【WELQ問題】インターネット企業に潜む怪しい経歴の人間


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インターネットビジネス、特にBtoCが本格的に始動したのは90年代後半からであって、よくよく考えると20年も経っていないのです。

若く急伸した業界共通の特徴として、人材層が薄いこと、特に専門的なスキルを持つ人間が圧倒的に不足していることがあげられます。特にマネタイズに直結するスキルや知識がある人間は希少であり、当然のように高額な報酬で大企業に招聘されることもしばしばでした。

昨日の記事でもとりあげた「SEOライティング」も、今では1文字1円に満たないクラウドソーシングで丸投げされるような仕事にまで陳腐化しましたが、10年ほど前なら、そのスキルだけでも球団を持つ大企業に入社できるくらいの高級スキルでした。

当時は「検索にかからなければないも同じ」と言われており、各サービスは検索エンジン対策に躍起になっていました。

ただしGoogle神も今ほど賢くなく、順位判定も被リンク数と検索キーワード数というかなりアバウトな仕組みでした。

そのため被リンク数を稼ぐためのダミーサイトがそこかしこに立ち上がり、検索キーワードをフッターに大量にぶち込むというやり方が流行しました。今から考えると笑ってしまう話ですが、それが10年前のSEO対策の主流であり、零細サイトから大企業まで、このようなやり方を真剣に取り組んでいました。

サービス内容は二の次で、ともかくSEOというサイトも多いほどでしたが、これは先の格言にもあるように、どんなに優れたビジネスモデルやサービス内容を持っていても、検索結果に表示されない限りユーザーがアクセスしてこなかったためです。今でこそSNSなど検索以外の誘客導線もありますが、当時はせいぜい2chやそのまとめサイトでステマするくらいが精一杯でした。

なのでSEO優先すること自体はまったく責められないし、サービスに自信があるなら積極的に施策すべきことでした。

問題は、SEO技術や知識を持っている人間のそれなりの割合で、邪なやり方でPVを荒稼ぎしたり、あまりおおっぴらにできないようなマネタイズをしていた人達がいたということです。

実際、私が勤めていたそれなりに大きなインターネットビジネス企業にも、法律的にアウトなサイトを運営して荒稼ぎしていたという「SEOのプロ」がいました。そのサイトは諸々の法律に抵触し、その人も警察のお世話になったそうですが、それでもSEOの知識が豊富でその対策ができるということで、それなりの給料と地位を貰って働いていました。

これは悪質なアフィリエイトサイトなど、インターネットで小狡く稼いでやろうと考えた山師ほどSEOに詳しくなっていったという事情もあったためです。いまだにインターネットビジネス企業に「やったもの勝ち」精神があるのは、このようなメンタルの人間が社内に数多くいるためであり、おおっぴらに言ってしまえばろくでもない人間の集まりであったという話です。

そんな時代から10年ほどたちました。しかし、業界内の事情はさほど変わっていなかったようです。

ガセネタやパクリなどを盛大にやらかし、おととい一時閉鎖となったヘルスケアのガセサイト「WELQ」の運営について、DeNAの守安氏が一連の騒動について、TechCrunch Japanのインタビューに答えています。

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動(TechCrunch Japan)

このインタビューでWELQをはじめとしたDeNAのキュレーションサイトに、「WebTechAsia」という会社の出身者が含まれていたこと、そしてその事実をDeNAの社長である守安功氏も把握していたということが明らかになりました。

–DeNA Palette構想でできた内製メディアには事業を統括するDeNA執行役員、キュレーション企画統括部長でiemo代表取締役CEOの村田マリ氏と親交のある元WebTechAsiaの人材が大きく関与していると伺っています。同社はかつてBUZZNEWSというバイラルメディアを運営しており、盗用問題に端を発した炎上騒動があったのですが、その経緯は把握していましたか。

(守安功氏)はい、把握していました。立ち上げ期に関わっていて、メディアが一通り立ち上がった今年の頭に退職しています。

 

BUZZNEWSというバイラルメディアはあくびれもせずに他サイト、他メディアの記事をパクるという荒技を披露してくれたゴミの中のゴミ、Trash of Trashsだったわけですが、あまりにも堂々としすぎた結果ヨッピーさんにボコられたという経緯があります。

・悪質バイラルメディアにはどう対処すべき? BUZZNEWSをフルボッコにしてみた(ネタりか)

この記事内で今回のWELQと同じような対応をしていたことが明らかになっています。

要するに「クラウドソーシングで集めた外部ライターが書いた記事で僕は全然知りませんでしたし、紹介する記事を書けって指示したのに丸パクリで上がってきました」という内容なのですが、そんなわけないだろ。

これ、WELQの「死にたい」問題でもまったく同じ言い訳してましたよね。

「死にたい」検索トップの「welq」の記事、DeNAが広告削除 「不適切」指摘受け(ITmediaニュース)

DeNAによるとwelqは、会員登録した投稿者による記事と運営側が作成した記事で構成されており、この記事は会員による投稿記事だという。指摘を受け、記事から自己分析サービスのアフィリエイト広告を削除したが、記事の内容は「会員規約に違反していない」ため、削除や修正は行わないという。

いろいろな問題をはらんだBUZZNEWSは2015年2月4日に閉鎖されたわけですが、それから一年半、元WebTechAsiaの社員たちは何一つ反省しない様子で、今度は球団を持つ大企業であるDeNAを舞台に大暴れしていたってわけですね。

ここでTechCrunchの記事に戻ります。

–上場企業のメディア運営において、著作権まわりでトラブルを起こした人材を登用する狙いとは。

(守安功氏)メディアを立ち上げるノウハウを持っていたので、彼らを登用することにしました。そこは上場企業として問題ないという判断を下しました。

いやいや大問題でしょ。あなたが期待した「彼らのノウハウ」はBUZZNEWSのようなやり方なんですよ。問題にならないわけがないじゃないですか。

この発言、「DeNAがBUZZNEWSを買った」と言ったのと同義になってしまいますが、守安社長は自分の言葉の重さが分かってるのでしょうか。もし分かった上でやったというのはDeNAはもとより法令を遵守するつもりもなく、なおかつ問題にならなかったらしらばっくれようと考えていたということですよね?

–事業のキーマンの採用は現場の采配によるところが大きかったということでしょうか。

(守安功氏)メディア全体の方針やモラル的な問題に関しては私に責任があると思っていますが、現場の判断に関しては村田の判断が大きいです。

–ただ、社内外からSEOの手腕に関して「ちょっと強引じゃないか」という声も挙がっていたと伺っています。

(守安功氏)報道を見るとそういう面もあったのかなと思いますが、社内の中では把握していませんでした。

死にたいの頃から、これだけ騒がれていたのに、把握していなかったって、少し感度が低すぎやしませんか?

なお、「村田」というのはDeNAの執行役員である村田マリ女史のことです。彼女は元々キュレーションサイトの立ち上げで成功し、その手腕を買われて(ゲームプラットフォームとして凋落一方な)DeNAの救世主的なポジションで迎えられたそうです。

そんな彼女もシンガポールに移住していたそうですが、そういえWebTechAsiaもシンガポールに本社を置いてますね。まあ、なにか関係があるのかもしれませんが、山師の事情には興味がないので放っておきましょう。

 

最後に、WELQのSEO手法を細かに分析しているサイトがありましたのでご紹介します。

現役アフィリエイターがWELQのSEOが強い理由を解説しよう

これを読むと、WELQが戦術的にSEO対策を施していたことが分かります。そしてやはり、あかん手口を使っていたようで、ついでにいまだにhタグとか被リンクのドメインパワーとかが検索結果に反映されるという、Googleも実はそんなに変わってないんだなという現実を突きつけられます。

 

ついでにインターネットビジネス界隈は相変わらずそんな胡散臭い人間が跋扈する魔境であり、それは大手インターネットビジネスサイトでも大きく変わらなかったこと。そして先行者有利で稼ぎまくった大企業ほど、「やったもの勝ち」な昔ながらのベンチャースピリッツ(笑)を発揮してしまうという残念な事情が明らかにされてしまいました。

楽天もそうですが、日進月歩のIT業界の中で陳腐化しつつある「強み」を後生大事に抱え続けているから貯金も尽きていくわけです。状況が窮すれば上記のようにモラルが高いとは言えない人間も多いだけに、平然と禁じ手を繰り出してしまって炎上してしまうわけで、このあたりのクリーニングはいつになったら行われるのだろうと、元中の人である私は思うわけです。

と同時に、10年ほど前にSEOの腕を買われて入社した人達がそのまま会社に残り続けていれば、おそらく30代後半から40代前半と、若い世代が多いインターネット企業の中では重鎮とも言える年齢に達しているはずです。

年齢に相応な地位と権限のわりに、脳みそや遵法精神は10年前のままという人もおそらくいるでしょうし、業界的にやたらKPIを重視される傾向にあるなか、自分たちが率いている、もしくは任されている事業の業績が悪ければ、上場企業としてやってはいけない手段に出るひともおそらく出てくるでしょう。

もっとも、これは三菱をはじめ、別に財閥系だろうが新興企業だろうが、バカな人が数人いれば起きてしまうことなのでインターネット企業だけをどうこういう問題でもないのでしょうが、平成大不況に曝された結果、日本人のビジネスマインドがこのように帰結してしまったのだとしたら、それはとても悲しいことです。

そんな事を考えていたら、某SNSで非常に胡散臭いビジネスセミナーの話がWebメディア運営者たちの興味をひいていた現場を見かけてしまいました。

やってはならない方法を「賢い」と言い換えるのがベンチャーと考えている人達が消えないかぎり、インターネットの山師感もなくならないでしょう。

パクりバイラルがインターネットになんの価値を生み出さないのと同様に、違法ギリギリのずるいやり方でアトラクトを集める何かがユーザーの価値になるとは思えません。
彼らは口癖のように「世界を変える」と言いますが、世界を変える前にやったもの勝ちというご自身の考えこそ変えていただきたいものです。

そしてGoogle神におかれましては、より一層進化を頑張っていただきたく。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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