【グラブル】それでもガチャを手放せないソシャゲ


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25日、グランブルーファンタジープロデューサーの春田氏より、年始から続く問題への解決・対応策が発表されました。

「グランブルーファンタジー」の今後の方針について(グランブルーファンタジー公式ページ)

年始から発生している問題と私の見解については、過去の記事をごらんください。

今回の発表では、以下の4点について述べられています。

  1. ガチャの利用回数が300回を超えた場合の新たな機能
  2. トレジャーアイテム【ムーン】3種類を新たに実装
  3. ご不安の念を抱かせてしまいましたことのお詫び
  4. バランス調整の実施

前回発表された各ガチャごとに提供割合を表示するという「改良」を含めると、ガチャ周辺で指摘されつづけてきた問題にほぼ対応したというカタチになります。

もっとも、その対応が果たしてベストなのかというのは、なかなか肯定しづらいところです。運営も期内に設定された予算目標があるのでしょうし、事業として運営しているなら利益を出さなければなりません。対応により大きく売上見込み修正は避けたいところでしょうし、それらを検討した上でのアンサーかと思われます。

 

■9万円でイベントの目玉アイテムをゲット?

今回の発表で特に目を引くのは、1.の「ガチャの利用回数が300回を超えた場合の新たな機能」でしょう。

以下、公式ページからの引用です。

ガチャイベント開催期間中にご利用回数が一定数に到達した際、対象装備品の中から好きな装備品をひとつ獲得できる機能を実装いたします。

(中略)

それぞれの「レジェンドガチャ」は提供割合に掲載されている確率のとおり1回1回抽選を行い獲得される装備品を決定しております。
よって対象装備品がご利用回数300回以内に出る可能性はこれまでどおりございます。

しかし数十回、数百回ご利用いただいても確率による抽選のため対象装備品が獲得できない場合がございますが、今回の機能の実装により、ご利用回数が300回に到達した際、提供期間中に運営が定める対象装備品の中から好きな装備品を1つ獲得できるようになります。

「サイコロを10回振る。10回目に6が出る確率を答えよ」という算数のありがちな確率の問題を思い出しますね。

要は、300回ガチャをやった場合、ガチャイベントで排出設定されたアイテムのうち、好きな「装備」が貰えるという対応です。召喚石はどうなんだろうと気になりますね。

コンプガチャ問題以降に立ち上げられたソーシャルゲームの業界団体JASGA(現在は消滅)やオンラインゲーム協会JOGAの規定では「目当てのハイレアリティアイテムの排出期待値は5万円以下」とされていたはずです。しかし、今回の救済策は300回(10連ガチャなら30回)で好きなアイテムが貰えるという内容です。金額にして9万円です。業界の健全化を求めて規定した金額のおよそ倍です。

この9万という金額は、ガチャ1回について重課金者がつぎ込む金額の平均値かと推測します。逆にいえば、JOGAの規定する5万円、167回だと売上見込みを大きく割り込んでしまうのでしょう。

1回のガチャイベントに9万という金額は、ソーシャルゲームをやらない人、もしくは無課金、少額課金で遊んでいる方には驚きの数値です。9万円という金額が「良心的」だと運営も重課金者も慣らされているのが、年始から続くあらゆる問題の元凶なのに、その点はまったくフォローしないところが恐ろしいです。

 

■お詫びとキャラ能力修正

運営内でどのように解決したかは分かりませんが、今回の発表と対応で、アンチラ問題についての正式な謝罪と返金措置に相当する対応がされました。

運営の誠意は認めるところでありますが、問題は二つあります。

一つは、「結局のところ、アンチラガチャには問題はあったのか」ということです。

今回のお詫びはあくまで「不安を抱かせてしまったこと」に対するお詫びです。ガチャの設定ミスやその他の悪意があった上での謝罪ではありません。

結果的に使用された金額と同額に相当する宝晶石、使用されたガチャチケットを全てユーザーに返還することになったわけですが、瑕疵がないなら謝罪する必要もなく、返金に応じることもなかったはずです。

もう一つは、返還が現金ではなく宝晶石でされたことです。

これではガチャによって心が折れた辞めてしまったユーザーや、ガチャをまわした後、なんらかの理由で引退してしまったユーザーに対しては何ら対応していないのと同じことになります。

もちろん、宝晶石やガチャチケットを戻すことで、運営にとっては「機会損失」が生じることになるでしょうが、金額的にはなんら損失を被りません。その石やチケットはどこかの機会で消費されるだろうし、そのユーザーがグラブルをやめているとしたら、石もチケットも消費されませんので、なんの損失にもなりません。

多少意地悪な言い方をしてしまいましたが、運営の誠意を汲み取りつつ指摘すると、こういう話になるかと思います。

返金には面倒な手続きがあり、かつ迅速に対応ができないため、という理由もあるでしょうが、以前の記事で指摘したように「石を出せばユーザーが許してくれる」というソーシャルゲーム業界の悪弊を地で行ってるような印象がどうしてもぬぐえません。

この二つの事を合わせると「アンチラガチャは問題が(システム的にもビジネス倫理的にも)ありませんでしたが、大きく報道され多くのユーザーが不安(不満)を感じているので、使った分のお金をゲーム内通貨でお返しします」ということです。かなり意地悪な書き方をしましたが、そんなにズレてはいないはずです。

 

■今回の「返還」は世論への降伏か?

当初から運営はガチャについて問題はなかったと言い続けてきました。本当に問題はなかったのかもしれません。
仮に運営側に落ち度がなかったとすれば、世論に負けて今回の対応のような対応をしたという話になり、それはそれで問題です。

瑕疵がないのに謝罪を求められ、(仮想通貨だとしても)返金を強いられるのは理不尽な話です。本来受けてはいけない事でしょう。不安に対するお詫びだけなら全ユーザーに配布した宝晶石3000個だけで良いはずです。

なのに、なぜ返還に応じたのか。なんか釈然としませんよね。

また、今回の発表では、同時期に問題となったベアトリクスの能力修正についても発表されています。
こちらもアンチラガチャで「問題はなかった」とする発表と同タイミングで、「広告での説明と実際の能力に違いありましたが、テキストのミスでした」とシラッと言い放ったものです。
各所で優良誤認ではないかとツッコミを受けた結果、能力を修正するに至ったわけですが、こちらの対応も遅きに失した感が否めません。

こちらも今回の修正で「広告の問題」を認めたことになりますが、当初「問題はない」との姿勢を貫いていただけに、宝晶石の返還同様、世論押されて修正せざるを得なかったのだろうと見えます。ならば、最初から能力を修正しておけば良かったのに、と思ったのは私だけではないはずです。

今回の対応は、SNSやWebメディアの指摘だけでなく、新聞やテレビ報道など予想外の広がりを見せてしまったためでしょう。ここまで大騒ぎにならなければ、返還もなくベアトリクスの能力もそのままだったはずです。

結局世論の高まりがグラブル運営をねじ伏せてしまったという結果になったわけですが、個人的にそれを素直に歓迎することはできません。

だからこそ、「本当に問題はなかったのか」と、真相を知りたいと強く感じるのです。このままでは、「世間がうるさいから対応した」という図式そのまま受け入れてしまうことになりかねません。コンプガチャ規制と同様に、一時的な謝罪と小手先のユーザー対応で逃げ切られてしまいます。

それでは今後も「石を出せば許してもらえる」という空気は変わらないでしょうし、同じような問題をこれからも繰り返すことでしょう。

結局、延々とユーザーが迷惑をこうむる状況は変わらないわけで、同時にソーシャルゲーム業界自体も蝕んでいくことになるでしょう。タコが自分の腕を食べているようなものです。

 

■「基本無料」なのに9万円で保証という「矛盾」

前回からの対応をふくめ、相変わらずちぐはぐな印象を受けるグラブル運営の対応。

そのちぐはぐ感が、なんとか世間の逆風を受け流そうという印象をさらに強くしています。

反省はしていますが、利益率のいいガチャは手放したくない。コンプガチャ時も一見反省し、JASGAを立ち上げて業界の自浄を目指しましたが、成果をあげたとは言いがたい状況でCESAに吸収されてしまいました。

ソシャゲ協会消滅、ゲーム業界の栄枯衰勢(東洋経済ONLINE)

CESAの会長を務めるバンダイナムコゲームスの鵜之澤伸副社長は、「コンプガチャで社会問題を起こしたところから対処療法的に(JASGAが)始まったことも否めない。その後は自主規制や啓蒙活動などしっかりと活動をやっていた」と評価する。

批判そらしには役に立ったJASGAですが、結局対処療法に過ぎず自浄できなかったと証明してしまったようなものです。

あくまで問題になっているのはグラブルの件なので、これがソシャゲ業界全体の問題にしていいのか、という議論はあるでしょう。しかし、業界最大手のサイゲームス(サイバーエージェント)がこのような問題を起こしたということは、やはり業界内に大なり小なり因子はあるのだと思われます。

 

ところで、2009年に発刊された「フリー ~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」という本があります。

当時は月額有料が主体だったインターネットサービスに、テレビ番組のような広告収益モデルを引っさげ、ユーザーに課金させないビジネスモデルが生まれつつある時代でした。

「無料」で多くのユーザーを囲い込み、サービスの価値を作り、ユーザーの数を武器に様々なマネタイズをしていこうという提案をしたこの本は、当時の機運もあって大いにヒットしました。このような本が読まれ支持されるくらいには、2009年のネットユーザーは「お金を使わずサービスを享受する」ことに慣れつつありました。

現在は登録無料が当たり前です。
サービス業者は、いかに無料で体験してもらい、その後継続して利用してもらい、そして有料会員になってもらえるか腐心するようになりました。月額課金モデルのサービスでも、30日間無料は当たり前です。

競合他社とのシェア争いの中で、より多くのユーザーを囲おうとして廉価競争を続け、その最果てが今の「基本無料」が常態化したソシャゲの世界ではなかろうかと思います(ソシャゲに限った話ではありませんが)。

「基本無料」というビジネスモデルを続けている限り、代替のマネタイズ手段は必要となります。
実際に遊んでいながらもお金を払わない「無課金」ユーザーもいる中、サーバー維持費や人件費などの経費も捻出しなければなりません。
よく「基本無料」で、それほど課金の必要ないとされるソシャゲは「良心的」と言われます。しかし、課金の必要があまりないソシャゲが、なぜ良心的ではなない(?)ゲームを押しのけて月間売上げランキングに入ってくるのか。それは当然、どこかの誰かが何人分も課金しているからです。

たかがデジタルデーターと言っても、製作には当然人の手がかかっており、その製作費用をリクープする程度の稼ぎは出さないとなりません。商売ですから。なので課金そのものは問題ありません。
しかし、その「妥当」な金額が、例えば今回の発表のように「1ガチャイベントにつき9万円」で本当にいいのか。そもそも「基本無料」「登録無料」としているサービスが「9万円まで使ったら保証します」と言うのは矛盾ではないのか。
本当にユーザーを無料で最後まで遊ばせる環境を用意していないサービスが、「無料」と言ってしまうのがそもそもの問題と思いますが、それがまかり通っていたのが、インターネットビジネスの世界であり、その極まったものがソシャゲ業界だと言えるでしょう。

ちなみに大雑把に計算すると、目玉となるSSRキャラの当選確率は0.05%(SSRの出現率3%÷期間限定を除くSSR武器と召喚石の総数(120)×2。出現率アップ確率を2倍として計算)。60万円払えば確実にゲットできる確率です。

60万に比べれば9万円って良心的ですね。って、そんなわけありません!
そもそも60万かけないと欲しいカードがゲットできないというのもおかしい話なんですよ。
あくまで確率なので、ゲットできている人はそれよりも手前の金額で排出されているでしょう。でなかったら諦めているわけで。

射幸心とコンコルド効果で逃げられなくなったユーザーが「目当てのものが出るまでやめられない」状況に陥るのがガチャの問題です。それらを全て「ユーザーの運」ということですっぱり投げ捨て、それが許されていたという時点でなにか狂っていたとしか言いようがありませんし、「ガチャ300回で保証」と平然と言ってしまう運営側の心理もまたおかしいとしか思えません。

そもそもコンプガチャ禁止のビッグウェーブのあと、策定された業界内の自主規制では「1%以上の排出率で、かつ5万円程度の課金で目的のアイテムがもらえる確率が望ましい」とされていたはずです。なのに気がつけば9万円です。当時の自主規制とはなんだったのでしょうね。JASGAはホントに弾そらし以外の役にはたっていなかった模様です。

 

■もう「基本無料」モデル、やめにしませんか?

基本無料という言葉が欺瞞であるという指摘は古くからなされていますが、基本無料、もしくは登録無料という言葉に踊らされているのは実はユーザーばかりではありません。運営やネットサービスを行う(行おう)としている人達も同様です。

無料という言葉で大量のユーザーを集めてしまえば、それなりにサービスを維持するためにコストもかかります。一度捕まえたユーザーを逃がさないためにも、よりクオリティをあげていかねばならず、そのために費用もかさんでいきます。利益率をあげるためにギリギリの人数で運営することもあるでしょう、結果としてデバッグしきれず文言がおかしかったりという問題も起きているかと思います。

マネタイズの手法をしっかりと考えず、安易にガチャに頼ったがゆえ、またそのガチャがよりによって荒稼ぎできてしまう環境になってしまったため、新たな収益モデルが確立されずにここまで来てしまった、というのは、ソシャゲ業界にとっても残念な事だったのだろうと思います。

ここまで問題が大きくなった以上、行政も動かざるを得ない状況でしょうが、それでも今回の対応を見ると、コンプガチャ規制の時のように問題をそらしてガチャはなんとか死守しようという姿勢がありありと見えます。

結局、ガチャありきでサービスを立ち上げてしまった以上、ガチャを手放せないわけです。

基本無料という呪縛がサービス側を縛り続ける限り、ガチャが規制されても、替わりの「荒稼ぎ」の手段が生まれていくだけです。
そもそもソシャゲにおける高額課金が最初に問題にされた時は、回復アイテムやアバターだったわけで、それがコンプガチャになり、ガチャになりと世間の批判をそらしつつ高収益モデルを維持できたおかげでいまだにソシャゲなるものが生き残っているのです。

ユーザー側も基本無料に慣れてしまった今日に至っては、最初から課金ありきでユーザーからお金がもらえる仕組みを作る、もしくは別のマネタイズ手段を得るのは難しいことかもしれません。しかし、ソシャゲがゲームの文化として定着した現在、例えばライセンシーなどユーザーから利用料を取らずにマネタイズもできる環境も整ってきましたし、無茶なマネタイズをしないほうが、かえって息が長く続けられるのではないかと思います。例えば「艦これ」のように。

そろそろ賢いゲーム会社は気づいていると思いますが、マネタイズ目標が高い会社は、なかなか移行できないのでしょうね。
そんな会社がソシャゲ全体の評判を悪化させるのは、なんとも残念な話であります。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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