【ポンこれ】長時間残業が解決できないマネジメントの失策

正社員として初めて勤務した会社で「他の社員は残っているのに定時に帰るとは何事だ!」と怒られたことがある蟹です。こんばんは。もちろんその会社は残業代くれませんでした。

さて、政府と経団連、連合の三者の間で協議していた残業時間の上限について、連合側の主張する「100時間未満」を採用することで落としどころがつくようです。

残業上限「月100時間未満」 首相が「裁定」(朝日新聞デジタル)

政府が導入をめざす「残業時間の上限規制」をめぐり、安倍晋三首相は13日、経団連の榊原定征(さだゆき)会長、連合の神津里季生(りきお)会長と首相官邸で会談し、焦点だった「きわめて忙しい1カ月」の上限を「100時間未満」とするよう要請した。経団連は「100時間」、連合は「100時間未満」を主張して譲らずに対立が続いていたが、首相が連合の案に軍配を上げた形。経団連は首相の「裁定」を受け入れ、上限規制は決着する見通しだ。

連合の神津里氏が100時間「未満」と主張したのは、「100時間までなら働かせて良い」と勘違いする経営者を牽制する意味を込めたためだそうです。確かに経団連側の主張であった「100時間」だと、「月100時間までOK」と曲解する会社が後を絶たなかったことでしょう。

残業100時間といえば、「100時間くらいで」と言ってのけた某氏のことが思い出されます。

【ニュースの小ネタ】元モーレツ社員と現役世代の「残業100時間」をめぐる世代間ギャップ

月の残業100時間というと、22日出勤としても約5時間。18時終了としたら毎日23時頃まで働かないといけなくなります。
24時間戦えちゃうリゲインな企業戦士も世の中多くいるかと存じますが、普通に考えたら毎日12時間以上働いている時点でまずいわけですよ。
日本人の平均通勤時間は往復約2時間。帰宅してからたった9時間しかない。帰宅後の生活や出勤の準備を入れれば、睡眠時間は7時間もとれない計算になります。

こう書くとすごく余裕そうですね。長谷川秀夫氏ではないですが、これくらいで弱音を吐くなと言いたくなる人もいそうです。睡眠時間なんて5時間もあれば十分という人もいるでしょう。

でも、これはあくまで単月の話です。この状態が数ヶ月に渡って続くと、徐々に心身が衰弱していきます。

よく言われる「過労死ライン」の残業80時間も単月の残業時間ではありません。残業80時間を超える状態が数ヶ月に渡って続くと、健康被害が出始めると統計で算出されているため「過労死ライン」として設定されているものです。

繁忙期の一ヶ月くらいなら100時間残業しても平気だという人も多いでしょうが、繁忙期の定義なんていくらでも設定できるわけですよ。プロジェクトが煮詰まって半年以上「繁忙期」が続く可能性もあります。これだけの期間にわたって長時間労働が続けばいずれフィジカルかメンタルかに限らず不調をきたすことになるでしょう。

鬱の症状がこれだけ広まった現在でも、メンタルの病気は「メンタル(意思)が弱いからかかる」と思っている人がいます。
しかし鬱は、過酷な生活のために脳内物質の分泌が正常に行われなくなることによって引き起こされる「病気」です。意識の高さや心の強さなんて関係ありません。
メンタルの不調は睡眠不足等、身体的な疲労や不全からもたらされる場合がほとんどです。
しかも、面倒なことにメンタルがタフな人ほど自覚症状が認識できず、結果として引き返せないところまで悪化してから病院に駆け込むようになります。もちろんドクターストップ待ったなしです。

世の中には「趣味は仕事」と言ってのける大変意識が高い人がいます。
仕事は忙しいくらいが丁度良いと、プライベートも仕事につぎ込んでいるような人ですが、そんなバリバリの仕事人間ほど、業務がヒマになった途端に体調を崩したりメンタルヘルスを発症します。
一時期「燃え尽き症候群」なんて言われていましたが、これも明らかにメンタルの不調です。

仕事が楽しかったり忙しかったりすると、アドレナリンがドバドバ出て疲労を感じないスーパーアーマー状態になりますが、当然その間も心身のダメージは蓄積されていきます。
手空きになるなどして仕事に対する快感が途切れてしまうと、これまでの貯まっていた疲労が一気に噴き出して動けなくなってしまうのです。これがいわゆる「燃え尽き症候群」です。

燃え尽きたくなければ、ハムスターの回し車のごとく延々と仕事し続けるしかありません。でも、この手のハムスターは自分が楽しいと思える仕事だけやっている事も多く、多忙を理由につまらない雑事を周囲に押しつけてくる人も少なくありません。
そりゃ、楽しい事だけやってるんだから100時間残業したって平気ですよね(笑)。その分、周囲が仕事を拾っていることは自覚してほしいところです。

クオリティが高い仕事を完遂するためには、休息も必要ですし仕事以外の活動でリフレッシュすることも大切です。特にインプットを高めないと質の良いアウトプットは難しくなります。私生活でのインプットを業務に生かせることもあるのだから、プライベートの充実は結果的に業務のクオリティにつながります。仕事一辺倒でイノベーションなんて起きるわけがないのです。

その点を考慮しないで「たかだか100時間の残業で文句を言うな」とか「残業100時間以上できないという人はうちでは雇いたくない」とか「ワークライフバランスと言ってたらうちの仕事はつとまらない」とドヤる経営者や管理職が出てくるわけですよ。
こんな考えで知らず知らずのうちに社員を酷使してしまう経営者・管理職がいるから、今回のような決まり事を国が作るハメになったと、少しは考えていただきたいものです。

むしろ残業なしでも100時間残業したのと同様の業績が叩き出せるようにするのがマネジメント側の仕事ではないのでしょうか。

「仕事がまわっていない」という現実から目を背け、マネジメントの欠陥を長時間残業という形で従業員側に押しつけてしまっているのが実際のところでしょう。

余談ですが、元勤め先では長時間残業を減らすため、残業希望時には上司に申請を行い、許可を求めなくてはならないというルールができました(本来はどの会社でもやらないといけないルールです)。
しかし日々の業務として終業後にしかできない仕事があったため、かえって手間だけ増えたという展開になりました。言うまでもなく、残業時間も減りませんでした。

この策を考えた人間(上司)は、実際の残業が発生している問題を把握せず、ただ残業時間を減らすという目的のみでルールを決めてしまったのです。実にポンコツな話ですね。
そもそもの問題認識が間違っているのだから解決するわけがありません。

こんなマネジメントばかりじゃ、国が100時間縛りしたって残業が減るわけないと思うんですけどね。どうでしょうか?

(文/赤蟹)

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赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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