【ポンこれ】管理職のマネジメント能力不足と、業績低迷がパワハラと社内イジメを引き起こす

Weinen junge Mitarbeiterin mit Kollegen im Hintergrund

先々月に大きな話題となった、電通の新人女子社員自殺。ネット上ではブラック労働と共にいまだ後をひいていますが、マスコミではすっかり取り上げられなくなりました。

今回の事件を受けて、電通では、22時には消灯し、社員を帰すことにしたそうです。慢性的に残業が多い業態になっていたことを改める事にしたそうですが、今回の事件、本当に残業だけの対処でいいのでしょうか?

今回の過労死自殺、残業時間ばかりが強調されて報道されていますが、個人的には大変疑問です。

武蔵野大学の長谷川秀夫氏が「残業100時間くらいで自殺するとは情けない」と発言して炎上していましたが、個人的には言葉面だけとられるなら、この見地はそこまで間違っているとは思いません。

確かに異常な残業時間数ですが、多忙な時期であれば残業100時間くらいは経験したことがある人も多いはずです。残念な事に「残業時間でやる気を測る」という非常にダメな日本の企業体質においては決して珍しい数字でもありません。まして日本のオフィスは、残業しない社員は部内で白眼視される社畜牧場であり、社内のコミュニケーションや立場の問題もあって残業せざるを得ない空気を押しつけられています。

しかし、残業しなければ「ならない」のなら、やりようはいくらでもあります。例えば、正規の業務時間には休憩半分で仕事をし、残業時間2時間くらいで当日の仕事を片付けるなど。プライベートの時間は削られますが、体力やメンタルは温存できます。

なので、残業時間だけで過労問題を語るのは非常にナンセンスであると言えます。繰り返しになりますが、長谷川秀夫氏が100時間程度の残業時間で過労死するとは、という意見は下記の条件では発生しえません。

  1. 残業に見合ったインセンティブがある
  2. 平日の労働時間は過多でも土日はしっかり休める
  3. 名ばかり残業で実際には体力が温存できる状況で働いている
  4. 社内のコミュニケーションがしっかりできている
  5. 上司が無責任なパワハラポンコツではない

長谷川秀夫氏が残業やりまくった環境がいかなものかは存じませんが、少なくともバブル期の残業はダイレクトに業績および収入に直結し、人手不足で多忙ではあって働いた分だけの見返りがあったわけで、むしろ仕事も残業もウェルカムだったはずです。

なにより、言うほど多忙な人はいなかったはずです。
現在の過重労働の原因はOA化、機械化が進んで時間当たりの業務量が圧縮され、それによって効率という名の〆切の過密化が原因です。
長谷川秀夫氏が自分の経験を元に若者にあれこれ指図するほどの超過労働をしていたと思えないのは、バブルの頃は効率が悪く、同じ仕事でも現在と比べて非常に冗長だったからです。
24時間働けますかというCMもやっていましたが、実際に24時間働いていたような人はごくわずかな上、その業務量も現在の1/3程度だったのだから疲労度や期限のプレッシャーは非常にゆるかったはずです。
なので長谷川秀夫氏の体験では、現在の労働風景は理解ができないのです。

過労自殺が問題視されたのはバブル崩壊後で、リストラによる人員削減と、人手不足による過重労働が増加したためです。過重労働と業務に対する満足感の低下、業績不振で倒産の影がちらつき、自分の立場さえ危ういという状況の中で働くのは非常に精神力を削ったでしょう。

それでも「会社にいられるだけマシ」という考えもあったようで、社員の奴隷化が一気に進むことになりました。また、新卒として入社した氷河期世代はオフィスのヒエラルキーの不可触民として長らく据え置かれ、かつてなら係長になれたような年齢になっても長谷川秀夫氏あたりの年齢のオッサンにコキ使われつづけるという悲しい奴隷生活を送らざるを得ませんでした。

そんな状況を良しとしない賢い若者たちは新天地を求めてインターネット事業に乗り出したのですが、その帰結が楽天の英語公用語化だったり、サイバーエージェントらしく勢いだけで段取りが適当すぎるAbemaTVだったり、DeNAのガセパクリの総合商社WELQだったりと考えると、なんとも悲しいものを感じます。

要するに、そのような満足感がない、むしろ高ストレス状況で過剰労働を強いられた事実の方に目を向けるべきであり、これを労働時間だけをとらまえて語ろうとすると、長谷川秀夫氏のような赤っ恥をかくことになります。

■業績が悪い部署の「先輩」は大抵パワハラをする

今回の自殺の件、私が一番気になっているのは、亡くなった新卒女子社員が配属されたチームが、なんらかの理由でメンバーが削減され、新卒の彼女に過重な業務がのしかかった、という点です。

メンバーが削減された理由は単純に売上げがあがらなかったことでしょう。そんな中でこのチームに残っていたのは、他部署に引っ張られず、業績不振の事業でいわば撤退戦を強いられているメンバーです。あくまで推測ですが、社内的にも評価されていない、もしくは社内政治的にポジショニングが悪い人達が残されたような場所です。

戦争において撤退戦の殿(しんがり)を任されるのは戦上手と決まっていますが、ビジネスで斜陽部署に残されるのは、ポンコツか社内での立ち回りでヘタこいた人です。なんにせよ会社という組織内での立場が悪く不遇をかこつ人達です。

そんな部署に自分よりも若く、出身校のランクも高い「期待の新人」が来たらどうなるか、ということです。

しっかりと仕事を教えてない、もしくは一回言っただけで仕事を教えた気になっている先輩たちに「東大卒なのにそんなこともできないの?」と面罵されることもあっただろうし、整理も効率化もされていない、その場しのぎのメソッドが積み上がって複雑化したような仕事をおしつけられ、不要な手間と時間をかけさせられていたかもしれません。

このような斜陽部署のリーダーや先輩達は往々にして無責任なので、様々な不始末を自殺した新人女子社員に押しつけていた可能性もあります。

実際、労働が過重化してきた時に「あなたの残業時間は無駄」と言われたりしたようですが、そもそもその残業時間を緩和するような手立てを講じてない時点で、上司としては大変無能なわけです。ただでさえ人員削減されてオーバーワークとなっているのに、さらにチームメンバーを疲弊させて業績を回復できるわけがありません。
そんな赤字チームなのに深夜まで飲み会やり、その後新卒女子社員へのダメ出し大会をしていたというのだから終わっています。そこで「さっさと帰って明日に備えよう」と判断できない時点で、少なくともチームを運用して業績をあげるミッションを任されている管理職として終わってるのです。

その程度の判断もできない人間が、電通という日本屈指の大企業で管理職をやっているという事実が恐ろしいです。電通でこれなのだから、数多の日本企業でこれ以下の管理職が大量にPOPしまくっている実情が想像できます。この世にポンコツ上司の種はつきまじ、です。

 

■立場の弱い新人は、社内イジメの標的となる

自殺した新卒女子社員のツイートから見ると、、恒常的にチーム内でいわれのない誹謗を受け続けてきたということです。
彼女自身の業務能力は分かりませんが、もしできない新人がいるならメンターは積極的に面倒を見て仕事ができるようにしなくてはなりません。
フォローもなく、仕事ができない事を理由に責め立てていては、いつになっても「戦力」になりません。
少なくとも彼女の成長につながらない雑務だけを押しつけていたなら、彼女自身も成長を実感できなかったでしょうし、仕事で満足感が得られないところに理不尽な誹謗中傷を受けていたのでは、仕事のモチベーションも下がるでしょう。帰れず休めないならなおさらです。

しかし、彼女のチームメンバーは、新人で仕事ができないのが「当たり前」の彼女をサンドバッグにして喜んでいたのでしょう。ポンコツチームにありがちな話で、現状を改善することより、一人のできない社員に全てを押しつけて言葉で殴る蹴る(時には実際の物理攻撃も含め)するのはありがちな話です。

以前も話をしましたが、私が勤めていた部署でも、48歳であまり仕事ができない社員が、年下の社員にコケにされたりと本当に酷い状況でした。それに加え、部署に入っていた人事コンサルタントが彼を悪し様に怒鳴る光景が状態化しており、見ているこっちが憂鬱でした。

しかし、そのような状況にあると、その人が人事コンサルタントや上司の「標的」になってくれているおかげで、こちらに類が及ばないことにホッとしてしまったりするのです。MMOでタンクがヘイト稼いでくれるおかげでヌーカーやメレーが暴れられるのと同じような構図です。

そのような状況に陥ると周囲の同僚もゆえなく軽蔑しはじめるので、チーム内でのコミュニケーションが途絶し、ますます「被害者」の立場は強まっていくことになります。
業績が悪い部署、チームでは「誰もが罵倒される可能性がある」という緊張感とストレスで感覚がおかしくなりがちです。そのような強烈なストレスを発散するたびに、周囲に溶け込めず良好なコミュニケーションが作れていない新人や、仕事の手際が悪いとか、気が弱いとか、コミュニケーションがヘタなどの理由でチームから浮きがちな人が標的にされがちです。

それはまさに、「大人のイジメ」です。

おそらく、こんな状況で自殺してしまった娘は追い詰められていったのではないでしょうか?

 

■人間関係を良好にできない人間に管理職の資格はない

繰り返しになりますが、管理職の仕事は自分がパフォーマンスを発揮することではなく、チームのパフォーマンスを引き出し、与えられた予算や目標を達成することです。

そのために必要なのがチームの最適化です。管理職の中でも勘違いしている人が多いですが、個々人の意識の高さや業務の取り組み姿勢に期待するのは筋違いです。チームメンバーのパフォーマンスが発揮されていない場合、積極的に環境を整え、全員のパフォーマンスをいかんなく発揮できる環境を作ることが管理職の仕事です。

そもそも、メンバーのパフォーマンスを個人のやる気任せにするのは効率が良くありません。もちろん自助努力など期待しないほうが良いのです。極めてパフォーマンスが悪い人達だらけの職場を想像すれば分かりやすいのですが、意識の低い人達に怒鳴りつけても、ますますやる気を失わせるだけでパフォーマンスが改善されることはありません。

そのような場面で管理職が求められることは、メンバーの悪口を言いふらしてスケープゴートを作ることでも、他のメンバーと一緒に被害者を追い詰めることでもありません。そのような殺伐とした状況を緩和し、チームを正常な状態に持っていくのが管理職の仕事です。

しかし、管理職自身が自分の管理手法の悪さを隠すためやストレス発散のために率先してパワハラを行っているケースもあるので、まさに救いようがありません。

電通の新人女子社員自殺も、このような状況で引き起こされたのかなぁ…、自分の経験を元に思ったのです。だいぶ今更ですが。

結論を言えば、管理職としてのマインドもスキルもない人間が出世してしまう、部署やチームを任されてしまうという悲劇がパワハラやセクハラ、そしてモラルハザードを引き起こす原因になっているわけですが、大企業でも明確な出世基準がなく、社内政治や情実人事だらけだと、そのような上司に向かない人が過分な地位と権限(と給料)を与えられてしまうことが往々にしてありそうです。

なお、現在の管理職の多くは、自分のマネジメント能力が不足していると自覚しているそうです。

「管理職は大半が能力不足」、当事者の98%が認める(フォーブスジャパン)

アメリカの事例ですけど、日本の場合、自身の能力不足に気づいていない、真のポンコツ上司も多くいそうなのでさらにガッカリ感が高まります。

管理職の能力開発と昇進させる難しさについては、また項を改めて書こうと思います。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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