ウナギ味でなくてもナマズって美味しいんですよっ!


Underwater photo of The Catfish (Silurus Glanis).

ナマズって美味しいんですよ。特に天ぷら。

埼玉は海なし県ということもあり、川魚料理…つまり鰻屋が多い地域です。浦和も鰻が有名ですよね。そのようなお店では、鯉濃だったりナマズの天ぷらがメニューに並んでいることがあります。

私が子供の頃、ウナギはごちそうポジションで、牛丼屋で格安で食べられるような魚ではありませんでした。たまに食べてもスーパーの蒲焼き。両親は美味しいと食べてましたが、一度冷えてしまってべしょべしょになった蒲焼きがあまり好きではありませんでした。

大人になって鰻屋で食べられるくらいの経済力がついて、ようやくウナギの美味しさに目覚めるわけですが、鰻丼と一緒に「ナマズの天ぷら」なるものがメニューに並んでいるのを発見。聞けば淡泊で甘みがあり、高級な白身魚の天ぷらにも近い味とのこと。マズかったらネタにすればいいやと思って頼んでみました。

運ばれてきたナマズの天ぷらは、見た目は大きめの魚(鱈や鯛)の天麩羅と変わりません。至って普通です。

で、味ですが…

おいしい!

お店の人が言ってた通りでした。天つゆで食べても塩で食べても美味しいです。

こうして埼玉に住んでいた頃は、折あらばナマズの天ぷらを食べていたわけですが、東京には残念ながらナマズを食べさせてくれるお店がありません。

後から調べたことによると、埼玉県はナマズの養殖を1970年代から進めており、稚魚を県内の養殖業者に販売するなどして、ナマズの商用化を進めていたそうです。しかしあまりメジャーな食材ではないため、県内のお店で取り扱うに留まっていたようです。

そんなどマイナー食材のマズが、突然鰻の代用魚としてクローズアップされはじめました。

 

■鰻味のナマズ

近畿大学が鰻味のナマズの開発に成功したというニュースが駆け巡ったのは去年の夏のこと。

そして今夏には実際に店頭に並ぶなどして、「うなまず」ブームが起きたようです。

産経WESTに開発者の有路昌彦さんのインタビューが掲載されています。

・琵琶湖で食べたナマズがきっかけ 全国の魚をかば焼きに 近大准教授・有路昌彦さん

有路 10年以上前に一度、琵琶湖のナマズ料理を食べたときに非常においしかったので、直感として、ナマズ系がいいと思った。ただ、本気で養殖をしようと思えば、ほかに良い魚種があったら、そちらを選ばないと最終的に市場競争で負ける。そこから全国の魚を集め、全部かば焼きにしてひたすら食べる研究を始めてみました。研究室を煙でもうもうにしてね。ひまさえあれば、学生と一緒に「ようし、今から捕りに行くぞ」といって。

有路 そうですね。5年前に再び琵琶湖のマナマズを食べる機会があり、かば焼きにして食べたら、すごい脂がのっていた。まるで牛肉みたいだった。脂がわーって出て、圧倒的なパワーを感じた。そこからマナマズ1本で絞っていこうという感覚になった。ただそこで壁がありました。全国からマナマズを取り寄せ、ひたすらかば焼きにして食べたのですが“全滅”でした。ことごとく泥臭くって、脂がなかった。もう口に入れられなかった、くさくて。これはダメだ、どうしようって思った。

有路 琵琶湖で食べたあれは何やったのかと思って、自分で捕りにいった。学生と一緒に琵琶湖の周辺の用水路でナマズをとり、かば焼きにしたら、ものすごい脂でものすごくおいしかった。大学の近所の川で捕ったやつと食べ比べしたら、外見は同じなのに180度違う。そこで分かったんですよ。つまり、この魚は生息している環境、エサの条件、水の条件によって味が180度変わるんだと。条件を整え、自分たちでエサをコントロールしたら、狙いの味になる。自分で味を調整してみようと思いました。

埼玉の川魚店で売られているものは、だいたいが泥抜きされたものです。もしくは養殖されているものです。
埼玉県や茨城では1970年代から水産試験場で養殖技術の開発を行い、養殖業者もいます。また放流された後に食用として漁獲されることもあるようです。

ナマズが泥臭いのは生態に関係あります。普段から川底付近で生活していること、越冬時には泥にもぐるためです。水質汚染にも比較的耐えられてしまうため、環境の悪い場所で取られたナマズが臭いのは当然とも言えます。しかしナマズが好んで汚い水の中に住むわけではないので、上流~中流の比較的綺麗な水域で取られたナマズは、有路先生が言うようにおいしいのです。

 

■実は普段から食べられているナマズ

そんなナマズですが、実は普段から私達の口に入っています。

スーパーやファミレスで売られている「白身魚のフライ」。タルタルソースで食べると美味しいですよね。

でも「白身魚」ってなんでしょう? アジフライならアジ、イワシフライならイワシと分かります。でも白身魚なる魚はいません。
昭和な人達は「白身魚フライ=タラのフライ」と思っている人が多いかと思います。

しかし現在の「白身魚」は、ナイルパーチというナイル川に棲息するスズキのような大型魚であったり、オヒョウという高緯度の海域で獲れる大きなカレイだったり、深海魚のホキという魚だったり様々です。

その「白身魚」の仲間に、ナマズも入っているのです。

これら白身魚フライの材料に共通するのは、身が多く取れる大型魚か、単価の安い深海魚ということです。身が多く取れるということは、グラム当たりの単価も安くなるということです。

仕入れられたこれら「白身の大型魚」は中国など人件費が安い地域加工され、冷凍食品となって日本に輸入されます。ナマズの場合は加工工場近くで養殖されていることもあるようで、その場合はより原価が下がることになります。

そもそもなぜタラのフライを白身魚のフライという名前にしたかと言えば、タラフライとするより白身魚フライとしたほうが高級そうに見えるからという理由です。
グローバル化が進んで第三国の工業化が進むと、人件費の安い海外に生産拠点を作る食品会社が増えました。やがてデフレが進み価格競争が激化すると、人件費だけではなく材料もより安いものが使われるようになっていきました。

「回転寿司のネタは実は深海魚」に似た不気味さはありますが、とはいえ「ナイルスズキのフライ」「ナマズのフライ」と書いたところで、味が分からない人は買おうと思わないでしょう。ならば「白身魚のフライ」としたほうが、売る方も買う方も幸せです。

ただ、そんな「代用魚」扱いだったナマズも、今回の件で美味しさが知られれば、今後は堂々と「ナマズフライ」という名前で売られる日が来るかも知れません。その勢いでナマズの天ぷらも一般的になればいいなと願わずにはいられない私です。そして70年代から養殖に取り組んでいた埼玉県にもワンチャンあるかもしれません!

 

■最後にウナギのこと

絶滅に向かっているウナギを保護するため、去年よりウナギの養殖は農林水産大臣の許可を得なければ営業できないようになりました。生産できる量も決められました。
しかし国内のウナギ養殖は、高騰し続けるシラスウナギの価格と、下降しつづけるウナギの価格のせいで実はあまりいい商売ではなくなっているそうです。あくまで現業を続けるから許可を得て養殖しているというだけで、後継者を作らず自分の代で商売を畳もうとしている業者も多いようです。

しかし、養殖業者が減ってウナギを食べなくなれば良いというのも、少々早計です。

ここまでウナギ市場が膨らんでしまった以上、小売り側が供給量を減らすことを嫌うでしょうし、今の価格に慣らされた消費者が「高い」ウナギを食べるはずがありません。
去年あれだけ絶滅が騒がれたにも関わらず、今年も各ファストフード店で安い鰻丼は提供されていましたし、スーパーにも依然として安いウナギが売られています。

一切食べないようにする、というのは分かりやすい保護方法ですが、ウナギが消費されなくなると業者が次々と廃業せざるを得なくなります。となれば、小売り側はまともではない業者と手を組んで「安い」ウナギを売り続けることになるでしょう。

現実的な話をするなら、「適正な価格」で「コントロールされている量だけ消費する」のが最善の保護方法です。その上で個体数の回復が見られないなら供給量を下げて価格をあげていくしかありません。うなぎはかつてのように、たまの贅沢で食べる魚に戻っていけばいいのです。
完全養殖の道も開けましたが、今度の出来事も踏まえむやみな廉売はやめてほしいと思わなくもありません。

「安い」が必ずしも正しいわけではないということを、デフレで痛い目にあった日本人は真剣に考えるべきではないでしょうか。

(文/赤蟹)

 


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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