役所に集まる生活が苦しいお年寄りたち

役所にいくと、お年寄りの生活が苦しくなっているのだなぁと実感する場面にたびたび出くわします。

国保や年金課に行けば、保険料や支給額などでモメているお年寄りが延々と同じ苦情をループしまくっている場面をわりと良く見かけます。

苦しくなる生活の中すがる思いで相談したのに、こちらの理解ばかり求めてくる役場の対応にイライラするのは分かりますが、社会保障が制度として決まっている以上、自身の現状をいくら訴えたところで「公平に」対応されるだけであり、時代劇のような人情裁きを期待したところで無理なわけです。

政策が行き詰まる中で、現状の保険制度や年金制度が理不尽なものになりつつあります。あれだけ年金を払ったのに、とか、高い保険料を払っていたのにと、ご老人の怒りが収まらないのも分かります。

このようなお年寄りが増えたのは、年金収入だけではとても生活できないという現状があるからでしょう。
現役世代から見れば恵まれているように見える老人の生活ですが、裕福なのは一部の老人だけであり、大半の年金頼りのお年寄りの生活は大変です。

一方で行政は年金支給年齢の引き上げや支給額の減額をもくろんでいます。
すでに破綻しかけている現在の社会保障制度を無理矢理維持しようとなると、どこかにしわを寄せる必要があるからです。

特に最後の人口ボリューム層となる団塊ジュニア世代は狙い撃ちにされそうな気配です。

年金支給「70歳から」に? ターゲットは団塊ジュニア世代(デイリー新潮)

「厚労省は、実は70歳に引き上げようとしています。彼らが少なくとも5年ごとに年金財政の現況と見通しを公表する『財政検証』のうち、14年6月のレポートでは8つのケースが紹介されており、うち5つは65歳から69歳までの労働力率が66・7%に設定されていました。これは10人に7人が70歳まで働かないと厚生年金の所得代替率、つまり現役世代の手取り収入の何%を受け取れるかという数字が50%を保てない、との検証結果を意味しています。2030年度以降も、厚労省は3年に1歳ずつ引き上げて70歳に近づけようとしており、このペースでいくと、2045年度には支給開始年齢が完全に70歳となります」

去年父が亡くなったため、母は自分の年金と寡婦年金で生活することになりました。
自分の年金と言ってもパートタイマーだったので受給額もたかがしれており、寡婦年金も父の受け取り額の45%しか受け取れません。数年前までは60%程度貰えたそうですが、この比率も年々下がっているようです。

生活者が一人減ったのだから、半分だけでも生活できる…などと簡単な話ではありません。インフラの使用料金などはイニシャルの額が決まっているわけで、ガソリン代など生活者の頭数関係なしにかかるコストは節約するにも限度があります。

母はまだまだ元気なので、「仕事にいこうかな」と言ってますが、70歳となる母を雇ってくれる企業などそうあるわけではありません。シルバー人材センターに登録すると言う手もありますが、「お手伝い」中心のシルバー人材センターの手間賃は年金受給者のお小遣い程度のものであって、とても生活ができるほどの給料が貰えるわけではありません。

お年寄りたちもラクして老後の生活を送りたいと思っているわけではなく、健康である限りは働いて収入を得たいと考える人たちも多いはずです。しかし、だいたいの求人は70歳を定年としており、年齢不問とは言え70歳以上のお年寄りを雇ってくれる会社などなく、雇用される側のお年寄りにしても、いくら元気とは言っても現役時代のようには働けません。

役場の社会保障系の窓口にお年寄りが殺到する背景は、このように収入の道が途絶しているためです。

それでも現状のお年寄りたちはまだ恵まれているほうで、年金未納者が増大する団塊ジュニア以降の世代となると、それこそ生活するための資金がないという状況が増えることでしょう。もしくは生活保護世帯が急増するかもしれません。
そんな中で年金支給を受けられる納付期間が10年に短縮されましたが、これは現役世代の救済というより、今の年金予算を少しでも捻出するための決定にすぎません。

こういう未来が少なくとも90年代中盤には見えていたはずなのに、抜本的な社会保障改革を怠り、不況を脱する政策がないがゆえに、税収が減っているにも関わらず重福祉政策に舵を切ってしまったという失敗してしまったわけで、それが20年に及んで影を落とし続けているという残念な状況が続いています。

国民に痛みを負わせているのに、政府も行政も誰も責任を取らずに問題を放置している…と言いたいところですが、社会保障政策の見直しを訴えても当選できない有権者の意識にこそ問題であって、シルバーポピュリズム以前に代替案もなく社会保障費や医療費の軽減を要求したってどうしようもないのです。

「人工透析患者は殺せ」がバカの発言にしか聞こえないのと同じで、問題の落としどころを短絡的に求めたところで何も解決しないのです。

そろそろ過疎地に介護やホスピスも含めて安心して集団移住ができるエリアを作るとか(これは地方在住の現役世代の雇用も生み出せるので大変有用と考えています)、都市部に70歳以上でも働ける仕事を行政が用意するなどの議論を進めるべきではないでしょうか。

年々健康度(Wizardry的にはVIT)の上限が下がり、長年納めてきた年金も頼れない以上、老後を生き残るには事業を興すか副収入を確保するかのいずれかしか選択肢はないわけですが、様々な規制緩和の結果、個人事業が生き残れるのは都市部に限られ、近郊以遠の土地では大資本以外に生き残れない状況が生まれつつあります。
その都市部も生活コストが非常に高いため、年金暮らしのお年寄りが暮らしていくのはかえって大変という面もあります。

年金に頼らない生き方を選ぶのは、個々人ではなく政府です。

老人の収入が途絶しない方向でソフト・ランディングを目指さないと、本格的に年金や社会保障が破綻した時に受け皿すらないという状況に陥ります。それはもやはシルバーポピュリズムという言葉さえ死滅する民主主義の墓場であって、国民の政府への信頼は揺らぎ、人々の不安をあおって極論と断言を繰り返すわりに、支持の基盤となる問題を最後まで解決しないダメ人間が政治の場に現れる残念な世界です。

そして、その被害を真正面から受けるのは、今のお年寄りではなく、10~20年後に老境に達するハイミドルな現役世代なのです。

(文/赤蟹)

 


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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