【連載・Xbox360】なぜXboxは日本で売れないのだろう?


4/20に生産中止を発表したマイクロソフトのゲーム機、Xbox360。
そこそこXbox360ヘビーユーザーだった私が、思い出だったりもろもろを語るだけの連載です。かなり私見まみれですが、あらかじめご容赦のほどを。

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前回、Xbox360はシューティング天国だったという話を書きました。

【連載・Xbox360】さようなら、私の愛したXbo360

オリジナルやアーケードからの移植作も含め、面白いゲームが多数でていたXbox360ですが、日本での販売台数がからっきしだったのは前回に述べた通りです。

なんでこんなに売れなかったのでしょう?

マーケティングがヘタだったから? 初代発売時にはビル・ゲイツが日本のバラエティに出たり、X JAPANがCMやっていたりとそこそこ力が入っていたような気がしますが、それでも日本人にはあまり響かなかったようです。

日本人向けのタイトルがなかったから? いいえ。PS3でも発売された国産大作ゲームも多く発売されていましたよ。

ライバルが強力だったから? 知名度が低かったから? マニア向けのゲームばかりだったから?

いろいろなネガティブファクターはあると思いますが、私が考えるに「Xboxは家電になりきれなかったから」というのがあると思うのです。

 

■日本での「ゲーム機」は家電でなければならない。

いやいや、ゲーム機って家電じゃないでしょ? と言われそうですが、そんなことはありません。
何をもって家電とするのか、という定義については諸説ありそうですが、逆に言えば家庭用で電気で動かす装置は全て家電と言うことができると思います。同時に、専門知識がなくても自在に動かせるのが現代の家電だと言えます。
一定数いると思われる超絶的な機械音痴をのぞけば、世の中の家電は基本的にノーマニュアルか少し説明書を読むだけで誰でも使えるものとなっています。使うにあたって訓練や教育も必要なく、修理やカスタマイズするような事さえなければ専門知識も必要ありません。そういうものを「家電」と呼ぶものだと考えます。

一方、パソコンやスマホといった情報機器は、昔よりも操作や堅牢性は高まったとはいえ、トラブルが頻発したりセキュリティ関係で一定の専門知識が必要であったりと、「家電」と呼ばれる装置に比べれば扱うのに敷居が高いものだと思われます。なので「家電になりきれていない装置」と私は定義しています。

簡単に言えば、家電=基本的に誰でも使える、家電になりきれていないもの=扱うのにある程度の専門的知識が必要なものということです。

さてゲーム機ですが、ファミコンの時代からカセット、もしくはディスクを入れればすぐにゲームが遊べるので「家電」と言えます。21世紀に入ってゲーム機のマルチメディア化が進みましたが、基本的には画面に表示されているボタンや画像にカーソルをあわせてボタンを押すか、もしくはディスクを入れると自動再生といった、誰でも覚えられる簡単なオペレーションで楽しむことができますので、AV機器などといった家電の類と同じものだと言えます。

では、Xboxはどうでしょう?

 

■ゲーム機が強すぎた日本のゲーム市場

Xboxはゲーム機ではなく、ハードウェア的にもパソコンの延長上にあったゲーム機です。
初代Xboxの内部構成もほぼパソコン(PC/AT互換機)と変わりませんでした。大雑把な言い方をすれば、パソコンからゲーム以外の機能をそぎ落としたものがXboxです。

日本とは違い、アメリカではパソコンでゲームを遊ぶという文化が根付いており、そのため「ゲームをやるのに不要な機能を削って安くなった」ゲーム機というものには需要がありました。

一方日本国内の場合、初代Xboxが発売された2001年時点では、多くのパソコンゲームメーカーがコンシューマー機へ移行し、98時代以来の美少女ゲーム市場だけが残っているような状況でした。パソコンでゲームを遊ぶということは、コンシューマー機に移植されていない洋ゲーもしくは国内産のPCゲームを遊ぶか、美少女ゲームをやるか、オンラインゲームをやるかのいずれかという状況でした。

 

そのスタートアップの時点で、Xboxの日本でも見られ方は決まったとも言えます。インターネットブームに乗せられてパソコンを買ってはみたものの、気がついてみればインターネットを見る以外の事に使わない。あとは音楽聴いたり、動画を見たり。
煽られていたほどパソコンの可能性が広くないように感じてしまった一般層に、パソコンのようなゲーム機が発売されました、と言っても魅力的に見えるわけがありません。

家電を基本に進化してきたゲーム機と、情報機器から枝分かれしたホビーパソコン(MSX等)は、同じゲームを遊ぶマシンであり市場も被っていたところはあったとはいえ、どこまでも交わりきれない同形異種の存在であったといえます。
その観点から言うと、PS2などの他の第6世代ゲーム機は家電たるゲーム機の正当進化製品であり、Xboxはホビーパソコンからさらに枝分かれして生まれた異形のマシンと言えます。
MSXユーザーだった友人が「マイクロソフトのXboxだからMSXbox、つまりMSXは21世紀のMSXなんだよ」と誇らしげに言ってた事がありましたが、この発言にXboxがなぜ売れなかったのかという意味がすべて詰まってそうに思います。

当時のゲームキッズすら多くがファミコンを手にした中、21世紀にMSXが復活しても売れるはずがありません。

こうしてXboxは、ゲーム機育ちのユーザーからは「なんか難しそう」と思われ、PCゲームまで遊ぶヘビーユーザーからは「いまいち」と思われるという、日本市場の特殊性と見事にかみ合わない中、パッとしないゲーム機として360にバトンタッチすることになります。

 

■ハードの信頼性が低かったXbox360

現在のパッケージゲームでは標準になりつつあるDLCによるマネタイズは、Xbox360のアイドルマスターが嚆矢であるとも言われています。これに味をしめたバンダイナムコのソフトがアンロック商法DLCを多用したため「バンナム商法」と呼ばれることもありましたが、そのような現象も含めて、様々な影響をゲーム業界に及ぼしたゲーム機だと言えます。ほとんど話題にならなかった初代に比べ、奮闘したとも言えます。

PS3とのマルチプラットフォームのゲームも増え、Xbox時代に比べれば取っつきにくさはなくなりました。

しかし、それでも日本市場で受け入れられたとは言いがたい現状のまま、Xbox360は終わってしまいました。

販売数が伸びなかったのは、海外のハードだから、という理由は当然のこととしても、ハードの品質、サービスの品質の低さが、何事にもクオリティにうるさい日本の市場から嫌われたのではないか、と思っています。

有名なハード品質の問題として、以下三点があげられます。

  • ハードに起因するゲームのフリーズ
  • レッドリングオブデス
  • ディスクの損傷

そもそもXbox360自体、不名誉な事に販売当初から多くの問題が発生するハードとして知られており、特にゲーム中になんの理由もなしにフリーズする事が知られていました。
プレイステーションや任天堂のハードであれば、フリーズの原因は大抵ゲーム側のバグでしたが、Xbox360の場合、ハードの構造上の問題、特に排熱と電源まわりの問題でフリーズが多発するようになっていました。

これらゲーム中の問題に加え、有名な「レッドリングオブデス」と呼ばれるハードの障害もあります。これは電源ボタン周囲の四つのリングライトのうち、三つが赤く点灯する現象で、Xbox360に何かハード的な問題が発生した時に点灯するエラーアラートです。
単なるエラーアラートなので「赤く光る」こと自体はなにも問題ではないのですが、この現象が高確率で発生するため、有名な障害として知られるようになってしまいました。
これについてはマイクロソフトも重大に受け止め、保証期間を延長するなどの対応をとりました。

また、Xboxは縦置き、横置きが可能ということで売り出されたハードですが、ディスクのホールドに問題があり、置き方によってはディスクが損傷、読み取りができない状態となるという、ゲーム機の信頼性そのものに関わる重大な問題も発生しました。
このディスク損傷問題について、マイクロソフトは「ユーザーの責任」という立場を取り、保証対象外であると立場をとりました。結果、アメリカでは集団訴訟に発展、マイクロソフトの不誠実な対応にユーザーが激怒しました。

なお、我が家のXbox360(初代)は上記三点の問題、全て発生しました。

レッドリングオブデスは保証期間延長のおかげで、無償対応してもらえました。
ディスク損傷についてはテレビ付近の模様替えの後、縦置きにした時に発生。買ったばかりのロストオデッセイにリング状の傷がつき、読み取り不可となりました。
マイクロソフトのユーザーサポートに電話しましたが、「保証対象外です」と言われるばかり。仕方ないのでソフマップのディスクリペアサービスで直してもらいました。そこまで手間かけて遊ぶほど面白いゲームじゃなかったのが残念です。

当然ですが、ディスクに読み取りできなくなるほどの傷がついたら中古ショップで買い取ってもらえません。ディスク研磨機かリペアサービスがなかったら、その時点で6000円前後のお金をドブに捨てることになります。愕然としますよね。

DVDに次ぐ次世代映像規格として争っていたBlu-rayとHD DVDの対決が、Blu-rayの勝利に終わったこともXbox360のマイナスとなりました。
Xbox360は拡張ユニットとしてHD DVDプレーヤーを用意していました。しかし、HD DVDの主幹企業である東芝が撤退を発表した直後、このHD DVDプレーヤーがアキバの各所で投げ売りされました。これにより、Xbox360のマルチメディア家電としての道も閉ざされることとなりました。

 

■サービスのクオリティの低さも問題に

マイクロソフトは前代のXboxより「Xbox Live!」というオンラインサービスに力を入れてきました。
対抗するPS2、およびNintendo64は標準でネットワーク対応をしていなかったため、当時流行しはじめたオンラインゲームが遊べるということを一つのウリにしていました。

しかし、Xbox360でネットワークゲームをやるにはたいてい有料のゴールドメンバーシップが必要でした。同世代のPS3のオンラインサービス(PSN)が基本的に無料だったこともあり、マルチプラットフォームの対戦格闘ゲームの場合、PS3版を選択するユーザーも多かったはずです。
ただ、有料の分ネットワーク品質は良く、サーバーダウン等の問題もあまり発生せず、オンライン環境はおおむね好評でした。しかし、クレジットカードでゴールドメンバーシップに入会すると自動更新される上、なぜか割高な月額更新となる、退会手続きはXbox360だけでは完結できない(かつては平日のサポートタイムに電話するしか解約手段がなかった)、ゴールドメンバーシップの自動更新停止をマイクロソフトのサイトで解除しようとすると「ゴールドメンバーシップに加入してください」と言われるなど、ともかく退会まわりの分かりづらさが延々とネタにされつづけていました(もちろん悪い意味で、です)。

他にも、「竹島問題(Xbox Liveで、日本のアカウントで住所を「竹島」にした場合、不適切な住所として登録されない問題。なお韓国アカウントで独島はOK)」、MSNの地図に「日本海(Sea of Japan)」と「東海(East sea)」が併記されるなど、一連のマイクロソフトのサービスに韓国側に圧倒的配慮があり、日本人がマイクロソフトのオンラインサービスにあまり良い印象を抱かなかった時期もありました。当時のマイクロソフトのゲーム開発部門責任者がセイン・キム氏という韓国系であった事とその関連性を疑われ、ただでさえ売れないXbox360からますます日本人ユーザーが遠ざかる原因を作ってしまいました。

信用性の低いハード、マイクロソフトの対応の悪さ、そしてゲーム以外のサービス面でのネガティブファクターなど、品質にうるさい日本人には到底受け入れられない状態となり、そのまま販売台数の低調さに繋がっていくこととなりました。

もっとも、低調ゆえに他ハードでは発売されないようなマイナージャンル、Xbox Live Arcadeでのマニアックなラインナップに繋がったとも言えるので、これらXbox360のダメな点が許容できたゲーマーにとっては良いハードという評価に落ち着いたものかと思われます。

 

■マイクロソフトは日本市場を見限ったのか

Xbox Oneの投入と、新ハードへの移行を進めたいマイクロソフトとしては、新作ゲームはXbox Oneで出すようにと各メーカーに働きかけていたことでしょう。実際、Xbox Oneが市場投入された2015年以降、Xbox360用ゲームは(国内に限り)13本しか出ていません。

しかし、それらマイクロソフトの動きに反し、Xbox OneはこれまでのXboxシリーズどおり、日本では低調な滑り出しとなりました。

ロンチタイトルとして期待されたForza Motorsport5でしたが、日本のコースは全て削除。好評だったオリジナルコース「富士見街道」もリストラされ、日本人ユーザーが購入する動機がなくなってしまいました。

Forza Motorsportシリーズは日本のモータリゼーション文化を反映し、国内カーマニアにも好評な作品でした。Xbox Oneのグラフィック性能で筑波やもてぎ、富士見街道がどう生まれ変わるのか楽しみなユーザーも多かったはずですが、マイクロソフトの答えはごらんの有様でした。

続いて発売された6でも日本コースの復活はありません。

ここまで徹底して日本コースの追加をしないところを見ると、マイクロソフトに八つ当たりをされているような気さえします。同時に、マイクロソフト自身が、日本市場を見限ったようにさえ思えてきます。

お互い背を向け合ってしまった日本人ゲーマーとXbox Oneの関係は、これからどうなってしまうのでしょうか?

 

大好きなギンガフォースの続編、ツカサ・クロニクルがXbox One専用ソフトとして出るそうですが、今のマイクロソフトの「売る気のなさ」を見ると、ハードウェアそのものに期待が出来ず購入を躊躇してしまいます。

マイクロソフトはもう少し、日本で頑張ってほしいなぁと、Xbox360ヘビーユーザーである私は願わずにはいられません。とりあえず、Forza Motorsportに日本のコースと富士見街道を復活させてください!
あと、妖怪ウォッチで一山当てたレベルファイブはトゥルーファンタジー ライブオンラインをXbox One専用ゲームとして開発するべきです。

…すいません、ウソです。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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