いことを言うんです。最初に数百円を払うのに物凄い抵抗があって,ここでお金を使っちゃいけないんじゃないか,ハマったら大変なことになるんじゃないかと思うらしいのですが,一度課金してみると,次から躊躇しなくなるようなのです(笑)。

山本:
良くご存知で(笑)。ソシャゲ運営会社はそれを良く分かっているので,最初は100円で結構おいしいアイテムを売ったり,低価格で高額ガチャを回せたりする仕組みを用意して,課金やガチャに対する抵抗感を下げるのです。定期的に,割引でガチャを引けるキャンペーンをやったりして,課金率を維持する仕組みをあれこれ運営で考えるのが「腕」だと思われている節がありますね。

長田氏:
まあ(笑)。

山本:
なのでソシャゲ全体でいうなら,コンプガチャ問題で業界全体のトラブルになったあと,ガチャでの供出割合を下げた目玉キャラクターやアイテムでガチャを回させようとする,誇大広告やおとり広告を前提とした優良誤認を促す仕組みが一般化したように思うのです。

長田氏:
出る確率がほぼゼロなのに,出るまでガチャを回させたいという仕組みですね。

長田氏が言う「彼ら」とは、ソシャゲを研究するために自腹でゲームをやっている消費行政の職員のことです。

出る確率がほぼゼロというのは、例えば多くのソシャゲが表示する、ガチャイベントの目玉キャラクターの排出率のことです。
各レアリティの排出率は、コンプガチャ規制の際に表示しなければいけない決まりとなりましたが、最高レアリティは当たり前のように3%~5%と表示されています。
冷静に考えて見れば、当たりが3%~5%って恐ろしい当選確率の低さです。しかも、目玉キャラの排出率アップは、どの程度アップしているのかも分かりません。ユーザーは目隠しの状態で、運営の発表を信じてガチャを回すしかありません。
実際に10%ほどアップしているかもしれないし、1%程度かもしれません。また、アンチラ問題で表面化しましたが、サイトの表示内容と実際の排出率が合っていなければ、アップ率が記載されていたとしても、ユーザー側で確認することはできません。
アンチラ問題の場合は、あまりにも出なすぎて各ユーザーが検証したところ、0.3%という驚異的な数字が弾き出されたわけです。
そりゃ長田氏だって「ほぼゼロ」と言いますよね。誰でも言うと思いますが。

ちなみにJOGAのガイドラインでは、1%以上の確率かつ5万円以内に(募集広告に表示されている)キャラクターが得られる確率を基準とするとされています。PS4よりアンチラの方が高いというのも恐ろしい話ですが、業界全体としては(その高利益率がゆえ)、ガチャを規制するより世間とコンセンサスがとれるレベルで基準を設けましょうということになったようです。

そのような確率で何かを得られるものを、人類は昔から賭け、ギャンブル、賭博と呼んでたわけです。

この記事を受けてかは分かりませんが、同日グランブルーファンタジーのプロデューサー、春田氏が同ゲーム公式サイトでレジェンドガチャに関する修正を発表しました。

レジェンドガチャに関する重要なお知らせ

記事掲載は4gamerの記事掲載30分後。あらかじめ用意されていたものかは分かりませんが、与沢翼氏もビックリな超高速対応です。

この記事をキャプションで要約すると、この三点です。

  • レジェンドガチャに登場する装備品個別の出現確率を表記
  • 提供割合をレジェンドガチャのイベント毎に表示
  • レジェンドガチャページにあるガチャ履歴の撤去

つまり、出現率アップという表記を改め、実際の上昇率を数字で表記し、錯誤しやすい各ガチャの提供割合をイベントごとに掲載、そしてガチャ履歴を撤去するということです。

あれ?指摘されてることとなにかズレてませんか??

 

■「基本無料」という言い方の問題

4gamerの記事を受けての発表かは分かりませんが、もし今回の対談記事を受けての対策発表なら、完全に論点がズレています。

むしろ、長田氏が指摘したコンプガチャ禁止後の対応とまるで変わってません。

表記云々は確かに指摘されていたことであり、ユーザーに対する優良誤認の元になっていました。修正してしかるべきポイントです。
しかし今回の対談で山本氏、長田氏が指摘したのは、確率という運がらみの手段でしか手に入らないキャラクターやアイテムを餌に、ユーザーに課金をさせる「ガチャ」に対する問題、「限りなくゼロに近い(長田氏)」確率でしか入手できないアイテムを「貰える」かのような広告(ゲーム内告知を含む)を行うこと、「基本無料」と大きく打ち出すことにより、まるでお金がかからないように「勘違い」させるやり方の三点です。ガチャ履歴を消せなんて一言も言ってません。

排出率の改善や広告手法の訂正について、春田氏の発表では一切触れられていません。サイゲームスはまたしても小手先で問題から逃げ、暴利を貪るつもりでいるのでしょうか?

最近サービスインしているゲームのLP(ランディングページ)のほとんどが、無料であることを殊更強調しています。ひどいゲームになると、課金形態がゲームをはじめるまで分からないものまであります。ユーザーが遊ぶ前に「仮にお金を使うなら、何に使うのだろう」と確認できないのは、いくらなんでもあんまりでしょう。

「無料で遊べる」「基本無料」と書いてあれば、ユーザーは当然「このゲームはお金かからない」と思います。
「今時基本無料と言ってもホンキでタダで遊べると思ってるヤツはいない」とか「ゲームはじめてのずっと無課金ならタダ」と言う人もいるでしょう。
前者の場合、これまでソーシャルゲームを触ったことない人には当てはまりません。ガチャでアイテムを「買う」ことを知らずに、「無料」という言葉を信じて始めてる人もいます。
後者の場合は、ユーザーからいかにお金を取るかということに運営が頭を使っている、ということを認識したほうがいいです。当たり前ですが基本無料のゲームでも、運営している側は人件費をはじめとした運営費用を毎日支払ってます。最初からタダで遊ばせる気なんてサラサラないと考えたほうが自然です。

もちろん、マネタイズすることは問題ではありません。利益率が良いからといってガチャに頼り、錯誤上等で広告をばらまくやり方が正しいかどうかという話です。
もちろん、ガチャを導入しているソシャゲの全てが暴利を貪っているというわけでもないでしょうし、赤字のところもきっと多いでしょうが、それとこれとは話が別です。ガチャ以外の方法でマネタイズできる手法を考えないと、年内にでも大きな規制(対談で言うところのソーシャルゲーム新法)ができて大変なことになるでしょう。その場合は、「ガチャはアイテムを販売しているのではなく、体験を売ってる」とか言うんでしょうか。

こう整理していくと、MMOで開発された装備更新の概念、基本無料という言い回し、運試しの要素といろんなオンラインサービスの真っ黒なところをギュっと濃縮したものが今のソシャゲであるとも言えそうです。

もちろん、その高利益率ゆえにゲーム業界にお金が流れ、ソシャゲの隆興によって多くの絵師が収入と名声を得られるようになったという正の成果もあります。ただ、それすらも最初は絵師がおかしな編プロや管理能力のないゲーム会社に騙されるという問題が多発したわけで、それが今なんとかこの状態にまで浄化されたという方が正しいでしょう。
その浄化をより進めてくれないか、というのが今回の対談の主旨であり、ユーザーの願いでもあります。

「ガチャ」が倫理的な問題にまで発展しつつある中、お正月以降あまりに雑な運営によって問題を拡大してしまったグラブル。
去年の業績発表の席で、サイバーエージェントの藤田社長は「(ソシャゲ業界において)上位に入り、残存者利益を得られる立場になった」と述べていました。それならば、業界上位の会社として責任を果たしていくべきではないでしょうか。

ゲーマーとして、またソシャゲを楽しんでる1ユーザーとして、業界の健全化を祈ってます。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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