アウトソーシングで人を安く使って切り捨てている限り、Web業界が良くなるわけないよね

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WELQの問題はついにDeNAの創業者にして会長である南場智子女史まで謝罪会見に引きずり出す事態となりました。

南場会長が会見の場に姿を表したことで、DeNAとしては大きな事態を引き起こしているという認識があるという意思表示をした形となりましたが、少し遅かったのではないでしょうか。
そして南場会長が頭を下げているというのに、これらキュレーションメディアの運営責任者の村田マリが顔すら出さないという面白い構図にWeb界隈がざわついているわけですが、その無責任ぶりに彼女の人格的問題やビジネスの汚さも暴露されまくり、よほどヘイトを稼いでいた人なのだなと思わざるを得ません。

また、9日にリクルートも運営している4つのキュレーションサイトを非公開にすると発表しました。その他サイバーエージェントのSpotlightとなど大手企業が運営するバイラル&キュレーションサイトも次々と記事を非公開にするなど、WELQ問題に端を発したゴミメディアへの類焼は留まることを知りません。

DeNAもリクルートも、「他所もやっていること」という認識で突っ走った結果でしょうが、逆に他所で既にパクリや信頼性の薄い記事、信頼性どころか内容も薄い記事を量産しSEO上位を独占するという状況に批判が募っている中、よくキュレーションビジネスに進出したなと呆れるばかりなのですが、競業他者の荒稼ぎしている漁船に乗り遅れたくなかったという気持ちが出てしまったのでしょうね。

そういえばサイバーエージェントの藤田社長もコンプガチャ問題の時にこんなことを言ってました。

「コンプガチャが出てきてからソーシャルゲーム市場が跳ね上がった。もともと高収益だったソーシャルゲームが、“異常”が付く高収益になった。みんなやらざるを得ない(後略)」

今回も「みんなやらざるを得ない」という気分でやってしまったのでしょうね。
コンプガチャ問題から4年たちましたが、このあたりの思考はあまり変わっていなかったのでしょうね。その漁船でまるごと大海の彼方で沈没していただきたいと願うばかりです。

 

ところで、キュレーションやバイラルといったゴミメディアの品質の低さについて、クラウドソーシングで安く調達された、いわゆる「一円ライター」の問題が取りざたされています。しかし、安いのはライターばかりではないという事は覚えておかなければならないかもしれません。

この騒ぎの中でたまたま、私が以前登録していたIT系派遣大手から、メディアサイトのディレクター職の紹介がありました。
紹介元、派遣先が分からない程度に、送られてきた待遇や条件等を記載します。


職種:WEBディレクター・プランナー

就業時間:9:00~17:50/完全週休二日制

残業時間:20~45時間/月

給与:時給1,700円~1,800円
※交通費の別途支給はございません。
※スキルに応じて相談させていただきます。

作業内容:
・ランディングページやバナーの製作
・簡易的なHTML修正、画像パーツ加工
・ワイヤーフレーム作成

作業環境:HTML/CSS/Photoshop

 

必要スキル:
・Webディレクターの実務経験2年以上。Webの制作進行管理経験あり、マルチタスクに抵抗ない方

歓迎スキル:
・Webサイトの情報設計、UI設計、ワイヤーフレーム作成経験運用


作業自体はWeb関連の仕事をやっていた人からすれば、大変簡単な作業に見えます。
しかし今回の募集には、作業に必要なスキル以外に、Webディレクター経験2年以上が要求されています。

つまり、ディレクター経験2年以上あって初めて時給1700円で雇ってもらえるということです。
というか、時給の上限が1800円となっている以上、経験以外に特筆するスキルがあっても1800円以上は増えないということです。これは依頼元の企業が「それ以上の給料を払うつもりはない」ということです。

仮に1700円とすると、22日稼働で約30万円。しかも交通費支給とボーナスなしです。となると、年収360万前後、残業代入れて400万に届くかどうかというところです。

しかも、募集をかけているのは有名な会社だということ(派遣先はどこか明らかにされていません)。そんな有名企業が、未経験者ならまだしも、経験者、しかもディレクター経験者を400万以下で雇おうという魂胆がすごいですね。経験者としてのスキルやを期待しているのなら、少なくとも時給2000円からのスタートにしてほしいものです。

他の募集を見ると、ディレクターに限らずプランナーやデザイナーといった同業の他ポジションも、だいたいこのくらいの時給で募集されています。Web関連の派遣社員の「相場」としては普通なのかもしれませんが、今回の募集は特に「ディレクター経験者」をこの金額で雇おうという魂胆があまりにもひどいという話です。

この募集により、Webメディアは「安くできる」という盲信のもと、クラウドソーシングの一円ライターどころか中の人まで派遣で安く使われているという現実が垣間見えるわけで、さらには派遣社員を統括する正社員だけが高給というどうしようもない実情が想像できてしまいます。

なにも格差社会がどうこうという話ではありません。

有名企業ですら、人件費を極限まで削って安上がりな集金システムを作ろうとしている日本のWeb業界の終了感と、それらの企業がWebビジネスを「安く作って大きく儲かる」と投機的な感覚でやっているという絶望感です。

日本のWebサービス企業が世界進出できないのは当然です。これらの作業をテンポラリースタッフに担わしている以上、企業としての成長も組織力の強化もありえず、ただただ即物的、即応的な仕事のやり方にアジャストされていくからです。

結果、安くはじめられてすぐさま圧倒的成長できるインスタントなビジネスモデルを生み出せる人ほどもてはやされるという、Web業界の悪弊が生まれる土壌となるのです。

今回の問題で各社のキュレーションメディアの一部記事やメディアそのものが「非公開」となりましたが、彼らはすでにWebメディア市場を刈り尽くした後です。さらにほとぼりが冷めた後に「リニューアル」としてメディアが再開されるのは明らかで、著作権問題やSEOの悪用以前に、荒稼ぎして逃げ切ろうとする彼らの「これまで」と「これから」が本当の問題ではないかと思うのです。

Webメディアの良心と矜持を持って運営してきた既存のメディアは、彼らのSEO汚染により多大な迷惑と実利的な損害を受けました。さらには記事の剽窃、画像登用の被害まで受けていたわけで、損害賠償請求すべき話ですが、「記事の責任は投稿した記者にある」と運営側の責任を最初から取らないスタイルでいるので、もとより賠償請求するのも難しいようです。

炎上中のDeNAにサイバーエージェント、その根底に流れるモラル無きDNAとは(Yahoo!ニュース)

Webライターのヨッピーさんの記事ですが、大手バイラルメディアにコンテンツをパクられた場合、もはや誰を被告として訴えればいいのか分からない、訴える場合の手間などを実体験的に語っています。

さんざん稼いでおいて、今更非公開にしようが閉鎖しようが、これまでの稼ぎはそのまま会社の利益になっているわけで、今更テヘペロして閉鎖すれば許されるってものではありません。健全なメディアにどうこうという言いぐさも盗っ人猛々しいとしかいいようがありません。
前述記事の最後に付けられた、「バイラルはゴミじゃねぇんだよ」の名言でお馴染み、Spotlight編集長の渡辺将基氏による「回答」も「記者に対して啓蒙を行う」などと、どこか他人事というか、会社や自分に責任が及ばないように気づかいながら書いたのが透けてみえる返答です。

こんな「意識」で大丈夫なのでしょうか?

リクルートなど3社、サイトや記事を非公開(朝日新聞Digital)

サイバーエージェントは8日、登録ライターらが書いた「スポットライト」「バイエス」の記事計約10万件を非公開にした。2月末までに問題がないかを確認する。当面は編集部で書いた記事や、編集部による内容確認が済んだ記事を掲載する。また、著作権侵害の疑いがあった場合には編集部の判断で削除できるようにした。

今更編集部の確認をするとか言われたってなと思うところはありますが、Spotlightは名目上「会員が記事を投稿できる」としており、記者に自由な記事を書かせる一方、編集部はノーチェックという「ビジネスモデル」でやっていました。うまいこと考えましたね。

要するに、「これまでは編集部は介在しなかったので記事のチェックはできませんでした(だから責任はありません)」と言っているのです。そんなテヘペロ通用するかと思いますが、上記の記事であるように、法律で追求するにはコストがかかりすぎるため、外部からは世論を味方に外圧をかける以外に手立てがありません。

ヨッピーさんをはじめWebライターや既存メディアが、これらモラルに欠けた大手が運営するバイラルやキュレーションメディアに火をつけてまわっているのも、コンテンツ登用など実害を被ってながらも、彼らに対し賠償請求ができないというジレンマゆえかも知れません。

それでも、最後は彼ら自身が自浄してくれない限りどうしようもないのですが。

今回の事件によって、バイラルメディア、キュレーションメディアの編集責任が厳しく問われることになるでしょう。

しかし、記事の責任を一円ライターたちに放り投げて実質なんの責任もとっていない彼らの事です。今度は時給1700円の「派遣ディレクター」に編集責任を背負わせて逃げるようになるのでしょうね。救いのない話です。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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