【旅行記】カシオペア「弾丸」紀行(その3)

前回までの記事はこちら。

カシオペアが入場。停車時間は16:30~16:38と、高額チケットのわりに乗車時間が短くなんとなく慌ただしいカンジ。出発時間までに列車に乗ればいいのですが、車内で一泊二日、二度とない旅なのでスーツケースの他にカメラバッグなどを所持する客も多く、積み込みだけでも大変です。

客室を大きく取るためか、列車内を縦断する廊下も思ったよりせまく、大荷物を持ったままだとお互いすれ違えないくらい。そのため、対向するお客さん、もしくは乗務員がいると、客室に入るための階段に待避しないといけません。

なんとなく十津川警部が歩いてきそうな雰囲気です。

これだけ廊下が狭いのだから、さぞ客室は広いんだろうと思ったわけですが…

広い!

広い!

写真では実感できないと思いますが、水回りを入れて三畳半くらいのサイズくらいです。

 

天井高はだいたい180センチ。団長でも、ピッと背筋を伸ばさないかぎり天井に頭がつきません。

ソファーの幅はだいたい100cm。すごいだらけた格好で座っても空間に余裕があります。ソファーはベッドも兼ねており、座面を引き出すとシングルベッドになります。

シートの下にはスリッパも備えられています。

シートの奥に見えるのは、客室に入るための階段です。

室内の設備はソファーベッドが2つとトイレと洗面台。BSも入るテレビとラジオ。あとは折りたたみ式のテーブルです。

個室寝台車に乗るのは初めてなのですが、カシオペアの設備が上等なのは察しがつきます。個室にトイレがあるため、よほどの事がなければ部屋から一歩も出ずに上野までいけそうです。

なお、食事も食堂車でのディナーとモーニングを予約していなければ、お弁当や飲み物もやってくるので本格的に引きこれます。

室内のトイレは真空式方式。少量の水で便器内を洗った後、ヒュー!シュポッ!と汚物を吸い込む、最近の列車トイレでおなじみの方式です。

便器の上にある出っ張りは、引き出し式の洗面ボウル。もちろん蛇口から水も出るので、歯磨きもできますし、コンセントもあるので電気ひげ剃りも使えます。もっとも、我々はスマホの充電に使っていましたが…。

寝具。枕とシーツ、そして毛布のセット。さらにガウンとバスタオルが入っています。

定刻になりゆるゆると札幌駅を出発。上野到着は翌11:52。約19時間の列車の旅が始まりました。

さすがに気動車の牽引だけに、初速が遅い…。しかし、モーターなどが気動車に集まっている分、客室はとても静か。防音もしっかりしているのか、両隣や上階(我々の客室は一階)の音も聞こえてきません。
サスペンションは空気バネのため、電車特有のガタゴト感はほぼありません。ふわりふわりとした乗り心地なので、うっかりすると眠くなりそう。

Snowは「今日一日絶対に寝ません!」と息巻いていますが、私は五時起きだったため、上野到着まで起きていられる自信がありません。

発車直後にスピーカーにiPhoneをあてるsnow。「車掌アナウンスを録音するのでしゃべらないでください!」と真剣な面持ちで言われました。札幌の夜景を撮りたかったのですが、シャッター音もNGとのことでおとなしくしていることに。

車内アナウンスを録音するのは、乗り鉄の神聖なる儀式らしいです。

出発してしばらくしても、お目当てのアナウンスは始まりません。ずっとスピーカー付近で仁王立ちしているsnowを横目に、流れていく車窓を眺めます。

出発して5分後、ようやくアナウンスがはじまりました。が、「これ車掌じゃない!」とsnow。アナウンスをしたのは今回の旅を企画した「びゅう」のアテンダントらしく、snowのお目当ての車掌による案内ではなかったようです。

こうして、彼の5分に及ぶ仁王立ちは、半分くらい無駄になりました。

当然ながら、この後も諸々のアナウンスがあったわけですが、「あ!今放送あったのに!」「今のチャイム録ってない!」と、ことごとく録り逃すことに。録音に命をかけているわりには常在戦場の心構えがなっていないsnowです。

アナウンスと旅程のスケジュールを見ると、上野までの停車駅と時間はこのようになっています。

到着出発
札幌16:38
苫小牧17:3817:39
東室蘭18:2318:25
五稜郭21:2622:11
木古内22:5423:36
青函トンネル23:460:30
青森1:151:55
盛岡4:224:32
一ノ関5:365:38
仙台6:516:57
福島8:058:07
郡山8:448:46
宇都宮10:1410:16
大宮11:2611:28
上野11:52

北海道と本州の間で日付が変わるという粋なプログラムになっています。五稜郭と青森の停車時間が長いのは、気動車を交換するためです。

なお、上記の各駅には停車はするものの、上野に着くまで降車はできません。

室内の明かりがあるせいか、車窓はなにも見えません。ただただ夕闇が広がるのみです。時折雪がぱらつきますが、視界が遮られるほど吹雪くことはありません。なんというか、本州人が考える北海道感がありません。

ただ、到着する駅のプラットホームには分厚く雪が積もっており、まだ早い時間だというのに電車待ちの乗客の姿もありません。
なんとなく新海誠監督の秒速5センチメートルの岩舟駅を思い出しますが、栃木県南部はあんなに雪は積もりません(笑)。

18時頃にお弁当がやってきました。真っ赤な包み紙のこぢんまりとしたお弁当です。

お弁当は三重になっており、一段目が煮物やじゃがいものキッシュなどの野菜系、二段目が蟹の天ぷらや笹かま、ホタテなどの動物系、三段目がイクラと蟹、そして錦糸卵の三色丼となっています。全て北海道の特産品で作られたカシオペアスペシャル弁当です。
ずんだ餅が入っているのは、途中で伊達市
左上のザンギはsnowが買ってきてくれた差し入れです。

重なっていたときには想像もできなかったボリュームです。最近実家で規則正しく過食を押さえた生活が続いたため、むしろ食べきれるか心配になってきました。

どれもこれも美味しかったのですが、特に気に入ったのはじゃがいものキッシュと蟹の天ぷら、そして三色丼です。三色丼はお弁当とは思えないほどイクラも蟹もたっぷりでした。

食事を終えて一休みしていると、snowがパブタイムが始まるからラウンジカーを見てから食堂車へ行ってみとうと言い出しました。

ラウンジカーは前後についているパノラマ展望車で、カシオペアのパーソナリティを形成する車両です。食堂車は説明するまでもありませんね。

食堂車でのディナーとモーニングは、予約したお客様のみ楽しめるサービス。価格は一人6000円とお高いのですが、予約がすぐに埋まってしまうそうです。
そんなディナータイムの後、一時間半ほど食堂車が解放され、予約していないお客さんでも食事が楽しめるそうです。

食事といってもお弁当を食べたばかりですし、おまけにパブタイムは一時間後。「この時間から並んでないと入れない」と言うのですが、せっかくのカシオペアでラーメン屋のように並ぶのはイヤだなぁ…と思いつつ、一応つきあってみることに。

ラウンジカーの方はシングルソファーとロングソファーが組み合わされたレイアウト。夜なのでほとんどなにも見えませんが、カップルやカメラをもてあそぶ鉄道ファンなどがまばらに座っています。

私もゆっくり座っていようと思っていましたは、1時間後にパブタイムが始まるということで、到着してすぐに食堂車へ。

食堂車は三号車にあるため、最後尾のラウンジカーから遠い遠い。電車の中をこんなに歩くのも久しぶりだなぁと思いつつ、食堂車に到着すると先客が一人。

その方の口から衝撃的な一言。

「パブタイムは2時間後ですよ」

snowが時間を間違えていたようです。
しかし上野発でもパブタイム2時間前には解放待ちの列ができていたようで、むしろこの時間に来たのはラッキーだったようです。実際、我々の後ろにどんどん列ができていきました。彼らはこれから二時間も廊下で待つ気のようです。

お弁当でお腹いっぱいでしたし、五時起きでしたし、なにより貴重な乗車時間のうち二時間も行列に並ぶのはもったいないと思ったので、snowを残して私は列から離脱。

パブタイムを諦めた私は、車内販売でデザートを購入。アイスとカットリンゴです。
まちむら農場のアイスクリームはミルクアイス。ラクトアイスに慣れた口だと、牛乳の味わいにびっくりするかもしれません。カットリンゴの方は青森産のサンふじ。甘すぎずにちょうどいい味です。どちらもうまい。

デザートを食べて眠くなったので、ベッドメイクすることに。まずはシートを手前に引き出します。

そしてシーツをかけて枕を置けば完成。うちかけは毛布のみですが、キャビンには暖房がかかっているので雪降る中でもガウンと毛布だけで大丈夫。

明かりを消すと窓の向こうの夜景がよく見えるようになりました。うーん、最高!
なお、窓際に置いてある白い封筒の中には、父と母が写った写真が入っています。父の遺影に使った写真です。

父は生前、リタイアしたら母と一緒にカシオペアに乗りたいと常々言ってました。自由に歩ける身体ではなかったこともあり、生きている間にカシオペアに乗ることはできませんでした。なので、写真を代わりに載せた次第です。

函館半島も南に下がってくると降雪量も増えており、運行スケジュールに遅れが目立つようになりました。

五稜郭駅では青函トンネルを通るため、新幹線の電圧でも走れる機関車に交代します。本来は函館まで行っていたそうですが、今回は上野まで降車できないため、五稜郭駅でスイッチバック、つまり進行方向が逆になります。
西武池袋線の飯能駅のように、すぐに逆進できる電車と違い、機関車を前後で付け替えないとスイッチバックできません。その機関車の接続待ちで1時間ほど停車します。

そうこうしている間に、二時間に及ぶ待ち時間に耐えたパブタイムに選ばれし男、snowが戻ってきました。

雰囲気のよい食堂車でピザとコーヒーセットを食べてきましたそうですが、あの弁当+ザンギを食べた後に、ピザとケーキって…。

一睡もしない宣言をしていましたが、大丈夫なのかな…。

結局、青函トンネルに到達するまえに日付が変わってしまいました。

木古内を過ぎると断続的に短いトンネルが続くようになりますが、本命の青函トンネルになかなか入りません。とんでもないじらしプレイです。

「これ青函トンネルですよ!」

snowが言った直後にトンネルを出るというおもしろい展開が続いた後、ようやく青函トンネルらしい長大なトンネルに突入しました。

しかし、snowからの反応がなくなってしまいました。

まさかと思って見てみると…ソファーにもたれかかってsnowは大爆睡していました。

やっぱりね。あれだけ食べればね。

この後青森に着くまで、snowは眠り続けることになります。

つづく

(文/団長)


団長

「てらどらいぶ」管理人。 ゲーム開発のディレクター、動画配信サイト管理人のプロデューサーなどを歴任。 心のゲームは「ウィザードリィ」と「ザナドゥ」。ドラクエとFFならドラクエ派。

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