【電通過重労働自殺】SNSにブラック労働を記録することが、自分の身を守ることになるかもしれない


個人的には過労自殺は殺人罪を適用すべきだと思ってますが、仕事によって鬱になった場合の因果を証明するのが難しいのと同じく、人間は会社のみで生きるにあらず、様々なプライベートの要因を含めて考えると立証が難しいという現実があります。

今回の過労自殺の件は、被害者(あえてこう書きます)がTwitterにログを残していたことと、東大卒の新卒女子社員が自殺というセンセーショナルなファクターがあり、Webを中心に電通バッシングが始まりました。そこに大手マスコミが相乗りして報道が過熱。ついに電通の会長以下経営幹部が謝罪会見を行う事態にまで発展。本日(28日)になって、電通と直属の上司が書類送検され、石井直社長が引責辞任を発表しました。
かつては報道さえコントロールしていたとウワサされていた電通が、インターネット発の突き上げによって謝罪に追い込まれ、ついには書類送検までされたという事実は、マスメディアの裏ボス的存在だった電通の凋落を実感させてくれました。

今回の事件はめざといネットユーザーが彼女のTwitterアカウントを見つけ、Webメディアがその発言を掘り返したことによって闇に葬られずに済んだわけで、被害者がSNSもやっていなかったらどうなっていたのか。遺族が訴訟したとしても電通と契約している労務に強い弁護士が出張って解決を見なかった可能性もあります。
彼女が自殺した直後には恋愛関連の悩みという誤情報も流布されていましたし、Twitterの投稿がなければ「その線」で片付けられていたかもしれません。こわいこわい。

 

これまでもストーカー犯罪などでSNSの発言が取り上げられ真相究明に役立てられた例がありましたが、今回の件であの電通さえねじ伏せたという事例ができたため、今後は労務関連でもTwitter等の発言は重視されるかもしれません。

さらにブラック労働に対するエビデンスとしてSNSが有効であると証明されたわけで、何か危険を感じた時、パワハラやセクハラで困った時は、SNSに投稿しておくと何かと証拠になって「有事」の際に有利に事を派込める可能性が生まれました。

特にTwitterはこのようなダメな職場、ポンコツ上司への怨嗟の声が多く、これまでも気晴らしツールとして活用されてきました。
今回の件によりブラック労働に対するエビデンスとしてSNSが有効であると証明されたことで、ますます愚痴の放流が進むかと思われます。気晴らしと証拠ログとして活用されるのであれば、遠慮なく職場の悪口を書き込むことができますね。
そのプレッシャーで企業も職場環境や福利厚生に積極的になるかもしれませんし、いいことづくめではないでしょうか。

 

 

今回の件の教訓としては「仕事が辛くて過重労働になってきたら、恥も体面も関係なしに会社から逃げた方がいい」ことです。
私も今の病気に至った時は、残業時間月平均130時間、帰宅は毎日終電、トラブルがあった場合は休日を返上という過重労働の上、転属したばかりということもあって職場に馴染めず、人間関係でも疎外されたという経験があります。
なので自殺してしまった高橋まつりさんが置かれた状況は痛いほどよく分かります。私は自殺せずに済みましたが、一歩間違えれば高橋まつりさんのようになっていたかもしれません。

このような状況が起きるのは、仕事と人材お互いあ「ミスマッチ」であるためです。特に配属先次第では、自分の志向や能力に合っていない、パフォーマンスを出せない事もありますし、自殺した子や私のように配属されたチームの人たちと様々な理由でディスコミュニケーションからパワハラめいた事を日常茶飯事に受け続けることさえあります。

それでも無理くり仕事をこなしていくのが意識の高い社会人像と信じられた時期がありましたが、結局「ローパフォーマー」なってしまうだけ。これは人事や経営側の怠慢であって、そもそもミスマッチなところに長く社員を置いておくメリットって何もないのです。パフォーマンスが低い社員に給料を払うのは、どこまでいっても人件費の無駄にほかなりません。

会社を辞めさせるという選択肢もあるでしょうが、見込みがあると思って登用したなら、当該社員が活躍できる部署に異動させたり、パフォーマンスが発揮できない理由…たとえば今回の事件でいうなら「人間関係」などを把握して事前策を打つべきだったように思います。

いちいち一般社員の人間関係まで見ていられない、という意見は半分くらいは賛同しますが、結果として電通の会長以下責任者はカメラの前で生き恥をさらし、現社長は辞任することになってしまいました。自殺してしまった新卒社員の労働環境に誰か気づいて異動でもさせれば、こんなことにはならなかったのです。

なお、本事件は労働時間の長さばかりにフォーカスされますが、実際的には「社内いじめ」の問題であり、労働時間以上に彼女をとりまく人間関係や環境が自殺に追いやったものだと思っています。ただ社内いじめだと立件が難しいので、長時間労働というアプローチで労働局も「落としどころ」をつけたのだろうと思います。

本事件で糾弾されるべきは、女の子を追い詰めて自殺させるような職場環境を作り上げた直属の上司とチームメンバーです。
業務上の問題だから、管理職が世間に対して頭を下げるのは当然かもしれませんが、業務遂行するにあたって新卒の女子社員を深夜まで詰めるような「仕事」が必要なはずがありません。上司やチームメンバーが彼女に悪意をぶつけたことは本来の仕事とはまったく関係ありません。その連中の性根が腐ってたというだけの話です。

たとえば社員が業務時間内に刑事事件を起こしたなら、事件に対する責任は当然その社員が負うことになります。慣例的に「世間を騒がせた」と会社がお詫びすることはあるでしょうが、罰を受けるのはその社員です。

今回の事件も同様だと考えます。本来の業務に必要がない「いじめ」によって自殺に追い込んだのなら、これは立派な殺人です。業務上過失致死とか、そんな立派な題目はいりません。繰り返しますが、実際の業務と関係のないところで追い詰めたのですから、これは会社や仕事とは関係がない「犯罪」です。会社が謝罪して済ませることではなく、加担した人間が懲罰されるべき問題です。

実際、取材を受けた社員を処分するというマネをしているわけです。組織を守るために情報統制するのはよいとしても、あまりにもやり方が稚拙すぎはしないでしょうか?

電通過労自殺 改革、社内に不満 取材受けた社員処分(毎日新聞)

本社が家宅捜索を受けた11月7日に路上でテレビのインタビューを受けて「自浄能力のない会社だと思う」と答えた社員が後日、社内処分を受けた。別の社員は「見せしめだ。社内は重苦しい雰囲気で、上層部は迷走している」と批判した。

電通はこれまでもその広告供給力と営業力によりマスメディアに多大な影響を与えてきたと言われてきました。同時に広告主としてマスコミ各社に多額の出資をおこなっていた大企業も追及を逃れる立場にあったわけですが、インターネットの時代となって、彼らのコントロール下にない小規模なWebメディアが多数勃興。マスメディアほど大きな影響力はないものの、少なくともこれら大企業を追い込む程度の力を持つようになりました。

各Webメディアはどれほど大きくても日テレや朝日新聞のような、それこそ「マス」な影響力は持ち得ないのですが、Webメディアのマネタイズの事情もあって、同じネタを各メディアが一斉に取り上げるという特性があります。どこかが取り上げるとどこかも取り上げるわけで、これが大きな連鎖反応を起こしてマスメディアと比肩する…とまではいかないものの、多くの消費者を動かして糾弾のうねりを作り上げます。

いわば鎌倉末期に登場した「悪党」とみたいなもので、幕府や守護や荘園領主の支配を逃れた地頭層が権力に逆らって倒幕のきっかけを作ったように、それぞれの存在自体は小さいものの、お互いの利益を追求したら既存権力の破壊という同じ方向を向いており、知らず知らずのうちに共闘しているような状況を作っていたようなところがとても似ています。

特にバイラルという手法が流行ってから、SNSからの「引用」が正当化されるようになりました。
その「引用」に対する見解に議論の余地が残っていると思いますが、今回のようなケースだと、バズ狙いでバイラルメディアが積極的にTweetを拾い上げて拡散したことが、電通という巨人を追い詰める一因になったのは間違いありません。

こう考えていくと、バイラルを含むWebメディアは、現代社会の「悪党」と言えるかもしれません(実際、WELQのような本当の悪党も混ざっているので油断ならないところはありますが)。

権威による改善なんて、単なる対処療法で実際には何の意味もありません。石井直社長の辞任会見の言葉を見れば、それがはっきりわかります。

<電通社長辞任>「ご遺族と社会のみなさまに謝罪」会見要旨(毎日新聞)

当社は労働環境の改善に向け、過去にさまざまな対応策を講じてきました。残念ながら、その取り組みの途上で社員が亡くなるという、悲しい事態が発生しました。新入社員の過重労働を阻止できなかったことは、ざんきの念に堪えません。

社員が過重労働で亡くなったこと、決してあってはならないことだと思います。ざんきに堪えないと思います。我々もさまざまな対策をしてまいりました。にもかかわらず過重労働の改善に至っていません。

言い訳がましいというのはあえて言わないでおくとして、その「取り組み」が午後10時になったら全棟消灯するとか、そんなレベルのことなんだから解決するわけありません。むしろ電通の経営陣が、そんなやり方で改善できると考えていたなら、お気楽なのか世間の人をバカだと思っているかのどちらかでしょう。
というか、権威による改善のもっとも悪しき例を見せられたようで、ため息が出ます。

なぜ江戸幕府が三大改革を行ってもなお衰退が止められなかったのか。システムの老朽化はもはや内部の人間、組織の既得権益に浸っている人間には無理であると悟ってほしいですね。さもなければWebのような新しい力に食われるだけです。そうやって、歴史上の社会体制は被支配層に破壊されてきたわけですからね。

 

今回の事件を通して長時間労働が見直される動きにもなっていますが、そもそも長時間働いている原因は大不況時に定着してしまった人件費を悪とみなす風潮(=社員を長期的に雇用する気がない会社の増大)のせいです。
人員編成に冗長性を確保できずに効率だけを追求しても、長時間労働がなくなるわけではありません。一方で「効率」という言葉が実態以上の力を持ってしまい、効率さえあげれば少人数でも仕事がまわる、残業は効率をあげられない人間がやるのだからサービス残業はパフォーマンスの低さに対する罰というような風潮さえありました。

今から考えればとんでもない矛盾なのですが、社会人としての意識の高さやら、座れる席そのものが少ない状態が長らく続いたこともあり、こんなおかしな考えに日本中が毒されていたのでしょうね。正気に戻ってなによりです。

一時期は派遣業者に都合がいい世の中になりつつありましたが、最近は好況が続いているおかげで、福利厚生の改善など社員を定着させる動きも広まりつつあります。
ブラック企業という言葉が生まれてからここまで年月がかかりましたが、日本経済再興のためにも、このまま長時間労働と名ばかりの「効率」は消え去っていただきたいものです。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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