【レトロゲーム】スペースマウス、35年ぶりの大復活! Steamで配信開始!


日本国内でのパソコンゲームの歴史は、パソコン雑誌によってはじまりました。

今のパソコン雑誌、ゲーム雑誌は、新商品の紹介やゲーム攻略記事、その付帯情報が掲載された「情報誌」です。
しかし80年代初頭のパソコン雑誌は、まさに「ゲームそのもの」でした。

当時のパソコン雑誌にはゲームプログラムが掲載されていました。このプログラムを打ち込むと、そのゲームが遊べてしまうというわけです。そのためパソコンでゲームを遊びたいユーザーは雑誌を買ってやりたいゲームのプログラムを自力で組むしかなかったのです。

市販のソフトもありましたが、プログラムを組みたくないけどゲームだけは遊びたいというユーザー向けに雑誌が用意したプログラムのカセットテープや、パソコンショップが独自に作ったオリジナルゲームくらいです。後者からはメジャーなゲームメーカーに成長する会社も生まれましたが、それもソフトの流通網が整備されパソコンゲームを取り扱うお店ができてからです。ソフトバンクが流通をまとめあげるまで本気でパソコンゲームを取り扱う取次やお店もなかったため、ゲームの購入ももっぱら通販に限られていました。

結果、手軽にゲームを入手できる手段として最善手が「パソコン雑誌」であり、当時のゲームキッズたちはお経のようなダンプリストとにらめっこしながら、こつこつ打ち込んではテープにセーブするという作業を繰り返していました。

しかし掲載されるプログラムが長大化すると、当然ながら自力で打ち込む読者も減り、相対的に雑誌社が販売するテープを求めるユーザーが増えていくことになりました。当時のパソコン雑誌は平然と長大なダンプリストを掲載するという、今考えると正気の沙汰とは思えない編集方針のものが多かったのです。ベーマガのように掲載するプログラムの行数に制限をかけている雑誌は珍しかったような記憶があります。

このような事情から、各パソコン雑誌は、「読者投稿」という形で面白いゲームを集めていました。掲載されるゲームが面白ければ読者は増えますし、テープの売上げも伸びるからです。

そこでハガキ職人ならぬプログラム投稿職人という人達が登場することになります。

そんなプログラム投稿者の中でも、伝説となっていた人物が「芸夢狂人(げーむきょうと)」です。

当時のパソコンゲームは、言うまでもなくビジュアルが大変貧相でした。そのため、アスキーアートのような画面でも面白いと思わせるような、圧倒的なゲーム性が求められていたのです。そんな神ゲームを作るプログラマーは「スタープログラマー」と呼ばれ、パソコンユーザーやゲームキッズの尊敬を浴びました。言うまでもなく芸夢狂人もそんなパソコンゲーム黎明期を支えたスタープログラマーの一人です。

 

そんな芸夢狂人の名作「スペースマウス」が、35年ぶりに復活と聞いたら、これはもう買うしかありません。
しかも配信プラットフォームはSteam。お店を介さない販売方法は、まるで通販時代に逆戻りしたかのようです。

なお、お値段は498円。500円玉で1円玉2枚返ってくるお手頃価格です。35年前は3000円くらいしたかと思いますが(しかもテープで!)。

ss057

雰囲気はよく出ていますが、キャラクターもポップで35年という時代の差を…あまり感じないですね(笑)。レトロゲーム感たっぷりのリメイクとなっています。画面下部には芸夢狂人の名前も!

ss052

オプションでMZ-700版も遊べます。ただし、当時のゲームをそのままエミュレーターで走らせているわけではなく、わざわざMZ-700版に近いビジュアルにアレンジしています。そのためゲーム性は上記の今風(?)のスペースマウスとほぼ変わりがありません。プレイ感も当時と違って画面書き換え速度も速いので、当時のPCゲームにみられたカクカク感はありません(オプションでフレームスキップを有効にしてカクカク感を出す事もできます)。

ss053

記号で構成されたゲーム画面。敵も♦と♥を交互に表示することでアニメーションしているように見せるという画期的な表現。少ないリソースの中で少しでもリッチにみせようというアイディアが光ります。

当時のパソコンの性能の問題では、高速で動くグラフィック描画のゲームを作ることが難しかったため、アルファベットやプリセットされた記号(■・○・$など)を組み合わせていました。今でいうアスキーアートのようなものです。

ss054

ビルの屋上まで到達すると、グラフィックキャラクタの宇宙船が迎えにきてくれます。この宇宙船もテキストキャラクターで表現されて味がありますね。

MZ-700版はPCGに対応したバージョンも収録されています。

ss055

PCG(プログラマブル・キャラクター・ジェネレーター)とは、特定の文字を違うグラフィックに書き換えることができる機能です。

上述のように処理速度を稼ぐために、当時のPCゲームはアスキーアートのような画面にならざるを得ませんでした。
しかし、文字の表示は高速で行えることに着目し、文字を別のキャラクターに書き換えることでよりリッチな画面作りができるにしたのがPCGです。当時のゲームはアーケードゲームを含め、このPCGを使っているものが多くありました。処理負荷が少ないため、ファミコンを含めハードがまだまだ貧弱だった8bit時代には欠かせない機能だったと言えます。

このモードでは敵もインベーダーようなキャラクターになっていますが、中身はPCG非対応版と同じく♦と♥です。

ss056

宇宙船もギャラクシアンのような形になっています。これも中身はグラフィックキャラクタです。PCGの偉大さと当時のゲーム作りの裏側(苦労?)がよく分かります。今のようにRAMが膨大で用意されたグラフィックを簡単に表示できる時代ではなかったということも痛感させられますね。

ここまで「原作(風)」の画面を紹介してきましたが、これらを踏まえて本作のメインコンテンツであるNES風アレンジ版を見てみましょう。

ss059

こちらもレトロゲーム風ではありますが、MZ版を見た後だとかなりリッチに見えてしまいます。
ビル名は芸夢狂人の本名(鈴木孝成さん)から取られているものだと推測。このスズキビルと同じように、各面のスタート画面には、URLや「AKIHABARA BEEP」などの文字が挿入されています。スポンサー名でしょうか?
そのうち「TERADRIVE」も入れていただきたいなぁ(セガに怒られない程度に)。

 

スペースマウスは上のフロアから下りてくるモンスターを避けながら、制限時間内にビルの屋上を目指すゲームです。
上るだけのゲームなので、使うキーも←、↑、→のみ。後退は許されません。

ビル内にゲットするとモンスターをはじき飛ばせる他、床を突き破って前進できるようになるパワーアップアイテム、扉を開けるための鍵、ボーナスアイテムの$、1UPする棒人間などのアイテムがあります。特にパワーアップアイテムは効果が絶大で危険なビルクライムを一気に進めることができるため、定期的に取得していきたいアイテムです。
パワーアップアイテムはモンスターと一緒に落ちてくるもの、フロアに落ちているものがあります。前者は運任せですが、後者は段取りを踏まえて取得することができるので、ステージ攻略パターンの構築に役立ちます。

モンスターは床の穴から落ちながら主人公に迫ってきます。しかし主人公を積極的に追いかけてくるわけではなく、進行方向に穴があったら落下し、着地後もそのままの進行方向を保ったまま移動を行います。簡単に言えばあみだくじです。モンスター同様に下へ降りてくるパワーアップアイテムも同様の挙動をします。

このようなモンスターの動きを踏まえるのが、スペースマウス攻略の基本です。
この敵の動きを見ると、フロアのあちらこちらに安全地帯があることに気づきます。

ss060

上の画像の場合、上のフロアから降りてきた敵が主人公手前の穴に落ちるため、この場所にいればミスにはなりません。

ss061

後退が許されない代わりに、主人公は落下しません。そのため床から2ブロック離れた空中にいれば敵に触られる心配はありません。

安全地帯にいれば、モンスターにタッチされて死ぬ事はありませんが、スペースマウスは「AIR」という制限時間があるので、このままジッとしていてもミスになります。そのため、モンスターに混ざって落ちてくるパワーアップアイテムをゲットし、安全地帯を抜けだす必要が生じます。

本作のパワーアップは、パックマンで生まれた「忍従と反撃」というアクションゲームの鉄則を豪快にアレンジしたものと言えます。
敵に反撃するばかりでなく、床を突き破って突き進むというど迫力っぷり。そのカタルシスがクセになっちゃいそうです。

シンプルなルール、豪快なパワーアップ、リプレイ性が高く挑戦心をくすぐられるゲームシステムと、ついつい遊び続けたくなるゲームです。気がつくと数十分時間が溶けていることすらあります。
ゲームが氾濫している現在においても、これだけ延々と遊びたくなるのだから、発表当時はどれだけ話題となり、どれだけのパソコンゲーマーが熱中したのか想像に難しくありません。

お手軽に遊べることもあり、私の隙間時間を奪いまくってくれるスペースマウスですが、まったく問題がないというわけではありません。

まずは若干操作性が悪いこと。

キャラがなめらかに動いているので騙されそうですけど、NESアレンジ版を含め原作を再現するために主人公は1ブロック単位で移動しています。そのため、キーの入力時間に対しキャラクターが進みすぎていると思うこともしばしば。
そのため正確な移動が難しく、取りたいアイテムがあったのに上の階へ行ってしまった(一度上に行ったら下は戻れない)、モンスターをかわしてパワーアップアイテムを取るつもりが、タイミングがズレてミスになってしまった等々の悲劇に事欠きません。
デフォルトで地形の自動回避(MOVE ADJUST)がONになっていますが、天井にあたって予期せぬ方に移動されることが多いので、これは切っておいたほうがいいです(ただし、設定は保存されないのでプレイするたびにオフにする必要があります)。

そして、ゲーム速度が速すぎること。

操作ミスを含め、キャラクタームーブがらみの悲劇が起きる理由は、全体的にゲームスピードが速いからです。

現代版スペースマウスはfpsの向上によりスピード感が高まり、アクションゲームとしてより面白いものになりました。しかし、「考えて動く」には少々速すぎるように思えます。

せっかく、ゲーム速度はあがったのに、操作性の問題もあって慎重なプレイが必要となり、かえってテンポが悪くなってしまいました。結果として「安全地帯でパワーアップアイテムがくるまで待ち、床を突き破ってビルを登る」プレイが最適解と気づくことでしょう。

おそらく元のスペースマウスも同様だったのでしょうが、ゲームの速度が遅ければパワーアップアイテムに頼らず敵をかわして進めるわけで、わざわざ安全地帯に引きこもってアイテム待ちすることもありません。しかし現代版はゲームが速いため、反射神経に自信がなければ、安全地帯でアイテム待ちしたほうが安牌ということになってしまうのです。

このゲームを手にとるユーザーの大半は80年代キッズのはずだから、速いアクションゲームは正直しんどそうな気がしますし。

あと要望として、右手だけでプレイできるように、Enterキーも決定キーとして使えるようになるといいですね。テンキーまわりだけで操作が完結すれば、リプレイ性がますます高まると思うのですが、いかがでしょうか?

(文/団長)

 


団長

「てらどらいぶ」管理人。 ゲーム開発のディレクター、動画配信サイト管理人のプロデューサーなどを歴任。 心のゲームは「ウィザードリィ」と「ザナドゥ」。ドラクエとFFならドラクエ派。

コメントをどうぞ

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。