【ポンこれ】野良ボラのおかげで広まる「無能な働き者」という言葉


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M町…ってもういいや、御船町のボランティア体制が一新されたようです。

御船町を応援してくださっている皆様へ(御船町HP)

一旦これまでの体制を終了し、本日4月21日より、御船町社会福祉協議会によるボランティアセンターで対応することになりました。各方面からの支援を引き続きいただきながら、一日も早い復興に向けて町民と一体となって努めてまいりたいと思います。

これに対し、それまで他のボランティア団体を閉め出し、御船町のボランティア活動を取り仕切っていたT…一般社団法人震災復興支援協会つながりの「支援活動資金募集」のクラウドファンディングも、これまで提示されていた「支援活動資金」から「御船町への寄付」に切りかわり、希望者には返金する旨を表明しました。

資金使途についてのご報告(熊本地震の緊急支援活動のためにご支援をお願いします。)

本日御船町からも公式に発表*されました通り、震災発生当日より我々が担って参りました御船町でのボランティア受け入れの役割について、当初の混乱が落ち着き、行政が主導できる状況になってきたため、4月21日より運営を通常通り社会福祉協議会に引き継ぐこととなりました。

(中略)

そういった状況下で、READYFOR(筆者注:クラウドファンディングサービス)を通じて皆様からいただいたご支援について、当初想定していたよりも多くの資金を頂いたこと、また、想定よりも早く機能を行政下に戻せる状況になったことを踏まえ、つながりのスタッフたちとも話をして、我々の活動費として頂くのではなく、全額、我々がお手伝いをしております御船町へ、寄付させていただくことと致しました。

(中略)

また、被災地支援のために使用するという点に変わりはないものの、厳密には資金の使用用途が変更になっておりますので、このような場合にはREADYFORのサービス上のルールに則り、支援金のキャンセルを受け付けて頂けるとのことです。

ご存じのように、御船町はつながりにボランティア活動を任せ、社協には支援要請を行いませんでした。さらに、日本青年会議所も「つながりが支援するのでボランティアセンターを立ち上げない」と宣言していました。

おそらくこの時点では、つながりは自分たちで全てを仕切れると思ったのでしょう。

しかし、その後も900万円弱の活動資金を集めておきながら、流通が回復しているにも関わらず什器類を募集したり、一般人が取り扱えない処方医薬の募集を行うなどの暴挙的な募集を継続。そして依然として実数がつかめないまま食糧等の募集を続けた結果、さばききれない量の物資が集積され、人手が増えずに仕事だけが増えていく状況となってしまったようです。

一方で、御船町役場もつながりに支援活動を「一任」という形になってしまい、役場が能動的に動かない(動けない)状況になっていたようです。

結果、町内各地区への連絡もままなくなり、情報系統は完全に破綻。ボランティア自身も南三陸町での実績があると鳴り物入りで入ったわりには組織力に欠けまた、各地区への物資分配も均等に行えない状況となり、町民からもしっかり運営ができているのか疑問の声があがるようになってきました。

そんな中での実質上の撤退決定となりました。

自粛要請にも関わらず被災地に乗り込み、勝手に活動した挙げ句、周囲とも連携できずにかえって被災地を危機に陥れそうになったつながりに対し、ネット上では「野良ボラ」という言葉まで生み出されました。
今回の野良ボラ騒動は、様々な教訓を私達に残してくれました。
この団体への追求は他所に任せるとして、ポンこれでは今回の事件でクローズアップされた「無能な働き者」というキーワードについて取り上げてみます。

 

■仕事を増やしてこなせないポンコツぶり

大きな被害を受け、途方に暮れているところに「南三陸町での被災地復興ボランティアの経験がある」という人間がやってきた事は、町長をはじめとても輝かしく見えてしまったことでしょう。

本来なら協定にしたがい社協への支援連絡をすべきところ、経験も実績もあるという外側に騙され、ボランティア運営を任せてしまうことになりました。

しかし任せた相手は、勢いとやる気と善意はあるものの、現状の物資は把握できない、被災地ごとの足りない物資の数も確認できないポンコツ集団でした。
本来なら然るべき上位の行政機関や近隣の自治体、地域の団体(消防団とか)との連携を行い、本格的な支援物資が開始されるまでの日数と、それまで持たせるのにどれだけの物資が不足しているかを計算した上で、何がどれだけ足りないというのを、まずは周辺の自治体等に相談するものです。

しかし、このポンコツ集団はよりによって民衆の善意にすがりました。ただただ被災地が悲惨な状況で飢餓に苦しんでいるという状況を「創作」し、SNSを通じて個々人に支援を「ど派手に」要請しました。実際には物資が足りていた状況にも関わらず「食糧が尽きる」「水がない」と被災地と善意の市民の危機感を煽ったわけです。

完全に手順が間違っています。これが全く未経験で、しかも周辺自治体も壊滅して孤立したというなら、このような要請があっても「パニックになっているのだろう」と思われるだけで済みました。問題は、東北での復興支援を行ったことがあるという実績があり、しかもその実績の中で代表が暴行事件を起こして逮捕されているということです。

一方で全社協はボランティア自粛を国民に呼びかけ、熊本県もトラフィック状況が悪化している事もあり、個人での支援を遠回しにお断りしていました。

しかし、この集団は個人支援を集めていたわけです。食糧飲料水、運営に必要な機材、そしてお金と。

募金口座も怪しいとすぐさま話題になったTwitterと違い、うさんくさい感動系バイラルの作り話が爆発的にシェアされてしまう、いわば盲目的な善意のかたまりであるFaceBookでは彼らの活動はたいへん支持され、前述のクラウドファンディングには一週間もたたずに900万も集まる勢いを見せました。

しかし、多額の資金を集めようが、機材を集めようが、運用ができなければ意味はありません。支援開始から5日たち、周辺の地域が次々とリカバリーされていく中、依然として御船町では支援物資の偏りがあったり、分配しきれず集積場に山積みになっていたり、賞味期限がきれて廃棄されたりと、どうしようもない状況に陥りました。

食糧飲料が足りたという情報以降は、医薬品やボランティアセンター運営に必要な物資の募集に切り替えました。

多額の募金を集めた後、すでに流通が回復したにも関わらず機材の募集を行うというちぐはぐな発言に疑問が呈され、また医薬品については素人では扱えない処方が必要な薬品も含まれていたことにより「薬事法違反ではないか」との声もあがりました。

結局、撤退する最後の最後まで、つながりは御船町の支援物資の必要量、備蓄量を把握、活用(分配など)できずに終わったのでしょう。

これも震災直後に派手に窮状を煽り、物資を集めすぎた結果です。大変な場所にボランティアとしてやってきたという、自分たちの存在をアピールしたいため、
簡単に言えば、自分で作った(余計な)仕事を自分でできなくなったという事なんですよね。

彼らはボランティアという「仕事」を作りたくて乗り込んできたのに、作った「仕事」をこなせず、最後は「仕事」に押しつぶされて追い出される結果となりました。

 

■勢いだけのバカほど恐いものはない

この教訓が教えてくれることは、「勢いのあるバカに仕事をさせてはならない」ということです。

威勢がいいと、その人の能力以上に仕事ができるように見えます。ここに高いコミュニケーション能力が加わったり、弁舌のうまさが加わるとなおさらです。

最初のうちは威勢のおかげでテキパキ動いているように見えますが、次第に経験や能力の不足からくるポンコツぶりが見えてくるのですが、馬脚を現す前に精神的な優位を築き上げるため、なんとなく逆らいづらい状況になってしまうような事もままあります。ボランティアのような「無償奉仕(では実際にはないけど)」だと、その状況はより強く表れる傾向にあります。

はっきり言います。「あの人はいい人だから」という大雑把な評価は結果的に害にしかなりません。

「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方」というナポレオンの言葉もあります。
「有能な怠け者は司令官に、有能な働き者は参謀にせよ。無能な怠け者は、連絡将校か下級兵士にすべし。 無能な働き者は、すぐに銃殺刑に処せ」というゼークトの言葉もあります。

無能であることそのものも組織からすれば罪ですが、無能なのに人並み以上にやる気をみなぎらしている人間のほうが、より甚大な被害を及ぼす。
小さいビジネスユニットで活動することが多い現代の知的生産の現場では、一人の無能が周囲の業務量を激増させる(もしくはタスクを譲れない)事も少なくありません。人数が少ない分、一人一人の業務分担が大きくなるので、個人のチカラが大きな影響を与えるためです。
人数を多く使う労働集約の場でも同様です。むしろ多くの人数が働く現場では、一人の無能のせいで、数十人の人の仕事やスケジュールが狂うことさえあります。
ただ、単に無能なだけなら実は問題はありませんしかし、無能な上にアクティブだと、ただでさえ仕事が任せられないところに、そのやる気ゆえ次々と不要な仕事を生み出し、周囲にまでやらなくていい仕事を押しつけはじめます。

無能は無能なりにおとなしくしてくれれば良いのですが、残念ながらそのような無能は自分を有能と勘違いしているので、全くもって手に負えません。例えば現況を把握せずに「食糧が大量に必要」と書いてしまうような人です。

これが単に使われる側の人間であるなら、仕事のミスマッチなどを考えて配置転換すれば良いのですが、しかし上司や先輩だとそうもいきません。
「主導」する立場の人間が「無能な働き者」だと、状況把握ができずに指示も具体性を持たず、ただただ「動け働け」と言うだけになるので、指揮下で働く人は地獄を見ることとなります。

彼らは何らかの存在をアピールしたくなったり、立場が苦しくなると、自分の必要性を知らしめるため、不要な仕事を次々と増やしていきます。例えば現実以上に現場が大変だと言ってみたり、実際にはやる必要のない仕事をやって多忙アピールしたり、そのやる気を自分だけに止めればいいものを、周囲の人達や部下を深夜まで残業させたり駆り出したりとか、そういうことです。今回の御船町でも、そういう事態がありましたよね。

上司がいかにポンコツで無能な働き者であったとしても、部下の立場からはどうすることもできません。特に善意や熱意など、害のない意思で動いている(ように見える)場合は懲罰の対象にもできないので、それとなく気づいてもらうか、さらに上の上長に言って対応してもらうか以外に手立てがありません。

善意と熱意も空回りしているだけなら迷惑なだけです。しかし、長い不況で社会人の意識やらなんやら、とにかく「人材力」というものをフォーカスしすぎた今の日本経済では、どんなポンコツでも熱意と善意があるなら許されるという、精神論の逆ブーストのような事態が各地で観測されています。

どんなにいい人だろうと、ポンコツはポンコツです。およそ200年前にゼークトが看破した人間、そして組織の本質は今でも変わっていません。やる気があっても無能ならしっかりと糾弾する。酷な話かもしれませんが、組織にはそれが必要な時代となったのです。

そういう状況の中で、今回のボランティアによって「無能な働き者」というキーワードがクローズアップされたことは、彼らが残した最大の業績ではないかと思います。

このまま「無能な働き者」という考えが社会に定着し、ポンコツ上司が一掃されることを願います。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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