【ポンコレ】ショップ店員用アプリと、UI設計のプライオリティと

寒い日が続いたため冬物を着続けていたが、桜が咲きはじめるとさすがに暑いと思うことも多くなり、今更ながら春物を買ってこようと思い立った。季節に先んじて買うこともなく、安い服でも長く着続ける方なので(そして服のローテーションが短い!)、必要にならないと服を買わない性格もたたって今更の買い物となった。

シャツやジャケットなどはすぐに気に入ったものを見つけられたのだが、パンツが見つからない。
長身なこともあるが、脚が長いため既製品だと丈が足りないのだ。そこに「お値段はこれくらい」「色は白がいい」「スキニータイプがいい」と条件をつけていくと、それこそほしいパンツが「ない」状況になる。

店員に相談してもレングスの条件をクリアできるものがなく、あっても非常にお高いものばかり。以前なら金に糸目をつけず(たまの買い物だし)1万でも2万でも出していたが、いまは病気療養の身。経済力も不安定なのでそうそう贅沢もできない。今回の買い物での「価格」は、諸条件の中でもっともプライオリティが高いのである。

うーん、困った。

最後に駆け込んだのが、近所のUNIQLOだった。

ぐるりと店内を一通り回ってみて、希望に近い商品を見つけた。完全に合致しているわけではないが、マストの条件である「価格」が満たされている。ただ、棚に並べられた商品では股下が全然足りない。
同商品で別の色のものには希望のレングスに近い商品があるので、もしかしたら在庫があるかもしれない。

店員に聞いてみたところ、現在店に在庫はないが、ラインナップにはあるので近隣の店舗などから取り寄せることができるとのこと。
しかも取り寄せ=購入にはならない、ということなのでで、お願いしてみた。

 

■アプリと悪銭苦闘する年配の店員

ここまでひたすら「脚が長い自慢」をしてしまったが、本題はここからである。

声をかけた年配の女性店員が、店から支給されている端末(iPhone)のアプリを操作している。非常にたどたどしい。しかもボタンの反応も悪いようで、アプリ相手に悪戦苦闘している様が見てとれた。

取り寄せの際に、私の名前や連絡先を入力しないといけないという。この店員に任せていたらいつ入力が終わるか分からない。私の端末でUNIQLOアプリを入れると表示されたバーコードで読み込めるというので、その場でUNIQLOアプリをダウンロード、さっさと個人情報の入力、そして登録。バーコードを表示して店員に読み込んでもらった。

…が、その後の操作もうまく行ってないらしい。「あれ?あれ?すいません、少々お待ちください」と何度もお詫びを言う店員。こっちは急いでないので、そんなに謝ることないのに。待たせてしまっているという気の引け目から焦るのはよく分かるが、それよりもゆっくり正確な操作をしてほしい。などと考えながら、悪いとおもいつつ店員の端末をのぞき見してしまった。

あー、うん。悪いのは店員さんじゃないわ。

画面の遷移が遅い。操作に対するレスポンスが遅い。レスポンスが遅いので、ちゃんと入力できたのか不安になった店員が何度もそのボタンを押すしてしまう。するとボタンの先行入力のせいか想定しないページに飛んでいってしまう。戻るボタンを押しても同じ現象が起きるので、また私のアプリからバーコードを読む以前のところまで戻ってしまう。これの繰り返しだった。
端末の調子が悪いせいもあるかもしれないが、それ以前の問題だと思うところもいくつか見られた。

UI面で言えば、とりあえず各ボタンの配置が近い。そしてボタンサイズも大きいとは言えない。
デザインはカラーリングも白と青で統一されていて非常に洗練されているが、そのデザインが店員のオペレーション用として最適解には思えない? 唯一良い点は、一目で理解できないピクトグラムではなく、各ボタンを文字にしているところくらいか。

動作の遅延は端末の問題もあるだろうが、UIは端末の状態とは関係がない。うーんと思いつつ、カッコイイが不親切なアプリと店員との格闘をしばらく眺めることとなった。

■業務用アプリはデザインよりも「簡易さ」を優先するべき

私はこの業務用アプリを使ったことがないので、あくまで傍目からの判断でしかないが、ほとんどがテンポラリースタッフというUNIQLO店内で使われるアプリとしては不親切な仕様と感じた。まして、彼女のようなデジタル機器に疎そうな年配女性を雇うのならなおさらだ。

例えば。上記で「ボタンが文字なのは良い」と書いたが、できれば各機能ごとに色をつけたほうがいいように思う。

「予約」というボタンがあったとする。このボタンの機能を説明する際、メンターは新人に「予約のボタンを押して~」と教えるだろう。しかし、例えばこのボタンが青系統の色で、さらに「予約」という文字が書いてあれば「青いボタン」と教えれば良いことになる。

当然だが、他の機能の色は赤系統、緑系統と変える必要がある。それにより、新人は機能を「色」で覚えられるからアプリ操作も容易になるし、特別な用語を覚える必要がない。なによりヒューマンエラーが激減する。

前述したが、UNIQLOはテンポラリースタッフを多用する。
しかし彼らは長期に勤めてくれるとは限らない。季節の節目などで、定期的に人員の入れ替えが発生することも多いだろう。
一方で、勤めはじめたなら即戦力として働いてほしいという会社側の意向もあるに違いない。

ならば容易にオペレーションが修得でき、使い方もそうそう忘れない、なおかつヒューマンエラーが出にくいUIにするべきなのだ。ゲーミフィケーションという考えを持ち込んでもいいだろう。

もちろん、操作を正確にやらない店員、使い方を覚えない店員にも非はあるだろうが、システムやデザインの工夫で解決できるなら、工夫するべきだと思ったのだ。

 

■業務システムの改善を後回しにする会社は多い

…などと偉そうに言っているが、これが容易な事ではない。

ヒューマンエラーや業務のトラフィックがつまる原因を探っていると、必ずエラーを起こしやすいシーケンスに突き当たる。
原因はいろいろあるが、ほとんどはオペレーターの注意不足だ。
当然、「もっと注意して作業をしてください」などと言う事になるのだが、本当にそれで良いのだろうか?

同じところで、誰とも限らず事故が起きるのなら、人的要素でエラーが起きているとは考えにくい。間違いなくシステムやUIのせいだ。

同様の事があれば、私は「注意しなくても事故らない」方法を考える。
もちろん最低限の正確さ、注意力は必要だが、システムやUIデザインを改修し、必要なオペレーションを減らせれば、現場の人間が要求される正確さや注意力は低減する。ヒューマンエラーの発生を押さえることもできるし、オペレーターの負担も下がるので、業務効率の向上も期待できるだろう。

もちろんコストとの相談になるが、少しの工夫で改善できるなら、やらない手はない。

しかし、会社というのは「組織」である。誰かの発想がすぐに結実するわけではない。「組織」が大きくなればなおさらだ。

実は、前職でも似たような状況があった。あるシーケンスでの事故が多かったため、社内システム改修とヒューマンエラー削減策を提案した。

しかし、会社側(上司)はデザインの改修を良しとせず、現在の白を基調とした今のすっきりとしたデザインのままにすると決定、私の提案は退けられた。

上司いわく「視認性を優先した」ということらしい。ヒューマンエラーはその後も続出した。そのたびに現場に注意勧告がきたが、それは上司の主張に対する皮肉だろう。視認性が良好でないから、事故は起きている。注意を発することは、すなわち視認性の低さに帯する何よりの証明ではないのか。

社内システムなど、よその誰が見るわけでもない。洗練されたデザイン性よりも、徹底的にヒューマンエラーの原因を潰すUIデザインを目指すべきだ。

オペレーションする人間が気をつければいい、などと言う人も多い。正確なオペレーションをするのが意識の高い仕事のやり方と言う人もいる。
私からすれば、カイゼンを怠った愚か者の発想だ。
しかし、そのような会社や責任者が多いのもまた事実だ。

もちろんUNIQLOがそうだとは言わない。ただ、アプリの操作に四苦八苦している彼女を眺めていたら、昔話を思い出しただけである。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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