国立科学博物館の「大英自然史博物館」に行ってきました。

こんにちは。国立科学博物館「友の会」会員の蟹です。

3/18から始まっている「大英自然史博物館」展。さっそく行ってきました。

大英自然史博物館は、1881年に大英博物館から自然科学史関連の所蔵品をもって独立した博物館です。大英博物館というと各地の遺物遺跡を所蔵・展示しているイメージがありますが、それは本家大英博物館です。自然史博物館はその名の通り標本や自然科学館関連の文献など所蔵しています。簡単に言えば、生態標本や鉱物標本、化石や宝石などを取り扱っている博物館です。

いつもは空いている平日に観覧しているのですが、今回は友達と一緒だったので土曜日に行くことに。
しかしまだ開催二週間目だったので、案の定入館待ちの列が。来客多数で入場制限がかかっていました。始祖鳥大人気ですね。恐竜大好きキッズもいっぱいです。

展示場に入ると、まずはイントロダクションスペース。大英自然史博物館はこんな場所だよ、というわかりやすい(と思われる)展示品が並べられています。

これまた壁に沿ってグリッドロック。入場規制している意味あるのか、というレベルの混み具合。
案内の方が頻繁に「列にならずにお進みください」と言ってますが、ショーケースの前でカメラを構えて微動だにしないおっちゃんなんかもいたりして、展示を見るってレベルじゃありません。

案内の人も列にならなくていいって言ってるし、お言葉に甘えてかいつまんで見ていこうということに。

それにしても展示されている標本がキリンの頭とやタマカイという硬骨魚類最大種の剥製、イカや肉食恐竜のかぎ爪の化石や呪われたアメジストなど、最序盤からあまりにも濃すぎるラインナップ。

極めつけが「集団交尾中に窒息死した三葉虫の化石」。SAN値をごりごり削られそうになりますが、なんとか正気を失わずに無事イントロダクションゾーンを脱出。

交尾といっても三葉虫はカブトガニ同様に体外受精なので、メスが産んだ卵に雄が精子をかけることで受精します。この化石はそのような三葉虫の生殖行動がが分かる貴重な化石…らしいです。
なお、三葉虫は海底の土砂崩れに巻き込まれてそのまま化石になるケースが多く、この化石も交尾中に土砂に埋まったと推測されます。なんと気の毒な。

本展示に入ると、先ほどの行列がウソのように空いています。行列もありません。みんなフリーダムに見ています。

どうやら日本人特有の行列根性が混雑を助長していたようです。

本展示は年代ごと(収蔵時期・寄贈時期ごと?)に分かれており、大英自然史博物館の設立・創設から

最初は大英博物館の礎となったハンス・スローンのコレクションから。
上流階級専門の医師であり、コレクターかつ研究者であったハンス・スローンが集めた膨大なコレクションが、国に遺贈されたことをきっかけに大英博物館は設立されます。
なお、ハンス・スローンの後に紹介されるコレクター・寄贈者・研究者も、基本的には経済的に裕福な身分や職業がほとんどです。当然と言えば当然なのですが。
18世紀ごろの「教育」「自然史研究」は富裕層の特権(贅沢)だったのだなと改めて感じた次第。

大英自然史博物館の屋根に載せられていたテラコッタ製のライオン。大英自然史博物館の建築デザイン(ロマネスク様式)を象徴するものだそうです。なお、現在はテラコッタよりも頑丈な素材でできたレプリカが屋根に載っているそうです。

このテラコッタ像の向かいにはネコ科つながりでネコのミイラが展示されていました。布でぐるぐる巻きにされたネコのミイラは、バステトに捧げられたものと推測されているそうです。ミイラはミイラでもネコのミイラということで、女子たちに人気でした。

標本ばかりではなく、貴重な書籍の展示もありました。

1469年に出版された、ヨーロッパの印刷物としては最古の部類に入るプリニウスの「博物誌」とカール・リンネの「植物の種」。ショーケースの前で「ファンタジー映画で古くてデカい本を取り出すジジィ」のマネをしていたら、隣のお姉さんたちにバカウケでした。何やってるんでしょうね、私。

この後はモアの全身骨格やイグアノドンの化石などが並びます。

続いてはみんな大好きメアリー・アニング姉さん。

世界で始めて魚竜(イクチオサウルス)を発見したことで化石ハンターとしての道を歩みはじめた、古生物学でも重要な役割を果たした「神の手」を持つ女性です(もちろんねつ造ではありません)。私が尊敬している女性の一人です。

メアリー姉さんが見つけたイクチオサウルスの全身骨格。彼女はほかにも翼竜(ディモルフォドン)、首長竜(プレシオサウルス)と、キッズ向けの恐竜図鑑には必ず名前が載っている恐竜の化石を発見しました。
彼女自身は専任の学者ではなく、生計をたてるために化石の発掘を続けていました。メアリー・アニングと同様に稼業として化石を発掘する業者は現在でも存在し、国立科学博物館のミュージアムショップで売られている化石なども、彼らによって発掘されたものです。化石そのものは珍しくないですからね。

 

次はダーウィンとビーグル号のブロックです。

言うまでもなく人気の展示エリアだったため、写真が撮れません(撮れても知らない誰かが映り込んでる)。
ダーウィンのペットだった若いガラパゴスゾウガメの剥製や化石など興味深い展示品もあったのですが。

で、問題なく撮れたのがこちら。

「種の起源」の手稿です。生物は神の関与(創造)なしに必要に応じて進化してきたという、いわゆる「進化論」を提示したことで有名な書籍です。…が、手稿は達筆すぎて読めませんでした。
でも、ここから進化論が始まったんだと思うと感慨深いモノがあります。むしろ「種の起源」発刊後150年を経た現在でもIDをはじめとした創造論が元気なほうがビックリしますが。

ダーウィンの次はウォレス線(分布境界線)の発見で有名なアルフレッド・ウォレスのコーナー。

また雰囲気のいい本が出てきましたが、ウォレスと一緒にアマゾンを探検したヘンリー・ベイツの日誌です。
当時はカメラがまだまだ実用的ではないため、学者には絵の才能も必要とされていました。

なお、ウォレスのコーナーにはウォレス線付近、すなわちインドネシア付近の動物の剥製(オランウータンやオウム)もあったのですが、例によってケースの映り込みによって掲載を断念。

で、本展のメインコンテンツである始祖鳥の化石です。

隣には現在の科学で始祖鳥の研究(特に脳機能)の研究が進んでいること、いまだに鳥なのか恐竜なのか結論が出ていないことなどが書かれたパネルがあります。羽毛が生えたり、実は鳥になっただけで絶滅していないなどの説が生まれたりと、恐竜関連の論説はいまだに活発に議論され、定説もたびたび覆っています。
そんな中で「最古の鳥」とされた始祖鳥の立場は恐ろしく不安定なものになりつつあります。
始祖鳥に風切り羽があったことは確定しているのですが、翼ではなく胴体に生えていたため、「飛ぶために進化した」のか「断熱のためにはやした羽根が飛行に利用されるようになった」のか結論がでていないようです。

 

始祖鳥の後は科学調査船チャレンジャー号やロバート・スコットの南極探検のコーナーです。
この2コーナーも大変混雑していて、良い写真が撮れませんでした。
チャレンジャー号は海洋探査船らしく海洋生物や海底堆積物の標本、スコットの方はコウテイペンギンのヒナの剥製や南極大陸で発見された化石などが展示してありました。

その後はロスチャイルドとトリング分館の鳥類剥製と昆虫標本の展示です。ロスチャイルド家の財力にモノを言わせた膨大なコレクションのうち、なぜかヒクイドリやキーウィと飛べない鳥だけ展示されていました。

次は日本から大英自然史博物館に渡った所蔵品のコーナー。絶滅してしまったニホンアザラシやタカアシガニの標本がありました。中でもかっこいいのがこちら。

愛媛で算出された輝安鉱。あまり聞かない名前ですがアンチモンというレアメタルの一種。RPGのエフェクトみたいな鉱石です。

次に昆虫標本のコーナーがあり、コガシラクワガタやプラチナコガネといったカッコイイ甲虫の標本があったのですが、小さかったり光の関係でうまく撮れませんでした。こんなのばっかりですね;

最期に絶滅してしまった動物のコーナー。

サーベルタイガーです。
サーベルタイガーって英名だと思っていましたが、英語だと「Sabre-toothed cat」です。虎ではありません。猫でした。

ロンドン塔で発見されたバーバリーライオンの頭骨。
600年以上前にロンドン塔で飼育されていたもので、1937年に掘の中から発掘されたそう。DNA鑑定の結果、すでに野生では絶滅した(と思われている)バーバリーライオンと判明。なお、バーバリーライオンが絶滅したのは娯楽(ハンティング)や動物園用として乱獲された結果です。

この他、絶滅動物として最も有名なドードーの模型、現存しているドードーの脚の骨、オオウミガラス、リョコウバトと、多くの動物を絶滅に導いた人間の宿業を見せつけられる展示が続きます。
この展示の最後は大きな虎の剥製でした。虎も密漁や環境の変化により現在進行形で絶滅に向かっている動物です。

次は「地面の中の宝物」、貴金属や希少な鉱物のコーナーです。

マントルの捕獲石。マントル岩石は噴火に伴って地上に出てきます。一見するとただの石ですが、かんらん石が主要鉱物となっています。地殻の下にはかんらん石を主成分としたマントルがあると考えられていますが、この石はその説を証明するものと言えます。

 

世界で一番大きいダイアモンド、コ・イ・ヌール ダイヤモンド(の複製)。
ロンドン万博で展示された時には、大きいだけで輝きが弱いダメなダイヤと思われ人々を失望されたためカットしなおされた結果、重量の2/5を失ったそうです。それでも十分大きいのですが…。

 

ピンクの緑柱石、モルガナイト。こっちも世界最大です。実物はもっと綺麗なピンクだったのですが、オートで撮影したらこんなくすんだ色に…。

他にもアレキサンドライトの原石や金鉱など貴金属系の展示が続きます。

イヌイットナイフ。骨製の柄に隕鉄の刃をつけたナイフです。
鉄鉱床が地表付近にない(もしくは採石できない)地域では、隕石(隕鉄)を鉄器の材料に使います。このナイフもグリーンランドのケープヨーク隕石の鉄を利用して作られたものです。
隕鉄製のアイテムはマンガやゲームでもよく登場しますが、単なる鉄なので特殊な能力があるわけはありません。

最後は人類の明るい未来へのヒントが隠されている…かもしれない所蔵品。

火星の隕石。この隕石から粘土鉱物が検出されたことにより、火星にはかつて水があったことが証明されました(粘土は水がないと作られないため)。水があったということは、生物が存在していた可能性もあるということです。

その後ピルトダウン人、ネアンデルタール人のゲノムと旧人の展示が並びます。
ピルトダウン人は欧州各地でネアンデルタール人やクロマニヨン人が発掘される中、自国領内で化石人類が発見されなかった「自然科学大国」イギリスの焦燥と希望的観測が産んだ偽の化石人類です。

日本でも葛生原人や秩父原人といった謬説があったのでイギリスを笑えないのですが、大英自然史博物館のすごいところは、ピルトダウン人の骨を過去のイギリス人、イギリス自然研究史の教訓としているところです。

 

そして極めつけにアヤシイ展示品がこれ。「シリアのダチョウの卵」。
これはイギリスの探検家、チャールズ・ダウティがアラビアのロレンスに贈ったとされるダチョウの卵ですが、その出典元が偽造が多い著者によるものであったため、その真贋が問われていました。
しかし最近になって、ダウティがロレンスにダチョウの卵を贈った事を示唆する証拠が出てきたため、確かに卵を贈ったのは事実らしいけど、この卵がそれなのかは分からない、という謎に満ちた珍品です。

本展の面白いところは、大英自然史博物館の様々な顔が知れたところです。
その展示品の数々は自然や動物、そして地球という星を知るための貴重な標本です。本展は自然史大国イギリスの歴史と栄光を知るに足る興味深い特別展でした。

その一方で、集団交尾中に窒息死した三葉虫の化石とか、正体不明のシリアのダチョウの卵など、バカバカしいもの(失礼)も大マジメに展示してあるところが、大英自然史博物館の懐の深さを感じさせます。
いやいや、一見無意味に思えるものでも収蔵する意味はあるんですよ。なにが将来の役に立つのか分からないのですから。
博物館の所蔵品は単なるコレクションではありません。特に大英博物館や国立博物館クラスになると、現役で研究対象とされている標本も多数収蔵しているわけです。なので、どんなものでも(予算が許す限り)収蔵する、というスタンスは正しいのです。


地球上のあらゆるものが発見され、世界中の情報が得られる現在となっては、そう珍しくない所蔵品も展示されています。しかし大英博物館が設立された当初は、そんなアイテム一つ手に入れるにも絶大なコストがかかり、それこそ裕福な医者や銀行家でもないと手に入れられない時代でした。
彼らがこれらのアイテムを、知的好奇心や収集癖を満たすために私財はたいて買い集めたことが、イギリスの自然史研究が発展するきっかけになりました。
その後もイギリスは国の威信をかけて研究をおしすすめ、、長らく自然科学研究の先頭を走り続けました。国をあげて膨大な投資を行ったことで、莫大な研究成果を得られたのです。

科学研究と発達にはやっぱりお金が必要だと、身も蓋もない事を考えながら、特設展示場を後にしました。日本も(資金面で)頑張ってほしいものです。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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