ヨドバシドットコムってすごい


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以前AmazonのWebプロデューサーと話をした時、脅威と思う国内のサービスはどこ?と聞いたことがあります。
彼らは口を揃えて「ヨドバシドットコム」って言いました。

21世紀に入ってからヤマダ電機、コジマ電気、ケーズデンキのYKK戦争の時代があり、これら量販店が熾烈な競争を繰り広げたことにより関東を中心とした系列店を含めた「街の電気屋さん」が壊滅。
しかし、その後AmazonをはじめとしたECサイトの利用が進むにつれ、勝者だったはずの大型家電量販店も軒並み苦戦を強いられるという状況に。秋葉原を中心に全国展開していたLAOXや石丸電気も他社に買収されるなどして消滅、YKKの一角であったコジマもビックカメラの傘下に入って独立性を失いました。

「自店より1円でも安かったらその値段に値下げ」「他社のチラシをお持ちください」と、過激ともいえる廉売競争で戦い続けたヤマダとコジマ。しかし、そんな二店よりも実店舗を持たないECサイトはより安い価格で販売できたわけです。
二社の巻き添えを食って潰れた店舗も数ある中、不当廉売だと騒いでみたところでそんな理屈は通るわけがありません。せいぜいAmazonと同価格で売るという、チラシ持ち込みと同じやり方で価格を合わせるくらいしか手がなかったわけですが、これは最初から勝負にならない戦いにしかなりませんでした。

Amazonに対抗するため自社のECサイトを立ち上げる量販店も増えたわけですが、それもあくまで「ネットで通販ができる」チャネルを増やした程度の効果しかなく、圧倒的な安値と品揃えを誇るAmazonには勝てるはずもありません。

こうして量販店が軒並み売上げを落とす中、ヨドバシドットコムだけが急激に成長、今やAmazonを脅かす存在にまでなったのだから、世の中どう転ぶかわかりません。西城秀樹は「時が未来に進むと誰が決めたんだ」と名曲「ターンAターン」で歌っていましたが、勝者が返り咲くこともあるのは歴史もビジネスも一緒です。

Amazon一強と思われた家電流通を一気に引き寄せたヨドバシの強さは、一体どんなところなのでしょうか。

 

まず、恥も外聞もなくAmazonにそっくりなサイトを作ったというところにあります。

自社独自オリジナル要素を盛り込むより、先行する「勝者」を徹底的に真似ることで経験則を貯めていくという戦略をとったという「英断」がスゴイのです。
おそらく当時のAmazonが特集などを作らず、シンプルに商品を売るだけのサイトだったことも、ヨドバシにとっては幸いしたかと思います。ECのノウハウを吸収するのに、これほど良いお手本はないわけですから。

独自のハードポイントを導入するにしても、それは経験や収集した数字、試行錯誤の結果があってこそ。
何もない時から思いつきでオリジナリティ出すよりは、いっそのこと丸パクリしたほうが結果的には成長が早いという事実は、ある意味身も蓋もない話ですが、守破離の教えにもあるとおり、実践的な手法であるとも言えます。

勝者からは恥じることなく真似る。これができる人は強いです。
大事に取っておく必要のないこだわりやプライドを捨てられず、成功の道から反れてしまう人はたくさんいます。それをあっさり捨て、嘲笑されるのを覚悟で真似たというのは、これはもう胆力としか言いようがありません。

 

そしてもう一つは、一部地域に限りますが、倉庫からユーザーの自宅まで一貫して自社物流網で「配送料無料で最速当日のスピード配達」してくれるという、ヨドバシならではの強みを最大限に生かした配達法を編み出したところです。

ヨドバシカメラで大型家電を購入する人は、たいてい自宅まで商品を配送してもらいます。これはヨドバシが都市型量販店であること、店舗の多くが駅前というレールサイド戦略をとっているためです。

そのため、各店舗には自宅配送のための自社便があり、配送を依頼された商品を持って定期的に指定地域をまわっています。ヨドバシドットコムのスピード配送は、この自社便に商品を乗せて配送します。店舗が倉庫代わりとなるので、在庫があれば当日配送も可能というこれまでのECの常識を覆す配送速度を実現しました。また、「ついで」の配達となるので、少額の注文でも送料がかからないという強みもあります。

当日配送だけなら、Amazonもプライム会員限定で導入しています。しかし、有料会員に入会していることが前提となるので、コスト面ではヨドバシに軍配があがります。またヤマダ電機も、15時までなら社員が自宅まで届けてくれるサービスを立ち上げましたが、こちらはその注文のためだけに社員を配達に行かせるサービスのため、3240円未満の商品の場合は別途送料が540円(税込み)かかる上、社員対応なので店舗の営業時間内のみの対応となってしまいます。

例えば単三電池を0:00以降に注文した場合、当日配送かつ無料で届けてくれるのはヨドバシドットコムだけです。Amazonは前述の通りプライム会員か有料オプションの「当日お急ぎ便」を使わなければなりません。さらに電池のような少額商品の場合、2000円以上の「あわせ買い」をしなければ、プライム会員であっても配送料を取られます。ビックカメラは原則翌日配達。ヤマダの場合は540円の送料を取られます。

まさに店舗を中心とした自社物流網を完備したヨドバシカメラだからこそできる芸当です。ヨドバシドットコムはAmazonを真似ましたが、同時にAmazonがマネできないハードポイントもしっかり備えていました。だからこそ、他の量販店が続々EC参戦するもパッとしない中、急成長を遂げられたわけです。

またヨドバシドットコムは品揃えも豊富です。最近プラモデル用の塗料を買うためにたびたびヨドバシドットコムを利用していますが、プラモ用塗料を当日配送できるのはヨドバシとAmazonだけです。しかもAmazonにあるのはタミヤの塗料がほとんどなので、クレオスやガイアノーツなどの塗料が欲しい場合はヨドバシしか選択肢がなくなります。
プラモ塗料を当日配送だなんて…と思われるかもしれませんが、土曜日の夜に塗料がなくなり、翌日も作業をしたいと思った場合、この当日配送は大きな意味を持ちます。実店舗に足を運べない事情があるならなおさらで、日曜日に塗料が届かなかった場合、作業は翌週末に持ち越しということになりかねません。

ヨドバシドットコムは、こういった他所ができない「細かい要望」に応えられるからこそ強いんだなと、買い忘れたクレオスカラーのイエローの塗料を頼みながら思ったと、そういう話でございます。

(文/団長)

 


団長

「てらどらいぶ」管理人。 ゲーム開発のディレクター、動画配信サイト管理人のプロデューサーなどを歴任。 心のゲームは「ウィザードリィ」と「ザナドゥ」。ドラクエとFFならドラクエ派。

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