セクシー女優は奴隷などではない


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ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)という人権団体がセクシービデオ業界を糾弾、女性の人権問題として大きく取り上げられ、賛否両論が渦巻いている。大手新聞社にも団体代表者のインタビューが掲載される社会的関心を高めた一方、一部を全部のような決めつける見識や主張、提起内容に批判、疑問がもたれている。

さらに3/3には、日本のアダルトビデオの実態を調査したという報告書をネット上に提示し、さらなる物議をかもしだした。

【報告書】日本:強要されるアダルトビデオ撮影 ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、 女性・少女に対する人権侵害 調査報告書

本問題については各所で解釈、反論等が繰り広げられているので、詳細は他に譲るとして、幣サイトではその主張展開の「危険」や「問題」について言及してみようと思う。

 

■「不理解」を利用し、自論の踏み台にする人権団体

本問題がなぜ容易に拡大し、称賛され、大手新聞社が取り上げるのか。
いくつか理由は考えられるが、まとめてみると下記のようになるのではないか。

  • セクシービデオ業界に対する理解の低さ
  • 性行為を描くというコンテンツ内容自体の倫理上の問題
  • 旧来の価値観からくる賎業的イメージ

昔に比べてイメージは向上したとは言え、事情が知らない人にとっては、依然として昭和頃から引きずられる怪しいイメージのままであろう。また、性行為という近代的道徳観では忌避されるコンテンツ内容ゆえ、嫌悪感を抱く人が多いのも業界の(悪い)特徴であると言える。

その悪いイメージが、HRNのような人権団体に利用されているのだ。

このような人権問題は反論がしづらい。業界人、内部からの反論も多く見られるが、なかなか世間から受け入れられづらいところがある。特殊な業界であるため、お仲間同士でかばっているように思われてしまうためだ。
ファンやコンテンツビジネスに携わる人たちからも、SNS上では人権団体の発言への反論が多く見られるが、それらがいくらSNSで賛同されたとしても、大手新聞社を味方につけ、実際にあった例を掲げて業界批判、コンテンツ批判を繰り返す人権団体にはかなわない。

コンテンツに愛着や理解のない多くの日本人にとってみれば、セクシービデオ業界は怪しいヤクザのビジネスであり、そこで無理やり働かされている女性を擁護するのは道徳的にも「当然」と思うに違いない。

それが事実かどうか、本当に業界の問題なのかとうとうは関係ない。理解する必要もない。実際に違法な契約を結ばされ、セクシービデオに強制的に出演させられた女性が「実在」する以上、性行為を売り物にする卑しい業界全体が糾弾されるのは倫理上当然とも言える。検証などする必要もない。悪いことは悪いのだ…。

こうして多くの人たちは、新聞や大手メディアに掲載された弁護士の発言を、ただただ鵜呑みにするだけとなるだろう。
「理解する必要もなく関心を持つことさえはばかられる」。熱心なセクシー女優ファンでさえ、現実の社会活動…例えば勤務先や家族の前では無関心を装う。
これは、セクシービデオ業界の女優や関係者をフォローするSNSアカウントは、サブ垢やエロ垢という、現実の自分のコミュニティから切り離されたアカウントであることが多いことを見ても明らかだろう。どんなに熱心なファンだろうが、その熱心さがリアルのコミュニティにバレることは、最悪社会的な死を意味する可能性さえある。おおっぴらにファンであることを公言する人のほうが少ない。むしろほとんどいないと言ってもよい。

そのような業界だからこそ「踏み台」としては都合がよいのだ。SNSでどんなに騒がれようが、リアルには大きく影響しない。セクシービデオ業界を取り巻く環境は、いかにセクシービデオが一般的なものになったとしても、そう変わるものではないのだ。

 

■主語のない批判で的を広げるやり方

今回の件の面倒なところは、違法なプロダクションが違法な契約を結び、裁判に「敗訴」した事実があることだ。
しかし、不思議なことに、そのプロダクションがどの会社なのか、どこのメーカーが使っていたのか等々は、実は業界内の人でも分からなかったらしい。

そのため、本問題が大手ネットメディアの記事として掲載されたとき、業界内の人間でさえ「そんなプロダクションがあるのか」という驚いたそうだ。

なんというプロダクションかは、人権団体は名言しなかった。原告者である女性のプライバシーを考慮したためだそうだ。

訴訟されたプロダクションがどこなのか。セクシービデオ業界の人ですら分からないという。
大きなプロダクションおよびメーカーであれば、業界のみならずセクシービデオファンにもすぐに話が広まるだろう。だが、業界歴の長い人でも、その特定ができないような異常な状態が続いている。

これは言い換えれば、業界内の人間も知らないようなプロダクション、つまり業界外で活動するようなプロダクション、メーカーの可能性が高いということだ。つまり、そのプロダクションはもとより遺法なビジネスを行うことを目的に作られた会社ではないだろうか?

すなわち、HRNはそれら業者が不法行為を行う目的で作られた会社、もしくは集団だとわかっていながら、合法的に活動をおこなう会社や業界を糾弾する手段として使っている、ということだ。

 

記事や報告書を読むと、問題のデリケートさから匿名性を盾にし、「プロダクションA」や「被害者B」などの代名詞を使いながら、正規の業界内にすら入っていない存在をむりやりマージし、人権の擁護者、違法行為の批判者の立場を確立しようとしているようにしか見えない。

なお、調査報告書を読めば分かるとおり、HRNは合法的なセクシービデオメーカーと、裏ビデオなどと言われる違法ビデオメーカーの存在を認知しており、その上ですべてを「アダルトビデオの問題」と称している。事実を知った上で、自論の正当性を付帯させるために意図的な混同を行っているのである。
例えば、市場規模の説明にはこうある。

AV 業界の市場規模に関する正確なデータは見つからないが、年間 4000 億円ないし5000 億円程度と言われている。また、年間約 2 万タイトルが、毎年新たに販売されているという。
もっとも、倫理審査団体の審査を通っていない「インディーズ」や「裏ビデオ」などと呼ばれる AV も数多く流通しており、海外サーバを利用した無修正 AV や、ファイル共有ソフトを利用した違法流通も数多く存在していることからすれば、実際の市場規模は上記金額よりもはるかに大きいと考えられる。

「数多く」という言葉が多用され、引用と推測ばかりで本当に調査したのか分からない内容だ。
この文章ひとつ見ても、倫理団体を通した合法的な市場と違法な市場を一緒くたにして書いている。このような混同や錯誤は、報告書の各所に盛り込まれている。事情が分からなければ、報告書に盛り込まれた悪印象を鵜呑みにしかねない。

他にも、ヒアリングを被害相談を行っている団体にのみ絞るなど、公平性を欠いた「リサーチ」手法にも疑問が残る。大手メーカーに取材を依頼すれば、おそらく普通に応対してくれるに違いないし、もっと実態に沿った報告書が作成できたはずだ。

もっとも、HRNが望むような答えは返ってこないであろうが。

 

 

■実は「女性の人権問題」とは別次元の活動

調査報告書では、「女優に出演の諾否の権利がない」「奴隷状態で働かされている」等、ショッキングでおおよその事実と反する言葉が並ぶ。

人権団体の批判の源泉は、「性的な仕事をする女性は哀れな人達」「まっとうな仕事があれば性的な仕事はしない」という、彼女たちの価値観、人権観を基盤とするものだ。
これはHRNが、セクシー女優という仕事を、まっとうな人間がやる仕事ではないと決めつけていることに他ならない。かつ、そのような経済活動を行っている女性は、なんらかの可哀想な事情があるに違いないという決めつけの上に立脚している。

このような発言に対し、風俗嬢やセクシー女優から反意があがる状況になっている。その仕事に誇りをもっている人間からすれば、自信を持って精勤している仕事が「奴隷」などと言われたのだから、プライドのある人間の感情としてやすやすと看過できるものでもあるまい。

余談になるが、女優を取材するライターの中にも、女優に悲劇的なバックボーンをつけようとする失礼な人間がいると聞いたことがある。その人はセクシー女優に「身を落とす」には、悲惨な境遇や人に言えない過去、一般人ではありえない育成環境があるからだ、という決めつけの元に取材を行っていたそうだ。
そのライターがそのような定点から取材を行っていたのは、「エッチが好きだから女優になりました」という女性より、「つらい過去があって女優にならざるを得ない事情があった」女性の方が一般ウケするからだろう。つまり文章の価値が生まれるということだ。

そのような偏見が、本当は一番彼女たちを傷つけているのだ。痛くもない腹を探られ、勝手に気の毒に思われ、悲惨な過去を押し付けられ、結局のところ普通の人間ではやらない仕事といわれる。その上「奴隷」呼ばわりされるのだから、これが差別でなくてなんであろう。勝手に人権侵害の被害者にされたほうもたまらない。

 

■本来の人権保護活動に回帰すべき

セクシー女優やそのほかのセックスワーカーが望んでいるのは、労働者としての権利や法規制などではない。彼女たちの仕事を理解してもらい、世にはびこる様々な偏見を払拭してもらうことではないのか。

単に問題を顕在化し、自分たちがそれに取り組んでいるというポーズをとりたいだけなら、今の路線を続ければよい。だが、的外れな主張のせいで、本来保護すべき女性たちにすら受け入れてもらえない現実は、重く受け止めるべきだ。

実際の問題は何であるのか、何が悪いのかという問題を針小棒大にすることなく、現実的な手段で解決していくことこそ必要だ。そのためには大手セクシービデオメーカーや倫理団体と手を取り合うことも大切だろう。

必要なことは、小さな問題を針小棒大にすることではなく、実際に問題を解決するための手段だ。的外れな主張で行政や司法を持ち出すことではない。しかし、人権問題への意識の高い新聞やメディアは、しばらくはHRNの活動に賛同し、彼女たちを持ち上げ続けるに違いない。

結果的に、これまでも遵法精神の元で活動してきた多くのメーカーやプロダクションが身に覚えのない罪で規制されることになるだろうし、そのような体制下でも悪徳プロダクションや違法メーカーは生き延びていくに違いない。規制の強化が業界の浄化につながることなどない。結果として業界が萎縮していくだけだ。それはセクシービデオ業界に限らない話だが。

こうして、本当の問題が解決されることなく、サンドバッグにされた業界だけがやせ細る。結果として女優たちは仕事を失い、より経済的に困窮することになりかねない。

そのときこそ、彼女たちが本当に「経済的奴隷」となり、望まない仕事をやる時ではないのか。

(文/団長)

 


団長

「てらどらいぶ」管理人。 ゲーム開発のディレクター、動画配信サイト管理人のプロデューサーなどを歴任。 心のゲームは「ウィザードリィ」と「ザナドゥ」。ドラクエとFFならドラクエ派。

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