【ライター残酷物語】ベテランライターが頼まれたクラウドソーシング記事のリライト依頼が悲しすぎる

以前書いた「ライター単価の下落が「バイト感覚でライターができる」と勘違いさせた」が好評だったので、改めて「ライター残酷物語」という、ネット時代となって生き残るのも厳しくなってきた、ライターたちの聞くも悲しい話を不定期連載することになりました。

インターネットメディアやソーシャルゲームの流行、隆盛によってテキストの需要は高まりましたが、なぜかライター特需は生まれず、仕事はひたすらクラウドソーシングに流れていくありさま。一方で高単価であった雑誌の仕事は激減し、ライター諸氏の懐は年々寂しくなっているかと思います。

ブロガー気分でライターになろうとしている無謀な人たちにおかれましては、本連載が考え直すきっかけになれば幸いです。現役ライターさんは、ライターあるあるとしてお楽しみください。

なお、私自身はライターではないので、本連載は基本的にライターの知人友人からの「タレコミ」を元に構成しております。
記事には情報提供者保護を目的に、若干の「フェイク」が混ざっています。実際にあった話ですが、あらかじめご理解ください。


今回お話を伺ったのは、単著も発刊している実力派ライターFさん。プロ意識が高く、取材に基づいた良質な記事を書くことで知られる方です。手書き入稿の時代からのベテランでもあり、とても美しい文字を書く方でもあります。

しかし主戦場であった雑誌記事の仕事は減るばかり。Fさんも、このような単価の安いネットメディアの仕事を請けるようになりました。

Fさんは実績がある方なので、いわゆる一円ライターのように文字単価の低い仕事は請けません。それなりの報酬を要求しますし、その金額が払えない仕事は基本的に断っています。

最近のネットメディアの成長戦略は、まず質を問わずに記事を大量にかき集め、SEO対策やSNSのバズを狙います。WELQやその他の大手が運営していた志の低いメディアがまさにこれです。
一定のPVを稼ぎ、マネタイズの道筋が見えるようになると、メディアの価値を高めるために高コストなオリジナル記事を掲載します。SNS引用ばかりでバズ狙いのくだらないコピペ記事を掲載しまくっていたメディアが、ある日社会派の記事を出したり、取材記事を載せたりしだすのは、つまりそういうことです。

つまり、Fさんに依頼をするメディアは、それなりの成長線をたどっているメディアということになります。
しかし、それらのメディアも大半はクラウドソーシングの記事で水増ししていることがほとんど。
プロである自分が書いた記事と、素人が小遣い稼ぎで記事が並ぶ現象が、雑誌出身のFさんにとっては不可解な現象に思えるそうです。
もっとも、前述のようにライターを取り巻く状況は厳しく、ベテランのFさんですら選り好みもできないのも事実。報酬さえもらえれば、それなりの幅をもって「プロ」として対応せざるを得ないそうです。

そんなFさんの元に、取引のあるネットメディアから原稿のリライト依頼が来たそうです。

送られてきた原稿は文字数にして3000文字。
なかなかの文量ですが、そのほとんど…いや、ほぼすべてが、他サイトのコピペでした。

つまり、ただの一片も使えるところがない原稿だった…ということです。

文法的な修正や内容の監修ならまだしも、誰かの著作物をまるまるコピペしたものを「使えるように」書き直すのは、手間の問題以前にFさんのライターとしての矜持が許しません。

やるなら完全に書き直すしかないのですが、リライト報酬として提示された金額はたった1500円。

さすがに3000文字まるまる書き直して1500円では割があいません。むしろリライトとはいえ、1500円なんてプロに支払う報酬額ではありません。

発注したネットメディア側からしたら、「コピペ文章の書き直しなんてすぐできるでしょ?」という感覚だったのかもしれません。むしろ「1500円も出すのだから」とすら思っていたかも。一本あたり1000円~2000円という、クラウドソーシングの低水準な発注額に慣らされているので、ちょっと頭がおかしくなっているのかもしれません。

問題は金額ばかりではありません。

編集側がリライトを依頼したのは、その原稿が「コピペだらけで使い物にならない」と判断したからです。
同時に、リライトすれば掲載できると判断していた…ということにもなります。
明らかに著作権侵害であろうそんなコピペを、リライトして使おうと考えている時点で、その会社のコンプライアンスはどうなっているのかと疑わしくなります。

当然Fさんはお断りしたそうです。

しかし、世の中にはやむにやまれず、このような不心得な発注を受けざるを得ないライターもいるのでしょう。

いるからこそ、リライトの依頼があるわけですし。

ネットメディア界隈は横のつながりも太いため、数人が安い報酬で請けてしまうと、あっという間に業界内での報酬相場が固定されてしまいます。

今回紹介したリライト依頼も、Fさんの経歴に関係なく1500円という「相場」をもとに発注されている可能性が高いです。
もしかしたら元記事の発注も1500円だったかもしれません。文字当たり0.5円なので、WELQ並みの水準といえます。

そのメディアにしたら普段よりも2倍のコストがかかっているということになるでしょうが、ライター側からしたら知ったことではないですからね。むしろ、その程度の値段で見切られてしまうライター諸氏の気の毒な経済状況も垣間見えて、にじむ涙で前が見えません。

そもそも、依頼料が1文字/1円に満たないのに、品質の高い原稿を期待すること事態が間違っています。お金払えばなんでもやってくれるという思い違いは、社会人として持ってはいけない感覚です。
だからといって、コピペの原稿を納品する感覚も相当おかしいのですが。

結論として、メディア運営側もクラウドソーシング側も高品質な記事を作ろうと考えていないのだから、テキストの需要が増えてもプロライターの仕事が増えるわけがないのです。

むしろ安価に記事を調達できるようになったせいで、テキストの価値も切り下げられ、本業ライターにとってはホントに災難としか言いようがありませんね。

 

次回の「ライター残酷物語」は、ネタが入り次第の掲載となります。なんとなく、すぐに入ってきそうな気配があるのですが…(涙)。


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。