【ニュースの小ネタ】救われなかったかつての若者と安く使われる今の若者


Office prisoner concept

しゃぶしゃぶ温野菜のいわゆるブラックバイト裁判が注目されています。

しゃぶしゃぶ温野菜の「ブラックバイト裁判」、被告の運営会社DWE Japan社長がマスコミに店名を出さないよう「お願い」(Livedoor)

記事によるとDWE Japanの社長が意見陳述の際に原告の学生を批難した上、取材にきていた傍聴席のマスコミに「しゃぶしゃぶ温野菜」という名前を使わないように「お願い」したそうです。

そんなもの意見陳述になるわけがないので、裁判官により一度制止されたものの、それでも続けて二度目の制止でようやく辞めたということです。

裁判となったブラックバイトの内容は記事によるとこんかカンジです。

男子大学生はしゃぶしゃぶ温野菜でのバイトの中で、122日連続での勤務を強いられた他、20万円以上の自腹購入を強いられ、退職を願い出た際に店長とその夫から「殺す」などの暴言を吐かれ、左胸を包丁で刺されるなどしていました。

まず122日連続勤務というところで常道を逸してますが、その上学生相手に20万以上の自腹購入、さらに包丁を刺されるとブラックバイトどころか完全に犯罪。労基署はなにやってるの案件です。

社長の学生に対する批判内容は書いてませんが、店名を出さないようにと「お願い」した状況を見ると、自分が加害者であるという自覚がないばかりか、不心得者の学生のせいで困らされているとでも言いたい心境なのでしょう。サイコパスっぽいですね。

しかもこのお願いにテレビ朝日と東京新聞が「屈した」と書いてあるのも面白いところです。舌鋒鋭く政権批判を繰り広げている二社におかれましては今後は政治ばかりではなく悪徳資本家の監視もしっかりやっていただきたいと願うばかりです。

この件に限らず、飲食業ではしばしばこの手のパワハラ案件が持ち上がります。過労の末自殺したワタミや、サービス残業を提訴したパート従業員を「おにぎりを握って食べた」という理由で逆提訴したすき家など枚挙に暇がありません。もちろん、どちらも企業側が裁判で惨敗しています。

またすっかり忘れ去られた案件として、ステーキハンバーグ&サラダバーけんの井戸実氏を忘れてはいけません。「炎上ウマイ」と騒ぎ立てる周囲を気にせずTwitterで暴言をまき散らし回った「ロードサイドのハイエナ(自称)」ですが、最近何をやってるのかなと思ってブログを見たら、大人の言葉遣いができるすっかり落ち着いた経営者になっていました。

とかく飲食店には常にブラックな気配がつきまとい、結果として人材が居着かない、若い人が敬遠する仕事となってしまいました。賃金が安くサービス残業も強要されがち。接客業務のオペレーション化が進み、調理もセントラルキッチンで料理が作られる方式の店も少なくないため、働いてもなんのスキルも身につかないというイメージもあって、特にチェーン店は不人気なカンジがあります。

結果としてより人件費の安い外国人を雇う店が増え、たどたどしい日本語で「おきまりですか」と言われて動揺することも多いと思いますが、人件費が安いから外国人を雇うという発想も人権面では問題ではないのでしょうか。
たびたび問題になる技能実習制度と同じく、外国人を低賃金で雇うという感覚が根付くと国際的にもどうなのかと思いましたが、聞くところによるといわゆる新興国でも単純作業はより貧しい国からの出稼ぎ労働者が担うようになっているらしいです。低賃金の労働者が海を越えて行き来する様は現代の奴隷船を思わせますね。

一方で先進国である我が日本でも、同国民の低賃金化が止まりません。上記の飲食業の問題や、労働集約における単純作業の非正規社員化、さらには高等職である大学研究員もポスドクというカタチで不安定な立場と低賃金労働を強いられています。

90年代初頭から始まった不況とデフレによって、特に若者に対して「相応の対価を払わない」という動きが活発化し、定職を得られなかった当時の20代の多くがフリーターや非正規雇用に甘んじることになりました。2000年に入りIT化でにわかに景気が回復してきました。長い苦渋の時間を耐えた若者に、政府がつきつけたものは、「痛みを伴う改革」でした。

派遣業法の改正により派遣労働者を送り込める業種が増えたことにより、人材の流動化をはかるという名目でしたが、それから10年ほどたった現在、これまでも十分痛みに耐えてきた若者は中年となって今なお非正規社員としてスキルアップもできず低賃金のまま放っておかれることになりました。

これに対して当時の大人が「自己責任論」を展開して様々な責任から逃げていったわけですが、結果として今にいたる日本の国力低下はこれらの失策のためではないかと思います。

というのも、資源がない日本において、唯一の資源は「人材」だからです。

人材の質をあげるための教育を徹底した結果、他国に比べて優秀な人材が育成できるようになりました。しかし彼らが大学を出たところでふさわしい仕事は与えられず、結果として(多大な税金を使って育てたにも関わらず)使い捨ての単純作業者にしているのだから、贅沢を通り越して頭が悪いのかなと思わざるを得ません。

一方で「ゆとり教育」をはじめとした教育方針の転換により、親の所得によって受けられる教育の質が極端に変わってしまうという事態も起きるようになりました。しかし教育関連予算の削減により教員の数も増えず、結果的に教員一人一人の負担も増大しており、すでに教育機関がその任を果たせないような状況になっているのではないかという不安も隠しきれません。

制度疲労を起こす公立学校に不安を感じる資産階級の子供達は私立へ進学していきます。彼らが大人になったとき、この教育の差が大きな階級の断層となることは確実です。では私立へ進学した人間が果たして日本を牽引するエリートとなれるのかといえばそうでもなく、俯瞰して見れば日本という国が制度疲労を起こしているかのようにさえ見えます。

一方で、マクドナルドやベネッセで失敗続きの原田泳幸氏のように、ある程度の年齢とキャリアがあると、どれだけ失敗してもこれまで培った人脈のおかげで放逐されずに済んでしまう人もいます。どれだけ人脈というものが必要かと痛感させられる話です。

これらの事象をひもとくと、景気がいい時代に生まれた人達には、氷河期以降の人間はどれだけがんばっても叶わないという老害国家の現実に直面します。

さらに「安い」外国人労働者が増えていけば、日本の若者の労働対価も下がっていきます。さらには十数年の後には多大な教育予算を割いて人材育成をする中国やシンガポールの子供達にもかなわなくなり、日本人の若者は労働者として質の低い人達に成り下がる可能性が高まります。

そのような事を踏まえて、以下の記事を読むと感慨が深まることでしょう。

リンクトブレイン、ゲーム会社に未経験者仲介(日本経済新聞)

 エンジニア派遣のリンクトブレイン(東京・千代田)はゲーム開発の未経験者をゲーム会社が割安に雇うことができるサービスを始める。データ入力など特別なスキルがなくてもこなせる作業に就く人材を仲介する。仲介料は1人あたり数万~数十万円と、既存のサービスよりも半額以下になるという。ゲーム業界で働きたい学生や第二新卒の登録を見込む。

技術と経験を持った人材の不足やゲーム内容の高度化でスマートフォン用ゲームの開発費は高騰している。未経験者に簡単な作業を任せられれば優秀な人材を別の仕事に振り向けることができる。

「ゲーム業界で働きたい学生や第二新卒の登録を見込む。」って、学生をクリエーターとして育てるのではなく雑用として使わせようという発想が日本のクリエイティブの現場の限界が見えてゾッとしますね。

誰しも最初は雑用からはじまるのは事実ですが、「データ入力など特別なスキルがなくてもこなせる作業に就く人材」として学生や第二新卒をあてがうというのは、業界として何十年後を見据えてのことなのでしょうか。

もっとも、この派遣会社からすれば仲介料さえもらえればよいわけで、日本のゲーム文化をどうするといった考えはあまりなさそうですけど。

今開催されている東京ゲームショーもソーシャルゲームの出展が多いようですが、ソーシャルゲームはコンテンツとしてのゲームの普及には貢献するでしょうが、パッケージゲームのようにゲーム文化の深化にはあまり寄与しないように思うのですよね。

このような流れはゲーム業界に限らず様々な業界へ波及していくことになるかと思います。

こんなことでいいのかなぁと、記事を読みながら思った次第です。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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