さようなら、関東書店さん

19日は父のはじめてのお彼岸でした。

父のお墓は加須市というところに作りました。うどんと鯉のぼりで有名な町です。実家のある旧鷲宮町(現久喜市)の隣町で、墓地も実家からクルマで10分。老いた母親がいずれクルマに乗れなくなった時でも、タクシーでさほど金銭的にも負担にならない場所に作りました。

お墓参りのあとは、加須に新しくできた和CUOREというピザ屋へ。

ここはかつて「おたる寿し」という回転寿司屋がありました。できた当初は100円寿司ということでお客さんも多かったのですが、経営会社の経営破綻により閉店。
現在の回転寿司市場は、仕入れ力が高く経営戦略にも優れた大資本企業がフルコンタクトで殴り合う苛烈な市場になっています。その競争におたる寿しは敗れ去ってしまったのですね。

さて、和CUOREというおしゃれなピザ屋は実はエッチなDVD屋の挟まれる形で立っています。

東側には群馬に本拠を置く北関東DVD店の雄、利根書店。そして北西には、我らが関東書店。こんな男の淫謀渦巻くリッチに加須市に不似合いなシャレオツなピザ屋があるのは不思議なカンジもしますが、言い換えれば北関東のカオスさここに極まれり、とも言えます。

美味しいピザを食べたあと、駐車場の向こうにはいつものように関東書店が。人気がないけど、まだ午前中だからやっていないのかな…と思いつつ近づいてみると…

お店の中が、からっぽでした。

残されていたのは、入口に貼られたh.m.pのステッカーだけ。それが唯一、この建物がかつてどんな店であったかを物語っていました。

 

まだ埼玉にいたころ、関東書店さんには本当にお世話になりました。当時はまだ動画配信サービスもなく、ビデオと言えばレンタルが常識でした。

しかし近所のレンタル屋では、団長が大好きなSMのビデオがありませんでした。他人の性行為を見ても興奮しない団長は大変ガッカリしていたのですが、関東書店で始めて「セルビデオ」というものを知り、アロマ企画を知り、そしてシネマジックとアートビデオ以外の会社でもSMビデオを作っていたことを知りました。

関東書店は、団長のベースを作ってくれたお店だと言えます。

 

上京した後はラムタラ派に転じ(笑)、だいぶご無沙汰していたのですが、Twitterをきっかけにして、今度は仕事でのおつきあいがはじまりました。仕事でのつきあいと言っても、店員さんと情報交換(という世間話)をしているだけだったのですが。

さて、関東書店さんは、業界内でも「アツい店員さんがいる」という事で有名なお店でした。「熱量で言えば北関東トップクラス」と断言するメーカー営業さんもいたくらいです。そんな話が出るたび、「実は地元にいたころ…」と話すのが定番となっていました。自分が通っていたお店がそう褒められるのは、悪い気がしませんよね。

そんなわけで実家に戻るたびに関東書店さんに顔を出し、あれこれ情報交換させてもらうような関係が続いていました。あの頃は本当に楽しかったです。

 

関東書店さんと言えば、忘れられないのが「劇場版テレクラキャノンボール2013上映会」です。

カンパニー松尾監督、バクシーシ山下監督、柳井一監督、そして嵐山みちる監督とボールガールの新山かえでちゃん。さらに団長と桃太郎映像の女子広報さやかさんという楽しい顔合わせで行われました。

先日の淑女会の参加賞としてお配りしたGOSSIP BOYSのチェキは、この時に嵐山監督から貰ったものです。
お店が用意してくれた、かねつき堂のフライ(お隣の行田市の名物。かねつき堂はその中でも有名なお店)、美味しかったなぁ。

なんて、楽しい思い出がたくさんあったお店だったのですが、隣に北関東一とも言われる営業力を持つ利根書店が出来てしまいました。やがて仲良くしていた店員さんたちも去り、私もそうそう足を運ばなくなってしまったのですが…。

こういう言い方はどうかと思いますが、道を挟んだ隣に利根書店ができた以上、もうダメかなと思いました。利根書店側も関東書店に隣り合わせで出店することで、ライバルをつぶすもくろみがあったかと思います。なにしろ加須で大きなDVD店といえば、関東書店しかありませんでしたから。そこさえ潰してしまえば加須近辺のDVD需要は独占できるようになります。

なかなかエグいことをやるな…と思いますが、これは卑怯なやり方でも何でもありません。これが戦略です。

DVD市場はすでにユーザー数が減じはじめています。高年齢化も進み、市場がシュリンクしていく中で、DVD販売は限られた市場、限られたユーザーを取り合うポーランド分割のような様相を呈し始めています。その限定環境内でも戦略的に出店を続ける利根書店の力量がうかがい知れます。

「関東書店さん、ヤバいかもしれませんね…」

おととしのクリスマスに、桃太郎映像のTさんと飲んでいた時、そんな話になりました。Tさんが利根書店の社長ともお会いになった際、その経営者としてのポテンシャルに圧倒されたと言ってました。特に驚かされたのは、社長が初対面のはずのTさんの事を知っていたこと。これは各店舗からの情報収集が極めて潤滑に行われていることを意味します。言い換えれば、各店舗を効率良く統括し、結果を分析し、売上に変える戦略的、もしくは戦術的思考を備えているということです。

AV業界はノリの良い方が多く、各店舗も趣味の延長のような感じでダラダラと売っているようなお店が多いです。そんな中でラムタラグループは、高い営業力と個性的な店長たちに支えられ、特にユーザーの多い秋葉原を中心に南関東で勢力を張ったことにより大型化したチェーンです。もちろんそこに戦略がないわけではないですが、良い意味で業界ナイズされた会社というイメージがあります。

一方で利根書店はクールです。確かに利根書店の店舗数が激増していることは聞いていました。しかしTさんの話を聞いた時に、勝つために何をするのか。どうすれば良いのかを徹底的に考え抜く、既存のAV業界にはない思考の人が動かしているのだな、というイメージがわきました。

そんな利根書店に、アツい思いだけで勝てるのか。いや、残念ながら無理だろう。

団長とTさんはため息をつきました。

それに先んじること数ヶ月前。

仲良くしてくれた店員さんが、お店を去ることになりました。たまたま団長が行った時が最終出勤日でした。お店に飾っておいた私物のねんどろいど「柏崎星奈」を選別に貰いました。

このフィギュアは箱にしまったまま、トイズハートのもること、誕生日に吉村卓さんからいただいたメッセージカード、そしてキャノンボール上映会でもらったHMJMミーティングの割引券と一緒に飾ってあります。
(あと一つ、円一輝監督のプロマイドがあったのですが、地震の際にタンス裏に落ちて取り出せなくなりました…)

団長の楽しかった思い出です。

勝つモノと負けるモノが生まれてしまうのは人の世のならい。情熱や同情だけではどうにもならない事なんてたくさんあります。それでも…。

そういえば今日はお彼岸でした。あの日の思い出を胸に、団長はかつての関東書店の駐車場を後にしました。

(文/団長)

 

 

 


団長

「てらどらいぶ」管理人。 ゲーム開発のディレクター、動画配信サイト管理人のプロデューサーなどを歴任。 心のゲームは「ウィザードリィ」と「ザナドゥ」。ドラクエとFFならドラクエ派。

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