【ニュースの小ネタ】森山高至という現代の「道鏡」


突然ですが、「道鏡」という僧侶をご存じでしょうか。

時の女帝孝謙天皇の治癒祈祷の功績を受けて寵臣となり、後に称徳天皇として重祚した際、人臣を極め権力をほしいままにした「怪僧」として伝えられています。
有名な伝説として独身であった孝謙天皇(称徳天皇)と肉体関係があった等々がありますが、これはあくまで後世の創作の域を出ない話なので横に置いておきます。

さて。

先日鳥越俊太郎以下の他候補を瞬殺して都知事に就任した小池百合子女史ですが、既存の都政からの脱却を目論んで様々なところに手を突っ込んでいる最中です。

小池都知事の選挙戦略が「暗躍する都議会の打倒」であったため、これら既存路線の都政を改革するのは投票した有権者の期待に応えているということなので、それはそれで良いでしょう。

問題は、実際にはなんの問題もないところを大きな問題とし、その問題を顕在化することで敵対(しているのかどうかはよく分かりませんが)陣営の勢力をそぎ落とし、自分の功績を高く見せようとする「難癖政策」に終始しがちになっているところです。
これ、主にリベラルな人とか環境団体とか社会派NPOなどがよく使う手です。見えてない問題(というか実際には問題ではない)を真っ先に明らかにしてその問題のパイオニアになれば、言論人として、良識人として、もしくは社会問題に斬り込む実戦派知識人としての地位を確立できるからです。

もっと端的に言えば、それでおまんまが食えるってことです。

それを「極右」と見なされる小池知事がやってしまうというのもなんだか滑稽な話ですね。

で、この改革のターゲットとなっているのが、都議会のドンと目されている内田茂議員が大きな地盤とする建設事業関連政策です。その中でも最近メディアを賑わせているのが、豊洲移転問題です。

豊洲移転問題については他所に詳しく記載されているので簡単にまとめますが、盛り土がされていないなどもともとの建設計画と違っていた(とされる)こと、その地下空洞にたまっていた水が強アルカリを示しなおかつベンゼン・ヒ素といった毒素を含んでいた(とされる)ことを理由に築地市場の閉鎖と移転時期を延期したという問題です。

もっと簡単に言えば豊洲の新市場には様々な問題があって生鮮食品の市場としては不適切である、ということです。

しかし、その結論に疑問を持つ人達も多く、特にインターネット論壇では多いに議論を呼んでいる問題となっています。

当初は小池知事の決定も大いに揺れていたようでしたが、ここにきて「森山高至」という、建設コンサルタントが表舞台に立ったことで、事態が急転直下しました。

経緯や森山氏がいかにアレかという事については、山本一郎氏の記事に詳しいので、こちらを読んでいただきたい。

盛大にガセネタを乱舞させていた森山高至さんが東京都専門委員に就任のお知らせ(追記あり)

この記事の論旨をまとめると、この森山高至氏はガセネタくさいマッチポンプの繰り返しによって社会的地位(かつ経済力)をたかめ、ついには小池知事に取り入って東京都専門委員に就任したっていう話です。

山本氏の記事にはそのガセっぷり、マッチポンプぶりが明かされており、正直「あの」内田茂議員どころではないのではないかという疑念さえ漂わせています。

新国立競技場のザハ案をひっくり返したり、豊洲市場にケチをつけたりと、その行動は建設エコノミストの名に恥じないわけですが、これらの案が廃案となった後、山本氏の記事のように彼が所属するCRAなる施工会社が請けていたら、それこそ都税を懐に入れる行為なわけで、少なくとも建設族のドンと呼ばれる内田茂議員との対決を打ち出した小池知事ですが、このままでは内田茂議員を追い払って似たようなポジショニングをしている森山高至を都庁に入れるだけというおかしな話になりませんか??

まあ、実際のところ私は都議会事情や都庁事情や建設事情どころか積算のやり方も分からないので、とりあえず素人でも分かる疑問の話をします。

まず共産党が実施した水質調査の件。各所で言われているように、調査方法がだいぶ大雑把な上、試薬の使い方もあやふや、ついでに軽装で危険とされるエリアに立ち入ったことなど、疑問符しかつかない状況です。

一部メディアではpH試験紙を「リトマス試験紙」と言うなど、情報の錯綜どころか分かってないんじゃないのかという見解すら見られています。個人的には共産党議員が使ってたpH試験紙ってそのへんの熱帯魚屋で売ってるような簡易的なものだったことが気になります。この試験紙は一部研究などでも使われるようですが、熱帯魚水槽のpHを計測するのに使うようなものです。熱帯魚の中には酸性をこのむ魚(アマゾン水系の魚など)とアルカリ性を好む魚(アフリカ系の魚)がおり、それぞれ流木だったり石灰岩を使うなどしてpHを調整します。魚が暮らしやすい環境であるかどうかをチェックするためのものが、共産党議員が使っていた(簡易的な)pH試験紙であり、正直これでpH12出ましたと言われたって困るわけです。

というか、私の中では本当に熱帯魚屋で買ってきたのではないか疑惑が晴れません。

アクアリストがルーチンワークで使っているようなもので21世紀にドヤ顔されたって困るのです。

それより問題なのが、以前からヒ素やベンゼンは充満していると言われている豊洲の地下に、半袖スラックスという軽装で入ったことです。一応長靴を履いていましたが、それにしても雨具レベルのもの。濡れるのを避けるために履いているだけです。

東日本大震災の折り、事故を起こした福島原発の視察に訪れた枝野官房長官(当時)がフルアーマー枝野と揶揄されるような完全防備で登場し、笑われたり怒られたりしていました。
しかし、官房長官という重席にあり、また危険が及ぶ可能性が高い現場を視察するには当然の選択です。枝野官房長官が被爆した場合、国政が滞るなど困る人は多くても誰にも利益にはなりません(政権がどうだという話は別として)。

何が言いたいかというと、都民の代表として選出されている都議員が、カジュアルな格好で危険エリアに入ったリスクヘッジ意識の低さです。かつて炭鉱では毒ガスの有無をしらべるのにカゴに入ったカナリアを使ったと言われますが、今回の視察では彼ら自身がカナリア役になっているという悲しくも馬鹿馬鹿しい状況を作り上げてしまっているのです。

簡単に言えば、「その空洞ってめっちゃ安全じゃん」ということを身をもって証明してしまったということです。

なお、pH12くらいの強アルカリ性になると、人によっては触れただけで皮膚が炎症を起こす場合があります。なので素手で触ることはオススメできないのですが、水を汲む議員たちが手袋すらしていないということに驚きを隠せません。安全だって知っていたのですかね?

こんな茶番劇を「リトマス試験紙」を始めとする科学的見識のなさを披露しながら、いかに豊洲が危険であるかという報道に終始するマスコミも実に滑稽です。こちらがマスコミという水槽にリトマス試験紙ぶっこんでやりたくなります。おそらく赤くなると思いますが。

ちなみにpHの基準値は7です。12という数値に惑わされますが、7を基準にすると5しかあがっていません。実際に強アルカリ性と呼ばれるpHではありますが、草津温泉のpHが2くらいだと考えると、そんなに珍しいpHでもありません。
しかし報道を見ていると、マスコミの人達はpHは0から始まってると勘違いしているのではないかと思えます。各新聞社には科学班がいるはずですが、各社の報道を見ると科学班の検証すら通してないのが丸わかりです。

 

そもそも共産党が検査に出した結果でもヒ素、ベンゼンは検出されたものの通常の値だったと結論がでているわけで、普通だったら「なら問題ないじゃん」で終わる話です。ヒ素もベンゼンもその辺にある物質ですし。ひじきなんてヒ素だらけですし(ついでにヨウ素も)。

またこのような調査を行う場合、普通は比較検査というものをやります。でないと、判断する情報が少なすぎるからです。

今回の場合ですと、築地の地下、もしくは土壌の検査を行い、豊洲の結果と比較検証するのが当然の流れです。豊洲からはヒ素とベンゼンが出た。だったら今の築地市場はどうなの?と思うのは当然だと思うのですが。その上でどちらが安全かを比較しない限り、本当の意味で都民の健康は守られないわけです。実際、今の築地の方がヒ素もベンゼンも上だったら、今騒がれているロジックを適用すれば一刻も早く豊洲に移動するべきという結論になります。もちろん、豊洲の方が数値が上なら現状のまま存続となるでしょう。

…が、築地市場はすでにアスベストの問題や築年数の問題もあり、現在の建築基準に照らし合わせる必要もなくアウトなんですけどね。

 

 

そして、フジテレビで放送されたという豊洲場内の写真。四階のパッケージ棟の写真らしいのですが、柱が盛大に傾いているように見えます。画像はリンク先で見て下さい。

フジテレビが1枚の写真で豊洲市場の柱の傾きを疑う→東京都は否定。専門家の見方は

この画像に対し、番組に出演していた識者の見解は以下の通り。

・プロカメラマン「レンズによる歪みは外側にいくほど大きくなるものですが、この写真は一直線で傾いている。レンズによる傾きではないと思います」

・建築エコノミストの森山高至氏「普通の柱は曲がらないし、梁ともつながっているし、柱に問題があるとすると、梁や床にも全体に影響があるはず」

・日本地質汚染審査機構の楡井久理事長「地下ならこういうのは起こりやすいけど、4階で(柱が傾くのは極めて珍しい)。(柱が)傾いているのは確かですね」

…いや、どこから見てもパース以外に見えないのですが。

この写真はiPadで撮られたそうですが、iPadのカメラレンズの焦点距離はモデルによって違いはありますが35mm換算で30mm~40mm程度だそうです。簡単に言えば、広角レンズということです。

素人考えでは写真というのは「見たままありのままに写る」と思われがちですが、実際にはレンズの特性によって人間が見たものと違った状態で写ります。そしてほとんどのスマホやタブレットのカメラは、使い勝手を優先して広角のレンズを搭載しています。

集合写真を撮りやすい、望遠はデジタルズームと画像補正で対応できるため、料理や自撮りなどで接写すると被写体が強調できる等、写真にあまり詳しくない素人でも使いやすいために広角寄りのレンズが使われているのです。
こう見ると広角レンズはいいこといっぱいに見えますが、大小として周辺が歪むという現象が起きます。これがプロカメラマンが言っている「レンズの歪み」です。

パース(パースペクティブ)とも言われるこの現象は、奥行きのある「空間」をむりやり「写真」という平面におさめるために起きる現象です。

例えばこうです。

これは35mm換算で14mmという超広角レンズで取ったものです。当然、私達の目には都庁がこんな風に見えることはありません。これがパースです。

広角になればなるほど周辺のものを引き寄せて写そうとするので、このような現象が起きます。そのため広角レンズを使う場合は、歪んでしまわないように角度を調整して撮影します。もしくは上の写真のように、わざとパースをつけて人間の目では見えない写真を作ったりもできます。これのようなパースを自在に操るのがプロカメラマンですが、番組内では「レンズの歪みではない」と言っているようです。

なお、上記記事には、プロカメラマンの回答はトリミングされている可能性があり、「歪み」とはレンズの収差の事を言っているのではないかという指摘がされています。アマチュアカメラマンである私が分かる程度の事を、プロカメラマンが見抜けないわけがありません。となると、発言を番組側の都合がいいように編集されているかもしれない、と考えるのが一番自然ということでしょう。

この豊洲市場内の写真は、中央区議の渡辺恵子議員から提供されたという写真です。写真の素人であろう彼女は、おそらくパースなど理解せずシャッターを切ったのでしょう。ここまではどこにでもある話です。

しかし、彼女自身が「平成10年一念発起して家業である築地仲卸(鮮魚)の世界に飛び込み、現在に至る。(わたなべ恵子ホームページ)」と書いている通り、築地サイドの人間であることは留意しておかなければなりません。わざと歪ませて撮ったとは言いませんが、この写真になにかしらのバイアスがかかっている可能性は否定できない、ということです。

そしてまた、ここにきてまた「森山高至」なる名前が出て来ました。

ご自身でも言ってる通り「普通の柱は曲がらない」のです。逆にこれだけの角度をつけて柱を作るほうが難しいわけです。彼は当然建設エコノミストを名乗っており、また建設会社CRAの取締役なのだから、そんなことは見れば分かるはずです。ついでに言うなら、現在の公共工事の建設管理でこのような事態が起きるはずがないのは、自身の会社でも公共工事を請け負っているなら分かっているはずです。

森山氏は前述の通り新国立競技場のザハ案を批判し独自の改修案を発表したり、何かと都内の建設事業にケチをつけて回っている人物のようです。そんな人物が今回の豊洲問題にしゃしゃり出てきてついには都の委員会に指名されるという面白い展開になっているわけです。

で、この森山氏、TwitterではこんなTweetをトップに固定しています。

 


耐震偽装問題がどうこう言っておきながら「都立マンガ喫茶」にするとか、どういう脳回路しているのでしょうね。耐震性に問題があったらマンガ喫茶としても使えないですよね。

アイロニーとして言ってるかもしれませんが、こんな面白くもない皮肉を固定ツイートに設定しているような人が、豊洲移転問題をひっかきまわしているという現実を都民のみなさんはしっかり認識しておく必要があります。

建設による出費はいかに多額になろうが建設業者の人々の給料となり地域経済を回転させる原動力となります。何百億から何千億円に費用がかさんだとしても、最終的にはなんらかの形で市民の懐に入って来るのだから死に金ではありません。

しかし、移転延期でかかる維持費は死に金です。何も生まないお金です。豊洲移転が進まなければ、この無駄金がひたすら都税から浪費されていくことになります。

ザハ案が最初の試算よりも建設費が大幅に上回ろうが、作ってしまえばいいのです。豊洲が試算よりも建設費がかかったからなんだというのです。そのようなコスト意識高い人達がよってたかって建設的とはいえない豊洲バッシングを行い、維持費という捨て金を積んでいく様は本当にエコノミストを名乗ってよいものなのだろうかと疑問を持ってしまいますが、ともあれ小池知事直々のご指名としてこんな頓珍漢が都の公共事業に関わってくるようになったのは、都民としては悪夢のような話であります。

そして、マスコミがこれらの前提の問題を差し置いて「豊洲が危険」という結論に終始する理由ってなんだろう、と思うわけです。

元から、結論ありきで報道しているのではないでしょうか。

pHが12とかヒ素やベンゼンの含有値がどうかなんて実はどうでも良い話で、「豊洲が危険」という理由さえあればいいように思えます。規定値以下なのだから問題ないはずなのに、反豊洲派の意見ばかり取り上げる姿勢をみても、「豊洲が危険」という事実を作りたいがために誤謬を誘うおかしな報道を繰り返しているのではないでしょうか。

そんな事やってマスコミになんのメリットがあるの? と思われるかもしれませんが、マスコミにとってニュースバリューが高い問題というんは、社会問題から芸能人の下半身事情まで、全部「メシのタネ」になります。そして問題のインパクトが大きいほど、問題の報道の価値はあがります。そして今稼げるネタは「豊洲」と「小池知事vs都議連」なんだろうなぁと思うわけです。

かつて日本の情報流通はマスコミや出版が独占していたわけですが、インターネットの定着とスマホの普及によってその地位が脅かされています。マスコミの情報しか判断材料を与えられなかった国民は、マスコミに言われるがまま世論を形成し、様々な社会悪と戦わされてきました。

しかしインターネットによりマスコミの誤謬が次々と明らかになり、またスマホの普及によって誰もが簡単に「現場検証」が行えるようになりつつあります。つまり、マスコミが一元的に情報を管理できた時代はすでに終わりを迎えたということです。

市場価値のなくなった雑誌は次々と廃刊に追い込まれています。
このような状況にも関わらず、マスコミはいまだに自分たちだけが世論を動かせると信じています。そこにマスコミを利用して、自分の立場を強めようとする政治ゴロが表れ、おかしな言いがかりをつけ続けているのが、今の豊洲移転問題ではないでしょうか。

 

 

で、ここで冒頭に出てきた道鏡です。

どうです? 小池知事をたらしこむ森山氏が道鏡に見えてきませんか?

女性君主にはうさんくさい男の家臣がつきものです。森山氏もそんな「うさんくさい男の一人」のように見えるのです。

大丈夫なんですかね、これからの都政。小池都知事を生み出したのは都民ですが、こんな混迷を極めると思いませんでしたし。対抗候補は勝てると思わなかったなどと言い出す始末。日本の民主主義はここまで堕落したのかとため息しか出ません。

この調子でムダ削減と称してオリンピック施設まで見直しがかかったら2020年に間に合うのか不安になってきます。とりあえず小池知事は都議連や都庁職員との戦いをする前にやるべきことを粛々とやっていただきたいものです。


以下、(長い)余談。

なお、道鏡の名誉のために言っておきますが、彼はきっかけは加持祈祷でしたが、その後は権力なりの仕事をしています。

聖武天皇の皇后光明子の縁戚ということで権力を握った藤原仲麻呂は、政敵を排除し一族を朝廷の要職につけるなどして藤原閨閥の権力を確固たるものにしていきました。その過程で皇太子道祖王を廃太子し自分に都合の良い大炊王(後の淳仁天皇)を新たな皇太子につけるなど、専横を極めました。大炊王が淳仁天皇として皇位につくと、皇族以外で初めて太政大臣の位につき、名を恵美押勝と変えました。その過程で他の貴族達が左遷、弾圧され、特に藤原氏の専横に不満を抱いた橘氏、大伴氏はクーデターを起こそうと画策するも失敗、主犯の橘奈良麻呂、大伴古麻呂は拷問により殺害、道祖王などこれらの反乱に加担したと思われる皇族も侮辱的な名前に改名させられた上、同じく拷問により殺されました。

こうして政敵を一掃し朝廷内の恵美押勝の権力は猖獗を極めたのですが、その後ろ盾の光明子が亡くなり、その子孝謙上皇が道鏡を寵愛するようになると一気に風向きが変わります。道鏡を脅威に感じた恵美押勝は淳仁天皇を通じて孝謙上皇に道鏡を重用することをやめるように忠告させますが、これにより孝謙上皇と淳仁天皇が敵対することになります。淳仁天皇の権力は弱まり、同時に恵美押勝の権力も急速に衰退していくことになります。

朝廷に居場所を失いつつあった恵美押勝は、橘奈良麻呂らと同じように孝謙上皇と道鏡に対してクーデターを画策。しかし密告により事が露見すると、孝謙上皇側に先手を打たれてクーデターは失敗。地盤のある近江を目指して逃亡します。それに対し孝謙上皇は遣唐使として有名な吉備真備に恵美押勝追撃を命じ、軍を率いさせて近江へと向かわせます。

吉備真備と言えば玄宗に寵愛されたことで有名な阿倍仲麻呂の遣唐使の同期であり、二度の遣唐使として入唐している時の賢者です。また恵美押勝が権力を握る以前は右大臣として朝廷を動かす要職にありました。しかし恵美押勝が権力を握るようになると、疎まれて閑職に追いやられ、不遇をかこっていました。

そんな吉備真備が恵美押勝の乱と共に中央復帰し、追討軍を率いたのは、彼が唐で軍学を修めていたからです。学者であり政治家でもあり、さらには軍学を極めたというチート的な人物、それが吉備真備です。

そんなチーター相手に皇太后と同族というだけで専横した恵美押勝が勝てるはずもなく、太政大臣にまでなった彼は近江北部の戦いで敗死。橘奈良麻呂たち同様に名前を奪われた挙げ句、一族郎党処刑されることになります。

その後、道鏡は吉備真備らと共に重祚した称徳天皇の政権を支えました。

反乱を起こした恵美押勝の自業自得とも言えますが、道鏡たちが活躍した時代、藤原氏はかつて自分たちが弾圧した諸貴族どうように雌伏を強いられ、表舞台にあがることはありませんでした。

 

しかし称徳天皇が没した後、藤原氏の意向を強くうけた天智天皇の孫、光仁天皇が即位。壬申の乱以降皇統を独占した天武天皇の子孫は光仁天皇在位時に相次いで死亡し、ついに血統を絶やしました。以降皇統は天智天皇の子孫のみが継承していくことになります。

藤原氏の反感を買っていた道鏡は、下野国の薬師寺へと左遷されることになります。その際に藤原氏らに対して反乱を起こすように助言されたとの説もあるそうですが、彼は恵美押勝のように見苦しいマネをせず、諾々として下野国へと下っていったようです。そしてそのまま下野国で生涯を閉じます。

光仁天皇の即位後、藤原四兄弟の重用により藤原家は復権、後の摂関時代まで権力を保つこととなります。

ここでポイントとなるのは、称徳天皇と道鏡の時代が、奈良時代、平安時代を通してほぼ唯一藤原氏以外の人間による政権運営がされたということです。途中、醍醐天皇の「延喜の治」の歳に菅原道真が右大臣になるなどしましたが、それでも藤原氏の地盤は揺らぐことはありませんでした。むしろ菅原道真を始めとして藤原氏と比肩する力を持った貴族達はなんらかの理由をつけられて中央を追われる身となっています。この藤原氏の天下は、平清盛が台頭するまでのおよそ400年間に渡り続くこととなります。

また、道鏡の風聞・悪評は、彼によって苦い思いをさせられた藤原氏による後世の創作である可能性もあります。アレが大きいとか、アレが大きいとか。

このような歴史の改ざんは政敵を貶めるために古今東西どこでも行われたことであり、特に珍しいことでもありません。

事実、小池百合子は都議連を悪役に仕立て上げ、彼らと対立する構造を作り上げることで都知事選に勝利し、都知事となった後は森山高至のような怪しげな人物を取り立てているわけで、1300年たっても人間のやることって変わらないんだなぁと改めて思う次第です。

もっとも、道鏡は上記のように藤原氏の影響を廃し称徳天皇の親政を実現したという功績があります。が、森山氏はどうでしょうね。比べたら道鏡に失礼かも知れませんけどね。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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