インプットを高めなければ、アウトプットが高まるはずがない。


社会人をやってると「アウトプット」という言葉を盛んに聞かされます。簡単に言えば業務能力や結果を出力することです。「結果」でいいじゃんと思いますが、日本のビジネスシーンはムダに横文字が多いので仕方ありません。慣れましょう。

ビジネスサイクルが早まった今、研修期間すらもったいないということで、雑なOJTで新人に仕事を教えた気になっている企業が数多とあります。
これは「仕事は盗んで覚えろ」という日本の悪習がそのまま21世紀まで生き残ったようなものです。
しかし、その標語が使われていた時代は今に比べて業務そのものが単純なうえ、ほぼシングルタスクだったので見て盗む程度で事足りていたのです。

しかし、今はそうは行きません。

効率化の名の下に業務は圧縮され、マルチタスク化が進みました。一人の人間がまったく違う仕事を多数受け持つことも珍しくありません。

もはや、OJTなど役に立つ時代ではないのです。

このような時代にあって、人材育成の手間が増えた結果、社員教育そのものをコンサルタントにアウトソーシングするという会社も増えてきました。
しかし、どれだけ優秀な人材コンサルタントであれ、外部の人間であることには変わりません。社会人一般として必要なスキルや考え方を教え込むには良いでしょうが、どこまでいっても最後はその会社が人間を育てなければ、「使える人間」が作れるはずがありません。

超堅実な大手企業に勤めている友人が「うちは退職者がほとんどいないから、新人を三年かけて育てる」と言ってました。三年の間に徹底的にインプットを行い(その間はもちろん、新人が利益を出すことはほとんどない)、その後アウトプットしてもらえる人材になってもらえれば良いという方針だそうです。
ビジネスサイクルが早い現在、そんなにのんびり人材を育成していて大丈夫なのかと思いますが、退職率が低いため、時間をかけて育てればそれだけ人材層の厚さに繋がるわけで、三年しっかり育てた後に三十年以上会社に貢献してもらえれば投資効率としては非常にレシオが高いということになります。

しかし現在は、新人にさえ「即戦力」を求める傾向にあります。平成の大不況以来、人材の流動化が進んだ結果、「即戦力」というキーワードが神格化した結果です。

 

90年代に大不況が訪れ、社員に投資する予算が大幅に削られた結果、即戦力神話が形成されていったものだと思いますが、同時期に発生したITバブルやインターネットビジネスの隆興がそれに拍車をかけ、大企業に入社できたものの力を発揮できないと思っている人達が一攫千金を狙ってなだれ込んだという背景が、即戦力という言葉に力を与えているのは想像に難しくありません。

むしろ採用企業側としては、有名な会社でそれなりの実績を持つ人が入ってくればと思っているわけですが、これ、言い換えれば他社のリソースで育てた人材をぶっこぬいているようなものです。
こういう人材に需要があるからビズリーチのようなサービスが好評なのだと思いますが、道義的にはギリギリアウトな気がしてあまり感心できません。

とはいえ、元大企業の社員であっても、その会社に三年もいないような人材が十分なインプットを果たしているとは言いがたく、結果から言えば若者特有のおかしな万能感を持ってしまったがゆえに、地味な修行(会社からすれば育成なのですが)に耐えられず、リクナビやビズリーチに登録してしまう人が後を絶たないのでしょう。

そんな人達が生まれたばかりで人材不足だったインターネットビジネス業界で引っ張りだこになり、時代の勢いもあって荒稼ぎできた結果、そのおかしな万能感をましましにしてしまい、40代となってポンコツ管理職に成り果てているという事例も少なからずあるかと思います。

直感と時代に後押しで成功した人間や会社に、確固たる社員育成プログラムがあるわけがありません。
そのため多くの(元)ベンチャー企業には「自分で仕事をとってこい」というOJT以下の丸投げ体制となり、成長が実感できない賢い新人ほどよりよい環境を求めて出ていってしまいます。

先ほど言った話と矛盾するようですが、育成が終わった後に会社を辞めるのと、育成途中で見限って辞めるのでは、微妙にニュアンスが変わってきます。

新人の早期退職を語ると、大抵の場合新人のメンタリティや意識の云々の話になりがちですが、彼ら自身も人生の足し引きを常に行っているわけで、そんな新人の期待に応えられずに退職されて「最近の若い奴は」と言っている人間は会社にとっても老害に他なりません。採用のコストだってばかにならないはずなのに、新人をほいほい辞めさせてしまうのがお互いにとってどれほどムダか、理解できない程度の会社だから勢いを失った時に人材層の薄さゆえに一気に赤字転落していくわけです。

そういう意味で今のベンチャーに必要なのは最速で上場することなどではなく、有能な人間を自社で育てることなのですが、生え抜きの社員よりも格上の会社から落ちてきた人材に高いポストを与えてしまう会社も多く、離職率に拍車をかける結果になっていたりします。ここまでくると何がやりたいのか分からなくなります。人事や社長の考えを聞きたいところですね。

 

早期に責任あるポストを任され、経験を積んでレベルを高めていくのはある意味で合理的な部分もありますが、促成栽培であるがゆえに結果を重視しすぎてしまい、本人のインプットも十分ではなく、即時対応のような仕事のやり方を繰り返すため、やっている仕事やポストのわりにはペラペラな人もよく見かけます。

このような即戦力社会の中で、学生起業で会社をおこしたり、大企業につとめながらも三年もしないでフリーに転向したり、学生時代の特殊な経験を生かしてフリーランスになる方も多々おります。

それ自体はなに一つ悪くはないですし、そのような選択してしっかり結果を出している人もいます。

しかし、多くの人はインプットの少なさが仇となり、早々になにもできなくなる人も少なくありません。
「世界を変える」などと高い志を口にしながら、目の前のキャッシュ目当てに胡散臭いビジネスに手を染めていたり、極めてエモーショナルなビジネスやライティングに終始してしまったり、炎上を仕掛けて注目を浴びるようなおかしな手法に転んでいってしまったり。時間がたつほど、薄いメッキがパリパリと剥がれていきます。

個人発信が容易になった現在、ブロガーからプロのフリーランスにクラスチェンジする女性も増えました。その中でも高学歴や大企業勤務経験、そして若さと美貌を武器にする人達が注目を集めた頃がありました。
その独立心はとても素晴らしいと思いますし、女性というだけで需要がある世界もあるのでそれなりの勝算があってのことでしょうが、若さや美しさという揮発的な強みを武器にするのは大変危険です。

本人達はまだ若いのでそう思っていないでしょうが、誰にでも経年による容貌の変化は訪れます。「若くて美人」というだけで仕事がもらえるように「若くなくてアレ」となると、残念ながら「需要」は激減します。若さと美貌がウリだったとすればなおさらでしょう。
仕事が減り、経済力が衰えていくと、カラダへのメンテナンス費用も捻出できなくなり、武器であった美貌も錆び付くようになってきます。そうなると女性相手の美容の話もできなくなるので、ますます仕事が狭まっていきます。

そのような時期が訪れた時、分厚く積み重ねたインプットがあれば幾分マシな状況になるはずです。それがない女性フリーランスは、自爆覚悟の過激なパフォーマンスに走っていくこととなります。

例えば積極的に性の話題をテーマにしたり、メンタルヘルスであることを告白したり、過去の辛い恋愛経験(不倫とか)を明らかにしたり、赤裸々で生々しい恋愛論を展開したり、低所得の男性を貶めてセレブ感を演出したり。
アウトプットが尽きた彼女たちは、もはや薄い経験や直感でしかモノが語れなくなるので、プライベートや女性であることを切り売りせざるを得なくなります。

すまし顔で賢そうな事を言ってた彼女たちが、突如として女の部分をさらけ出すのはインパクトがありますが、それも結局は対処療法に過ぎません。一時的なアトラクトは稼げるでしょうが、若さや美貌以上に揮発的なものにすぎません。

某社の美人広報としてちやほやされていた某女史が偽ブランド品販売で捕まった際、SNSで開陳していたセレブ生活は真っ赤な嘘で、実はニートだったという残念な素性が暴かれてしまったことも、みなさんの記憶に新しいことかと思います。

 

インプットを怠れば、アウトプットが枯れていきます。
人間のイマジネーションが無限などということはなく、発想は経験や学習によってしか豊かになりません。
インプット(経験)の期間が一年程度であれば、おそらく一年持たずにネタ切れとなるでしょう。一年で荒稼ぎして一生分稼ぐつもりならいいでしょうが、そんなにウマい話が世の中にごろごろと転がっているはずがありません。

若者の万能感はしばしば功名心を煽り立てますが、アウトプットができなくても許される新人の間は良い勉強期間だと思い直し、徹底的にインプットを行う時間に割り当てるべきです。同時に企業も若者に「即戦力」など求めず、いずれ会社に貢献する人材としてしっかり育て、人材層を分厚くする努力をするべきです。

お互いにとってWin-Winのはずですが、大きな企業でもろくに研修もやっていない会社も多く、そのような会社ほど離職率が高いという現実を考えると、人間を成長させられない、育成できない、投資しない今の日本では、近いうちに先進国はおろか新興国にすら追い抜かれる状況になりかねません。

意識高い系の書籍やサイトを見ると、やたらアウトプットにこだわっていたりしますが、インプットを高めていれば自然とアウトプットも高まるものです。若い方々におかれましては、そのような誘惑に負けずに、将来を決める大事な時期だと思い、しっかりインプットしていただきたいところです。

意識なんて高くたって、別にお腹はふくらみませんからね。かっこわるくても地金を鍛えた人間が最後は勝つのです。インプット、ホント大事。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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