奇人変人コーナーと化した都知事選


子供の頃に「奇人・変人コーナー」という番組の企画がありました。

珍妙なスキルを披露してお茶の間をどん引きさせるという、古き良きおおらかななテレビ文化を象徴するコーナーでした(そもそも「奇人・変人」が今はデリケートな扱いになってますし)。

そして2016年。公金の私的流用で都民の信用を失い辞任した舛添要一東京都知事のせいで、21世紀の奇人変人コーナーの様相を呈してきました。

現在(7/8)時点で立候補、もしくは立候補の意思が固そうな人の中で、おもしろそうな人を挙げてみます。
おもしろさの基準はご想像にお任せいたします。

■マック赤坂(セラピスト)
もはや都知事選に欠かすことができない、ある意味マスコットとなっている方です。街頭演説や政見放送の奇抜さで一目置かれ、彼が立候補しないことには都知事選が始まらないという名物おじさん。元伊藤忠のビジネスマンという肩書きもあり、能力的には申し分ないのですが、いわゆる「天才とアレは紙一重」ということわざを体現してしまっていいる異端児でもあります。
普段は会社経営と笑いから元気になるスマイルセラピーの普及に尽力されているようです。東京に笑いを、という思いを胸に立候補だそうですが、笑顔だけではなんともならないことを20年に及ぶ不況で思い知ったすれた都民の支持は得られるのでしょうか?

■小池百合子(元防衛相)
自民党が候補者選びで紛糾している中、勝手に崖から飛び降りて自民党、自民党支持者、そして保守派を混乱させてしまった方です。元防衛相であり、日本の核武装に消極的ながら検討の余地ありと賛意を示し、東アジア諸国に対して強硬な態度を取ったことから保守、右派には人気がある方ですが、女性人気は低いうえ、所属政党をコロコロ変えることから政治家としての信頼性に欠ける嫌いもあるため、スタンドアローンで戦うことになる都知事選には不向きではないかと言われていました。そして自民党が元岩手県知事の増田寛也氏を推すだの推さないだのと言う話になり、公認の見込みが薄くなると本当にスタンドアローンで選挙を戦うことに。ある意味、この人が防衛相時代になにも起きなくてよかったと思えるくらいの猪突猛進ぶりです。

■桜井誠(在特会元会長)
最近話題のヘイトスピーチの走りでもある在日特権を許さない市民の会の創設者。中韓を揶揄するトークスキルはなかなかのものでしたが、在特会の活動が過激化するにつれて保守派の支持も離れて以降の活動はパッとしませんでした。しばき隊から襲撃されたりとある意味反中韓のアイコンのような人。田母神氏が抜けたニッチを埋める存在として注目されています。田母神氏がそこそこ良い得票数を得られたので、このまま自民党が候補者選びに難航すれば大躍進の可能性もあります。が、新大久保を始めとした在日コミュニティがある街は殺伐としそうで、治安悪化に拍車をかけなければ良いのですが。

■山口敏夫(元政治家)
「平成の牛若丸」というキャッチフレーズで90年代に高い人気を誇った元政治家。テレビ番組などにも多く出演しお茶の間にも顔を知られる存在でしたが、95年に二信組事件に関与し背任、業務上横領、詐欺という政治家として致命的な大三元を決めて逮捕されてしまいました。先述のようにテレビに出まくったせいで、より一層評価の暗転が激しかった人ですが、みそぎは済んだとばかりにしれっと今回の都知事選に立候補。公金流用で辞任した都知事の後釜に業務上横領で逮捕された人に誰が票を入れるのでしょうか?

■立花孝志(元船橋市議会議員)
「NHKから国民を守る党」の公認を受けて立候補。そもそも都民ですらない船橋の市議会議員が都知事になろうというおこがましさもハンパないですが、「NHKから国民を守る党」という謎の組織が香ばしさを通常の三倍まで加速してくれます。ちなみに公認と言ってますが、そもそも「NHKから国民を守る党」の代表がこの立花氏で、同党の役員も彼一人しかいません。「NHKから国民を守る党」は反日的な報道を行い国民から強制的に受信料を徴収するNHKに断固NOを突きつけ、NHKを見ないかわりに受信料も払わないという人を応援する党だそうです。その活動はいいとしても、それが都政にどう生かされるのか、さっぱり分かりません。むしろ船橋市議によくなれましたね。

■増田寛也(元岩手県知事)
「嵐」の桜井翔の父で元総務事務次官であった桜井氏(在特会ではない方)に断られた石原伸晃や都内の区長に推薦されて都知事選に立候補することが有力視されていました。
しかし、切り込み隊長ことやまもといちろう氏にヤフーニュースでぶった切られて以降(増田寛也「ほとばしる無能」を都知事候補に担ぐ石原伸晃&自民都連(訂正とお詫びあり))、出馬云々の話が急速に消えてしまいました。岩手県知事時代の悪手が白日の下にさらされた以上、推し続けるのも難しいと思ったのかどうなのか。
ただ、まだ出馬を断念(否定)しているわけではないので、今後の動きに注目したいところです。
しかし仮に立候補したとなると、自民党支持者の票が小池百合子と増田寛也に分裂する可能性があります。結果として間隙を縫ったリベラル派の候補が都知事になる可能性も高まってしまいます。自民党としてはそれだけは避けたいでしょうから、小池百合子から圧勝をもぎ取れる候補を選ばなければなりません。そんな逸材を、自民党は見つけられるのでしょうか??

■渡邉美樹(ワタミ創業者。参議院議員)
いまやブラック企業・ブラック経営者の代名詞にもなってしまったワタミの創業者。ハードワークを信条とする経営姿勢は、元学生活動家であるゼンショー創業者、小川賢太郎氏と並んで独特の経営世界観を作り出します。もっとも、それが社会に受け入れられているかと言えばまったくそんなことはないのですが。
舛添氏辞任が確実になった頃、自分が都知事になったら無駄遣いはしないなどと発言、なんとなく出馬しそうな雰囲気になりましたが、「無駄遣いするかしないかの問題ではない」「ワタミが都知事になったらブラック自治体になる」と散々なバッシングを受け、結局出馬を否定。東京は救われました。

■石田純一(芸能人)
突如として浮上した、ソックスを履かないことで有名なあの御方。しかし、不倫を文化と言い切ったことで有名。何かとSとXが入る単語と近しい方です。
近年は安保法案改正に反対するデモにも参加、「不倫は文化」にかけて「戦争は文化ではない」という、分かるような分からないような反応に困る発言を繰り出すなど、ともかく政治にも関心を向けていました。
7/8に記者会見を開き、「野党統一候補」を条件に出馬の意向を表明。しかし懸案である2020年のオリンピックについても具体的な話はなく、原発再稼働や戦争をさせないなど、都政とはあまり関係ない話に終始していました。
簡単に言えば「準備不足」の一言で、現状では知名度以外に勝負できる要素がありません。野党も統一候補として神輿に担ぐには少し心細いのではないでしょうか?

 

■与野党が候補選びで難航する中で続々生まれるトンデモ候補

選挙が7/31に迫る中、自民党も野党各党もはっきりと候補が選出できずにいます。
かつては「総理になってほしい有名人」の座をビートたけしと争い、都知事としても総理のように「外交」をしていた舛添要一が、公金流用「程度」であっさり辞任するとは思わなかったのでしょう。
各党、各候補が準備不足でいる中、落ちぶれたかつての有名人や犯罪行為で表社会から消された政治家がワンチャンあると考えて立候補をしてしまう様は、安保改正以上の民主主義の危機的状況の具現化ではないかと思わなくもありません。
結果として呆れた有権者が関心を失い、ますます政治から遠のくだけのような気がします。
かつてアントニオ猪木が都知事選に出た時は、当時まだ少ないタレント議員、かつプロレスのカリスマということで注目を浴び、政治に関係のない人の口端にものぼりましたが、今となっては石田純一や元SPEEDの今井絵理子が参議院出馬程度でもそこまで大きな話題になりません。

不景気で行き先が見えず政策で勝負ができなくなった90年代の与野党は、福祉の充実といった景気対策から目をそらした争点を作り出し、その一方で知名度のあるタレント候補の起用で得票を狙うというバカげたやり方に頼ってしまった結果、福祉に関心の高い老人票ばかりが増えていき、若者の政治離れといった状況を生み出してしまいました。もしかしたらタレント議員の起用は若者対策なのかもしれませんが、そうであるなら日本の若者もナメられたものです。

 

■都知事になれば国政に関与できると勘違いする候補者たち

舛添知事以降に顕著なのが、なぜか国政目標を掲げる候補が増えたとこ。東京から日本を元気にしたいというマック赤坂は良いとしても、NHKにノーを突きつけたり、脱原発や反戦をどうこうという話は大きく的が外れていると言わざるを得ません。都民が求めているのはしっかり都政を行ってくれる知事であり、頻繁に日本を離れて外交ごっこをやったり、東京にありもしない原発をどうこうする人ではありません。そのようなアクティビティをやりたいなら参議院選挙にでも出れば良かったのに。なんで都知事なんでしょうね?

これからの東京はオリンピックを控えていることもそうですが、高齢化やインフラの劣化など、都市計画での問題が山積しています。現在見えている待機児童の問題などは短期的な解決要点であり、その後ろに東京都という世界有数の巨大都市を未来にわたりどう運営するか、という課題が続きます。

舛添知事が嫌われたのは公金流用だけではなく、それ以前の「総理ごっこ」と揶揄された、都知事としての仕事以上に国策まがいのマネをずっとしていたためです。公金流用の発覚は引きずり下ろすための決定的な理由になりましたが、それ以前に舛添知事には大量のヘイトが乗っかっていたのです。

しかし、このまま珍妙な候補ばかりが集まるようでは、猪瀬直樹知事の時のように「変えない方が良かった」という結果になりかねません。そして今回の選挙で都民が冷静なのは、猪瀬知事辞任後の選挙の「誰も選べない」惨状が記憶に残っているためです。

ウケ狙いのタレント候補や泡沫候補では、今の都民には冗談にさえ受け取ってもらえないということです。
そういう意味でもふわっとした石田純一の記者会見は、真面目な都政を願う人達には首をかしげざるをえません。

 

■「政治でワンチャン」を狙う人達

政治的な内容の話はこの場で行うにふさわしくないものなので、どの党の政策がどうという話はしませんが、混迷する候補者選びを見ると、なんとなく都民を置き去りにして進んでいるかのような印象を受けます。
また、タレント候補が当たり前になったせいか、日の目をみなくなった有名人がワンチャン狙いで立候補したり、政治活動に身を投じたりする場面が増えたように思います。
もちろん政治に関心を寄せることは主権者として正しいことではありますが、一方で頓珍漢な発言や活動をすることも多く、かえって過去の名声を堕としているような人も見受けられます。

今回立候補した人達全員には、まず自分が本当に都知事に向いているのか、山積する問題を解決できるのかを問うてほしいと願うばかりです。

さて公示日にどうなるのか…このまま奇人変人オンパレードな状態で終わらないよう祈りましょう。

(文/赤蟹)


団長

「てらどらいぶ」管理人。 ゲーム開発のディレクター、動画配信サイト管理人のプロデューサーなどを歴任。 心のゲームは「ウィザードリィ」と「ザナドゥ」。ドラクエとFFならドラクエ派。

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