ライター単価の下落が「バイト感覚でライターができる」と勘違いさせた

フリーライターやフリー記者、フリー編集者というフリーな人達が口を揃えて言うのは、「昔は記事一本で○万もらえたのに、今は○千円しかもらえない。仕事の価値が1/10になった」ということです。

専門的な知識と情報網と取材力、それらの情報をまとめる文章力があっても、一文字5~10円程度で買いたたかれている現状。高単価の活字媒体が廃れ、Webメディアが充実しはじめ、なおかつSEOなどの関係で内容の質より量が求めれるに至り、ライターひとりごとの記事報酬も地滑りの如く下落していったわけです。

それでも経済専門誌など高度な専門性と編集部が信頼性を担保しなければならない記事は、いい加減な事を書かれては困るので単価が高い方です。しかし競争媒体が多いサブカル系はライターの人口も多いこともあり、記事当たりの単価が低く設定されていることが多いようです。

以下、実際にあった友人の話です。ふわっと媒体を書いておきますが、あまり邪推しないでください(笑)
なお、ライターの友人はみな業界歴10~20年程度の経験者~ベテラン、もしくはその方面での有名人です。

 

1.某雑誌系サブカルWebメディア

原稿料:5,000円(交通費等諸経費込み)
作業:インタビュー(2時間程度)、ライティング(2,000文字程度)
作業日数/〆切:14日

文字当たりの報酬は2.5円だが、インタビューやライティングに必要な時間を考えると時給1,000円でバイトしていたほうがマシ。このメディアはバイラル・キュレーションメディアができる前から運営されていたが、これらのメディアが生まれる以前の相場としては格安。一円ライターが爆誕したので高く見えるだけで、諸々の経費も込みと考えると酷い報酬額と分かる。

 

2.某Web系サブカルメディア

原稿料:3,000円(諸経費込み)
作業:編集部が要求する事項への取材、ライティング(3,000文字程度)
作業日数/〆切:7日

有名なサービスのオウンドメディア。原稿料は一文字あたり一円。ただし記事内のリンクからサービス内の商品が買われると別途紹介料がもらえる。立ち上がったばかりの頃は記事を集めるために、この単価/作業量で毎週記事を納品するように依頼がきたという。今の記事あたりの報酬はもっと安い可能性がある。

 

3.某大手広告代理店系キュレーションメディア

原稿料:3,000円
作業:企業活動の体験談や経験に基づくライティング(1,000文字程度)
作業日数/〆切:3日

本来は取材すべき相手に、報酬を払うことで記事を書いてもらうという方式。つまり書いている方は記者ではなく企業の中の人(広報や営業)。少なくともメディアを名乗る以上、取材くらいちゃんとやりましょうよ、と言いたいところだけど、一円ライターを駆使するキュレーション時代のメディアにしては良心的。
しかし、企業側から記事第二弾の出稿を打診したところ「広告と見なすので金を払え」とエクストリームな返答。寄稿依頼は高度な広告営業ではないかという疑いが個人的にはぬぐえない。

 

WELQで大炎上で素人による「一円ライター」が話題になっていますが、サブカル系Webメディアの依頼額は、数年前からこんな相場でした。

個人ホームページからブログ、掲示板からSNSと、ライター業を生業としていない人達も文章を書く機会が多くなった結果、ライティングという仕事が誰でもできると思われるようになったのは間違いありません。事実、ブロガーからプロのライターにクラスチェンジした人達もいるので、プロとアマの境目が曖昧になったのは事実でしょう。
また、低単価の仕事に対し、本業のライターたちが低単価なりの仕事をしてしまった結果、ライターという職種の価値まで下げてしまったという側面もあります。

あらゆる商品がそうであるように、ライティングという仕事も需要と供給によって価格が増減しています。これらプロのライター(の一部)が低品質な仕事をしてしまった結果、ライターの尊厳や価値は著しく下がり、お小遣い稼ぎ目当ての在宅の主婦でもできる(と思われる)仕事にすら思われるようになってしまいました。

そしてクラウドソーシングが登場。ライティングのデフレが発生し、「記事」と呼ぶのも憚られる、SEO向きの単語が凝り固まった文章のような何かを量産しており、もはやメディアと呼べないアフィリエイトサイトが多数、しかも一部上場企業の手によって作られていたという事実は、零細ながらWebメディアを運営している側からすれば暗澹たるなにかを感じずにはいられません。

バイラルやキュレーションメディアでは、もはや「ライター」すらいらないのです。

もとより「素人による投稿(を装っていた)」キュレーションやバイラルメディアにプロが介在する余地なんてないのですが。

さて、WELQ同様にDeNAが運営していたヘルスケア系メディア「MERY」もついに着火、内部体制が暴露されるという状況にあいなりました。

「MERY」記事量産、経験者が語る現場 「ノルマ90分に1本、遅いと指導も」(ハフィストンポスト)

「90分に記事1本書くことがノルマ。達成できないと社員の指導対象になる」そうで、指導対象とは「要するに目をつけられる存在になる」ことだそうです。
元インターン生がやりとりしていたメールの一部には具体的な数字が並びます。
「1記事にかかった時間の平均(重要!)○○分」
「○○分は少し遅いかもしれません(・ω・)次回は頑張りましょう」
出退勤は個々人が自由に決められるが、月40時間は勤務しなければならない決まりだったとか。
「インターンといえば聞こえはいいけど、要するにバイト。時給は1千円くらいだった」と話します。

「週に1回グループの集会があり、記事1本を何分で書けたかを評価されます。90分に1本書くのがノルマで、遅い子はタイピングソフト『寿司打』を使って、速くタイピングできるように練習してくるように注意されました。記事の内容よりも本数重視でしたね」

これ、労働集約の仕事の管理方法と一緒です。
倉庫等の労働集約の仕事では、時間当たりの目標処理数を作業員の頭数で割って一人当たりの作業量を算出します。特に最近の能率化された倉庫や工場では、作業員個々人のIDが割り振られた様々なデバイスによって、作業員それぞれの仕事量が記録、計測されています。中には目標作業速度より遅いと端末から「お叱り」がくるようなものもあります。

MERYのインターン生も、管理者自身が日々のノルマを背負っており、その生産計画の中で記事を書かせていたのだろうと想像されます。

つまりMERYのコンテンツミルは、大量生産の工場と同じメソッドで運営されていたということです。まだ管理者という「人間」が叱る分、労働集約の作業員にくらべて人間扱いされているようなカンジはしますけどね。

なんにせよ「メディア」が「記事」を作る体制ではない、ということです。

執筆するインターンには書き方を示した「マニュアル」が渡されたそうです。
・記事全体の説明文には内容を示すキーワードを2回以上ダブらせる、画像を多用し記事にキーワードを10個以上入れる……
・食べ物なら「食べログ」、化粧なら「@cosme(アットコスメ)」……など参考リスト一覧が網羅。
素人目にも検索エンジンに引っかかりやすくするSEOを意識した内容だったそうです。
(中略)
インスタグラムなどから画像を見つけ、引用という一文を添えてバシバシ貼り付けたそうです。

具体的に「参考サイト」が明記されていたマニュアルがあったというだけで胸熱です。
そして画像はInstagramから見つけて引用という、数年前からクソバイラル手法として唾棄されていたやり方が明文化されていたいたというだけでワクワクしますね。

DeNAは、MERYでは他の9サイトで発覚したような「他サイトからの文言の転用を推奨していると捉えられかねないマニュアル」は存在しなかったとの姿勢を崩していません。
7日に都内で開かれたDeNAの記者会見でも守安功社長は「MERYを運営しているペロリ社の中川綾太郎社長にも確認をし、転用を推奨するマニュアルはないと判断している」と説明。小林賢治・経営企画本部長も「実際にマニュアルを調べたが、転用を推奨する文言は確認できていない」と述べました。

からのマニュアル発覚という流れが一番面白いのですが。大丈夫ですか、上記のお三方。
まあ、証拠もなくタレコミだけでは、上記記事を掲載したハフィストンポストはじめ、他メディアのガセの可能性も否定できないですし、DeNAも調査中ということで明言を避けているのでマニュアルの存在もあくまで推測にすぎません。
ただ事実だった場合、もはやテヘペロで許される一線は越えていることは認識し、その上で発言をしてほしいなとは思います。

 

もはやライティングは時給1000円のJDが、時間当たりの生産性を計られて行うような仕事にまで堕落してしまいました。
著作権を守り、専門知識を備え、取材や裏取りなど執筆におけるシーケンスをしっかり踏まえながらも一文字一円で文章をひさいでいる(それなりに)マジメなライター諸氏の苦境は続くわけです。

一方でパクリ盗用やりたい放題なDeNAや他のメディア運営会社の責任者は、仮にこの問題で何かあっても「次のポスト」があります。少なくとも労働集約の非正規社員にまで身を落とすことはありえず、年収はさがってもそこそこの暮らしができる程度には踏みとどまれるわけで、ライターたちの待遇と比べるとなんと世の中は不平等なのかと思わずにはいられません。

 

最初の話に戻りますが、本当の「ライティング」というものは取材力、情報源、裏取りをした上で、情報を整理し、最終的に文章として仕上げるものです。ここに、例えばWELQ問題など、メディアが記事をプロンプトリーに掲載したい場合などは、1日~2日でこれらのシーケンスをこなさなければなりません。情報や事情、知識が蓄積されたプロでなければできない仕事です。

取材というのはネットの情報を集めることではありません。
情報源とは有名サイトの記事のことではありません。
裏取りというのはWikipediaを調べることではありません。
情報の整理とは集めてきた文章をつなぎ合わせることではありません。

私もいろいろなライターさんとおつきあいさせていただいていますが、彼らは誰も知らない情報をどこからか持ってきたり、どこまで繋がっているのか分からない情報網を持っていたり、また莫大な専門知識を備えていたりするものです。

「てらどらいぶ」の当面の目標は、そのようなプロのライターに発注できるようになることです。
もともとWebサイトの編集をやっていた私達は、ライターではありませんので、編集として運営することに集中し、「本物」のライターが書いた質の高い記事を皆さんに提供できるようになりたいと思っています。

私は自分の友人達を、ライターとしても職業人としても尊敬しています。

しかし世の中には「友人だから」とタダでプロのライターに記事を書かせるようなメディアもあります。どことは言いませんけど。

このようなメディアに比べれば、一文字ン銭でもお金を払うだけバイラルやキュレーションよりはマシかもしれません。フリーライターのフリーは無料って意味じゃないと、友達相手でもちゃんと言いましょうね。

また「宣伝になるから」という理由でタダで記事を書いてもらおうとするメディアもあります。ひどい例になると、大手メディアがスタートしたばかりのメディア、もしくはまだまだ小規模なメディアから「宣伝になるから」という理由で記事を掲載「してやる」と上から目線で言ってくる例もあるようです。小さいメディアにもプライドがあるわけで、こういう失礼な行為ひとつひとつが全部跳ね返ってきて今の騒ぎになっているという自覚は持ってほしいものです。

今回の騒動でいぶり出された人間の他にも、Webメディア界隈では人を安く(むしろタダで)使って儲けてやろうと考えるダメ人間がたくさんいるのです。そして彼らは今回の騒動もどこ吹く風で、そんなダメな運営を続けていくのでしょうね。

プロが書いている分、記事の質がいいのが問題なのですよね、この手の「タダで書かせているメディア」は。
人脈を換金するようなマネは慎んでいただきたいと憤っている蟹でございました。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。