【ネット】デマは善人の顔をしてやってくる


14日21:26、熊本で最大震度7を記録する大きな地震が発生しました。

その後、震度5~6に達する大きな余震も発生し、予断を許さない状況が続いています。

そんな中、Twitterでは東日本大震災の時と同じく、さまざまなデマが拡散され、問題視されています。
情報の錯綜から発生するデマならまだしも、明らかな悪意、よこしまな承認欲求、そして政治的意図を含んだ様々な「ウソ」が震災直後から流され、拡散され、批判され、消えたり現れたりする混沌とした状態になりつつあります。

災害時の情報錯綜は仕方の無い部分がありますが、そんな中でわざわざ嘘をこしらえて流すデマ屋は、なぜ出てくるのでしょう。
前回の震災や普段のTwitterの状況を見つつ、分析してみます。

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■デマを作る心理

東日本大震災の時もそうでしたが、国難級の大災害が発生すると、誰もが情報収集に躍起になります。

被災地に直接関係がない人でも、例えば仕事であったり、その後の余波であったり、社会の動きの確認などはしておきたいと思うものです。つまり、ニュースや情報の需要が大きく高まる状態となります。

かつてはテレビやラジオが主な情報収集手段でしたが、今はインターネットで能動的に情報の収集ができます。また、複数のニュースソースを同時に確認することも可能となりました。SNSによる情報収集もその手段の一つでしょう。

SNSはどの報道機関も通さず、ユーザー自身が情報を発信します。そのため、現地状況に沿った「生の情報」に触れられる一方、フィルタリングされないがゆえに、悪意のある情報もダイレクトに受信できてしまう「危険性」があります。

SNS普及の一要因として「承認欲求の達成」というものがあります。
もちろん、承認欲求そのものが悪いわけではありません。問題は、その欲求を満たすために社会的道義にもとる行為、発言、ツイートをしてしまうことです。

一時期Twitterは「バカ発見器」と呼ばれていましたが、その「バカな行為」の多くはコミュニティ内の「ウケ」を狙った行為とツイートであり、仲間内での「評価」しか考えずにツイートしたところ、めざといTwitter民に見つけられてしまったというのがだいたいのところでしょう。
残念ながらTwitterはクローズドなSNSではないので、「友達以外に見せる気がない」「フォロワー向けのツイート」だったということが通用しません。勝手に見るなと言われても、パブリックな場で見られるような行為をした場合、見た方には罪がかからないのが日本の法律です。電車の中で機密書類を読んでいたら隣の人に見られてしまった場合、悪いのは見せた方です。見るなといっても視界に入ってしまうのは「仕方ありません」。

この手のおふざけツイートは、自分と感覚を同じくする人に向けて発せられる場合がほとんどだと思います。しかし残念な事に、世の中は同一の価値観を持つ人間ばかりではありません。まして法や倫理に抵触するような内容ならなおさら異にする人の方が多いはずです。

そして災害時は、前述したように情報を求める人達の「視界」が増えます。身内や同一感覚の人達ばかりが情報を探し回っているわけではありません。より「身内向け」「同じような価値観の人向け」のおふざけが、そのような情報シークに引っかかり、世間に広く流出し、結果として深刻なデマ化する可能性もあります。

しかし、人の気持ちがざわついている時こそ、承認欲求を満たす最大のチャンスであるとも言えます。

誰も知らない情報、誰も知り得ない情報をいち早く「リーク」することで、例えばTwitterなら多くのRTや「いいね」が獲得できます。

しかし、誰も知らない情報なんて、もちろん自分も知り得ません。

ならば、情報を作ればいい。

そして作られた情報が真実のように広がっていく。デマの完成です。

 

■世の中には面白がってウソをつく人もいる

世の中には「作り話」が好きな人もいます。
「嘘吐き」はクリエイティブな「フィクション」とは違います。

不確かな情報を元に勝手な確定事項を作り、それをさも真実のように語ってしまう人がいます。自身の知識を過信し、思い込みが激しく、なおかつパニックに陥りやすい人です。
例えば東日本大震災の直後、千葉のコンビナートが爆発して有毒物質が拡散したというデマが流れました。実際にコンビナートの火災はありましたが、有毒物質の拡散はありませんでした。
おそらく最初にデマを作った人は、コンビナートのタンクが爆発した映像を見て、タンクの中には有毒な化学物質が入っているとでも思ったのでしょう。情報の確認が取れないまま、自分の脳内で作られた「真実」を信じて、さも確定事項のようにしゃべってしまう人は結構多くいるものです。あなたの周りにもいませんか? 2chやTwitterの情報を鵜呑みにして、よりおおごとにして話す人。

このような人は根が悪い人ではないのですが、嘘情報の源になってしまうから困ります。リアルで顔を合わせ、表情や普段の発言を知っていれば「いつもの思い込みか」と分かりますが、テキストベースのSNSではそうもいきません。誰かの思い込みが多くの人の手を渡ることで真実(という名のデマ)になり、多くの人がその思い込みを「共有」するハメとなります。

もっと厄介なのは、こういう騒動に乗じて、世間をより騒がす方向に頑張りたくなる人です。実際、年に何回かは「世間を騒がせたかった」という理由で犯罪を起こして逮捕される人がいます。
実生活に不満があったり、社会構造の不公平に嘆いたり、いろんなネガティブな感情が世間への八つ当たりにつながっている事もありますし、単に人が騒ぐ姿を見るのが楽しいという困った思考の人達も少なくはありません。

そのような人達にとって、災害はまさに絶好の機会となります。

確信犯的に「嘘」をつく人が増えてくるのも、このような天災時です。人々の関心が高まる中で、例えば前述の承認欲求だったり、例えば政治的な目的であったりと、またはある人達を差別したいというヘイト目的など、何かしらの指向性を持ってわざと「大嘘」を吐く人もたくさん現れます。
特に福島についてはうちのサイトでも取り扱っていますが、地震後5年たった今でも様々な誤解がSNSやマスコミを通じて日本中を駆け巡っている状況です。

全ての情報は善意で流されているわけではありません。しかし、デマは善人の顔をしてやってきます。その後ろには大なり小なり悪意を隠しているというのに。

 

■一次情報に触れる場合は情報の精査を

地震発生直後、「熊本市内にライオンが逃げ出した」とする「デマ」がTwitter内で拡散されました。
2万以上RTされ、「RTたのしい」と発言。そのツイートが騒がれていることを楽しんでいるようでした。

しかし、話題が大きくなるにつれ批判が殺到し炎上。デマの主はアカウントを消すハメとなりました。

このTweetは大きな非難を浴びましたが、一方で友人からは「だまされるヤツがアホ」「ツイートを消す必要はない」などのフォローもされていました。

その発言に憤慨するのは確かに社会正義的に正しいことですが、しかし「だまされるヤツがアホ」という言葉には、発言自体には同意しないものの、あながち間違ったことではないようにも思います。

このようなツイートは、いわゆる「一次情報」です。誰か(特に専門家)が精査し、正誤を確認した情報とは違います。
同じTwitter内でも誰かによって情報の確認が行われ、引用ツイートされることがあります。そうして検査と加工された情報は「二次情報」となります。二次情報を作ることが上手い専門家はインフルエンサーと呼ばれ、一般にはSNS内での注目度が高くなると言われています。

ネットでは2chをはじめ一次情報を異様にありがたがる風潮がありますが、そのためデマが拡散しやすい土壌ができているとも言えます。

史料で例えると、たとえばある戦争のある戦いについて書かれた日記が2冊あり、どれも内容が違っているとします。実はどちらかは「創作」なのですが、この時点ではどちらが本当かわかりません。そこで前後の史料やその他の状況を確認して専門家が精査し、どちらかが正解ということになりました。
当たり前ですが、その現場にいる人達が必ずしも正しい認識ができるわけではありません。勘違いや見間違い、もしくは脳内のイメージを優先されて語ってしまう、書いてしまうことは良くあることです。
そのような間違った「一次情報」を、一次情報であるというだけで信じてしまうと、故意か偶然かに関わらず誤りを真実と勘違いすることになり、結果として勘違いの連鎖を生み出すことになります。

専門家による情報のフィルタリングはとても大切です。普段私達が目にする報道も、多くは報道機関やジャーナリストが加工、確認を行った二次情報がほとんどです。
その感覚でSNSの情報を受け取ってしまうと、デマや錯誤の拡散に協力してしまう危険があります。

しかし、SNSではほとんどが一次情報であり、なおかつリアルタイムに流されているものであるため、専門家の精査が間に合わないとデマが先行して拡散されてしまいます。

 

■なにより拡散には協力しない

この手のデマや誤情報で厄介なのは、フォロワー数を持つ有名人(芸能人や専門家、もしくは企業や団体、そのキャラクター)が、これらの情報拡散に乗ってしまうことです。

先ほど二次情報の大切さを書きましたが、有名人も必ずしも正しい情報(知識)を持っているとは限りません。社会的地位が高い人だから知見が広いわけでもなければ、公共団体や政党だから必ず正しい事を言っている保証もありません。先述の話と矛盾しますが、二次情報だからといって必ずしも正しいとは限りません。

では、何を信じればいいのでしょう。簡単です、一次情報を見た後、自分で二次情報を確認して、自分なりの正解を出せばいいのです。

先に確度の高い二次情報を得てしまうのが一番ですが、その確度も何を指標にすればいいか簡単には答えが出せません。二次情報を作る際に様々な思惑やバイアスが解釈として大なり小なり入るので、その有名人や報道機関などが、普段どのような情報を発信しているのかなどを見た上で、判断を下すしかありません。

有名人たちによるデマや誤情報の拡散は、単なる錯誤の可能性もあれば、何かしらの意図のもと確信犯的に行われることがあります。

今回の地震でも、有名人によるデマや錯誤のツイートが多数見受けられました。間違いに気づいてツイートの削除、訂正とお詫びを行った人もいますが、そうでない人もいます。さらにデマの上にデマを乗せて、新たなデマを作る人さえいます。

災害時など、情報の需要が極限となった時、必ず情報の錯綜は発生します。

その状況を、デマ屋は利用します。

たかが言葉だと軽視する向きもありますが、その心ない発言で大きな迷惑や偏見を受けている人達もいます。また、恐怖心を煽られたり、パニックになったりと、たかが一言で済まされない状況を生み出しかねません。

デマを拡散するということは、そのような問題にわざわざ荷担するようなものです。

もう一度言います。デマは善人の顔をしてやってきます。「そうかもしれない」「ありえるかもしれない」という錯誤や、「そんなことになってるの!?」という驚き、そして「こうあってほしい」という願望につけこみます。その後ろには、明確な攻撃目標があったり、何かしらの利益達成が隠されていることがほとんどです。

情報が行き交う中、何が正しいか分からないと思いますが、情報を読んだ瞬間に「おやっ」と思った違和感は、意外と正解であることも多いです。
何かヘンだと思ったツイートはRT、もしくはシェアする前に確認しましょう。うっかりRTしたばかりに、誰かを不快にしたり、デマ拡散に協力する結果になりかねません。もし拡散している友人がいれば、指摘をしてあげましょう。聞いてもらえないなら、そっとリムりましょう。

また、晒しの拡散もしてはいけません。どんな理由であれRTやシェア数が増えれば、嘘吐きを喜ばせる結果になります。

震災発生からここ一ヶ月ほど、様々なウソやデマが駆け巡ることになるかと思いますが、騙されないように、デマ拡散の手伝いをしないよう、気をつけていきたいところです。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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