【ニュースの小ネタ】暴力的で精神論しか言わない上官ばかり出てくる太平洋戦争映画


ラストコマンドポストの戦車

8月になると日本全体がセンチメンタルとなります。原爆記念日、終戦記念日があるからです。

この時期になると戦争にまつわる番組やイベント、記事を多く目にします。悲惨な戦争を忘れないように、という事なのでしょうが、ここまでたくさんの戦争特集があると、どこのテレビ局も毎年「終戦記念日」の需要を期待して番組を作ろうと考えているのだなと、その商魂のたくましさも垣間見えて別の意味で平和を実感したりもします。

実際、この時期になると戦争関連、ミリタリー趣味関連の商品が売れます。終戦記念日を境にぱったり売れなくなるのですが。

8月になると日本人は、ふと戦争の事を思い出すようにできているのでしょう。

日本における太平洋戦争観はイデオロギー的に固定されてきました。それ以外の見方をすることは許さざる事で、少しでも疑念を抱けば「右翼」「軍国主義者」といわれのないレッテルを貼られるという、大変硬直した状況が続いていました。

二度と戦争は起こしてはいけない、平和は絶対に守るべきものだと教え込まれた結果であり、日本の平和教育の成果とも言えるのですが、その教育や認識を徹底しすぎた結果、世界情勢の変化と隣国との緊張を経て多くの人達の頭で論理エラーを起こしはじめているような状況を生んでいるようにも見受けられます。

百田尚樹氏の「永遠の0」がヒットした時、有識者達がこぞってこの作品を軍国主義的とか特攻を美化しているとバッシングしました。しかし、このバッシングがなんのためのバッシングだったのか、おそらく叩いている本人達も分かっていなかったのでしょう。結果として比較的中庸的であった百田氏は平和主義者たちへの憎しみを抱えて右傾化してしまいました。

私も永遠の0のドラマを見ましたけど、むしろ軍上層部、将校側の戦術的合理性を欠いた指令を下すなど、少なくとも旧軍を賛美しているどころか、「失敗の本質」以来ダメダメ言われ続けてきた日本軍のダメさをステレオタイプに描いていており、見ていてなんとも鼻白む思いでした。孫達が追う主人公宮部久蔵の行動も結末ありきでチグハグなところが多く、人物描写という面では首をかしげざるを得ないところがありました。その他のキャラクター…例えば特攻と自爆テロを混同して頭の悪い自論を展開する大手新聞社記者の高山(もちろん某新聞社のメタファー)にしても、良く言えば分かりやすいキャラクター、悪く言えばマンガみたいなキャラばかりで、これは好き嫌いが分かれるところだと思いました。

永遠の0は特攻をテーマにした作品ですが、平和主義の方達が叩くような、特攻を美化したものとは言いがたく、むしろこれまでの「反戦フォーマット」に従って作られた物語にしか見えません。

これは永遠の0に限った話ではありません。大抵の旧軍を描いた作品には、強引で精神論しか言わず、すぐに鉄拳制裁するダメ上官が出てきます。口を開けば「命が惜しいのか!」だの「お国のために死んでこい」しか言わず、少しでも口答えすれば鉄拳制裁。こんなバカな士官ばかりで戦争なんて勝てっこないと思ってしまいますが、戦後流行った陸軍悪玉論に乗って、陸軍が登場する映画はどこにでもこんな士官が出てきます。

こういうダメ上官が出てくる背景は、日本軍を美化してはいけないという暗黙の了解がクリエイティブの世界に残っているためです。戦後の映像界には反戦的な思想の人々がたくさんいたため、「兵士(=国民)は立派だったが士官はダメだった」「戦争に突入したのは軍部のせい(兵士は悪くない)」という図式を作りました。これは国民の敗戦への罪悪感を緩和するのにも役に立ちました。戦争に突入した理由は軍部が暴走したなどと一元的なものではないのですが、兵士を些細なことでリンチする暴力的なダメ上官のイメージを繰り返し見せつけることで「自分たちは政府に無理矢理戦争をさせられていたんだ」という気持ちにさせていったのです。

そこに「明治までは日本人は立派だった」とする司馬史観が入り込んで、日中戦争以後ダメになった日本人像が確立していくわけですが、実際にダメだった部分は軍部にも政府にも国民にも地勢的にも資源的にもあったわけで、単に「日本人がダメになった」「政府に騙されていた」と一言で片付けて過去と決別するのはちょっと違うと思うんですよね。

こういう都合のよい健忘症こそ「失敗の本質」だと思うのですが、どうなのでしょう。

なにより、毎度ダメ上官だらけの戦争映画見せられても、物語内のリアリティを疑ってしまい物語に没入できません。戦後の検証がクリエイティブを上回った現状で、60年前から変わらない「ダメ士官だらけの日本軍」の姿をいつまで映し続けるつもりなのでしょう。

負けた戦争なので日本軍がダメだったのは間違いないでしょうが、なんにせよほどほどにしないとマンガ的な「永遠の0」の事を笑えなくなります。今の日本の「平和主義」が哄笑されるのも、こういうところに問題がありそうな気がしてなりません。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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