【ニュースの小ネタ】視聴者の反戦ドラマ離れ


8月になると、どこのテレビ局も終戦スペシャルと称して悲惨な陸戦や空襲、特攻といった太平洋戦争末期のドラマやドキュメンタリー(タッチ)の番組をやりたがります。

ドキュメンタリー側では、かつて敵同士だった日本人とアメリカ人が70年たって和解というものが流行っているようです。また海底探査技術の発見で沈没艦を発見できるようになったり、戦争遺跡の研究や分析も進んだことから、イデオロギー色が薄くミリタリー色が濃い番組が増えました。戦争が遠くなり太平洋戦争という事象を冷静に受け止められるようになった結果と言えるでしょう。

また海外で製作されたドキュメンタリーも多く放映されます。そういう意味で8月はミリタリーファンにとって嬉しい時期になりつつあります。

そんな豊作だらけのドキュメンタリーの一方で、ドラマのほうは全然ダメですね。

映像業界にはいまだに「思い上がった日本人の鼻をへし折る」のが崇高な仕事だと思っている方々がいらっしゃいます。8月になると流される敗戦ドラマは、彼らの崇高な精神の結晶でした(過去形)。

しかし、かつてのように膨大な予算がつけられなくなった今、戦争ドラマは作りづらくなっています。なにより作っても視聴率がとれないため、作られなくなってしまったという方が正しいかもしれません。

終戦特番(ドラマ)が見られなくなった理由は二つあります。一つはは戦争を体験した世代の人達が減っていること、もう一つは単純に面白くないからです。

第一の要素は、要するに団塊の世代が三丁目の夕日をみて懐かしんだのと同じです。どんな苦しく貧しい時代でも、若かった頃の自分というのは老境に達すれば何もかも美しく見えます。そういう方々のノスタルジィのおかげで視聴率が稼げていたのです(このあたりはまた後日の記事で書きます)。

では戦争を知らない世代についてはどうアプローチするか。「反戦と平和の意味を考える」とても美しくて立派なテーマだと思いますが、これだけでは戦争を知らない人達の興味は引けません。

命の尊さや反戦平和の願いを込められても、面白くないものは見ません。凄くシンプルな理由です。

日本の映像業界ほど、敗戦という枷をはめられた業界はありません。勇猛な戦闘シーンがあるから戦争賛美と呼ばれ、軍や政府がかっこよく描かれれば戦前回帰だと批判を受ける。表現や脚本は近隣諸国に配慮しなければなりませんし、連合国が悪いと描くこともできません。それは歴史的な経緯だけではなく、映像業界に「良心的」な人達が多いという理由もあります。

結果、大型ドラマと銘打ちながら無難な内容となり、戦闘シーンがつまらない紋切り型の戦争ドラマばかりになってしまいました。

戦争ドラマにありがちな「効果音と火薬だけの戦闘シーン」は、戦争賛美という批判をかわせる上に低予算で作れるので制作側として「最適解」でした。そのうえアクションが得意な俳優をキャスティングする必要もなく、むしろ人気芸能人を多く配置すれば「話題」も作れる。こうやって例年のように戦争ドラマは作られていったわけですが、肝心の人間ドラマがマンネリで、そのうえ戦争ものなのに戦闘シーンがつまらない。これでは見る人がいなくなるのも当然です。

結局のところ、これら終戦ドラマはテレビ局の「良心」を示すパフォーマンスにすぎないのです。偽善であるとは言いませんし、現場は限られた予算のなかでベストを尽くしているものと思いたいですが、だからと言って視聴者の方も、面白くないものを貴重な夏休みを費やして見る義理はありません。

「艦隊これくしょん」や「ガールズ&パンツァー」などのミリタリー系のコンテンツが流行したことを、右傾化と批判する人達がいます。これらの作品が支持されたのは、なにもミリタリー趣味に媚びていたからではありません。コンテンツの質が高く、第二次大戦に興味がなかった人達にもきっちり訴求できたからです。右傾でもなんでもなく、面白いからウケたというだけの話です。

 

今年は特にリオ五輪もあって、どの局も終戦特番的な大型番組を構えていません。視聴率を考えてみれば需要の高い映像をお送りするのが商業的に正しいわけで、翻っては8月の定番だった「反戦コンテンツ」はここまで力を失ったのだなと実感します。

しかし、ミリタリーコンテンツの流行で先の大戦への関心が若年層に広がり、CGによって高度な再現映像の製作が可能になった今は、むしろ反戦ドラマ復興のチャンズであるとも言えます。

安易で陳腐な人間ドラマに頼らず、人気芸能人に頼らず、戦史考証も性格に行い、そしてど派手なバトルで視聴者を魅了する「戦争なんてクソくらえ」という痛烈な反戦ドラマをどんどん作るべきなのです。

今がむしろチャンスなのです。艦これやガルパンのファンにネトウヨとレッテル貼りしている場合ではありません。むしろその人達はお客になりうる人達なのですから。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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