【リポート】セクシー男優と南相馬の「今」を考える。東日本大地震チャリティーイベント2017(その2)

[スポンサードリンク]

震災が起きた2011年の8月。

近所のスーパーで、一山300円という破格の桃が売られていた。
ポップには「福島産」の文字が。
破格の値段なのに、売れている様子はない。一山5つで300円。一個あたり60円だ。本来なら、1つで300円程度で売られている桃。しかも福島産の桃はブランド品だ。味も良い。高級な果物として、福島の桃は愛され続けてきた。

原発事故の前までは。

ポップには安全ですと書いてある。だがこの価格だ。捨て値で売られていることは、青果業の人間でなくても分かる。

2011年は、今よりもはるかに「放射能の恐怖」が日本中を覆っていた。誰もが放射線による死を意識した。
放射能についての専門的な知識、特に安全についての情報を知ろうとすればするほど、悪質なデマにひっかかる。福島産を食べれば死ぬ。子供に食べさせると癌になる。デマのSNSに乗って爆発的にパンデミックし、同時に福島への偏見も広まっていった。
全量検査を行えど、今度はその精度やチェック漏れを指摘する人間が現れ、福島の努力をどこまでも否定する。

だからいつになっても偏見は消えない。デマも消えない。それは、6年たった今でもなお続いている。しかし、その一山300円の桃を食べた私は、今もって放射能症の兆候は見られず、とりあえずは元気に生きている。


今回も引き続きも「東日本大地震チャリティーイベント2017」の様子をリポートする。
吉村卓さんの会社、株式会社YOSHIMURA主催で、代々木監督率いる面接軍団と、株式会社リンゲージの田中章弘さんをお迎えして、南相馬の今をディスカンションするイベントだ。オークションを含めた全収益は、福島の復興基金に寄付される。

なお、代々木監督は第二部のチャリティーオークションからの登壇となる。第一部は吉村卓さん、森林原人さん、佐川銀次さん、片山邦生さんという顔ぶれだ。

前回の記事では、南相馬市の人口の問題と、いまだもって農産物への偏見が消えていない現状が語られた。

【リポート】セクシー男優と南相馬の「今」を考える。東日本大地震チャリティーイベント2017(その1)

今回は、セクシー男優の独壇場とも言える、被災地の性をめぐる話だ。

 

■男性ばかりの組織につきまとう性の問題

全国から集まってきた除染作業員は1万人超と言われる。うち6000人がその日の作業にあたる。

言うまでもないが、そのほとんどが男性だ。中にはサポート業務に従事する女性もいるが、最もマンパワーを必要とされているのが現場作業。当然力仕事になるので、男性の方が多くなる。

そして男性について回るのは、「性欲」に関わる問題だ。

性衝動は本能であり、人間が人間である以上、避けて通れない問題である。
そして昔から、男性が多く集まる組織では、組織内での性欲解消の問題とそのソリューションが講じられてきた。

わかりやすいのが軍隊だ。

銃火器の発達は、ただの人を簡単に兵隊にしたてあげることが可能となった。そのため戦争は国をあげての総力戦となり、国民男子には徴兵の義務が課せらるようになった。

そして十数万~百万規模の男性を集めた軍隊にとって、性欲解消と性病予防は優先的すべき課題となった。

社会通念が変化したことにより、それまでは常識とされてきた戦時中の性的暴行は恥ずべきものとする意識が強まった。さらには戦力の維持のため、兵士たちを梅毒から守る必要に迫られていた。

そこで各国の軍隊は兵士の性欲の管理につとめることになる。軍属の慰安婦やコンドームの支給はその一環である。それでも、梅毒によって部隊が壊滅するなどの事態が発生。特に第一次世界大戦では、戦域が欧州全土に広がった結果、爆発的な梅毒の蔓延を引き起こした。

たびたび問題になる日本の従軍慰安婦も、兵士の性欲と性病罹患を防ぐために雇われたプロの慰安婦である。どのような経緯で慰安婦となったかという問題はさておき、日本軍は慰安所と慰安婦によって性のトラブルのソリューションとしたわけだ。

日本軍の性病対策については、下記の本に詳しい。写真も豊富で当時の慰安所の様子をうかがい知ることもできるので、軍による性欲性病コントロールについて知りたい方には一読をおすすめしたい。

男性が集まる組織(地域)と性欲対策は、切っても切れない関係なのである。それは除染作業者にしても同じである。

 

■事件が起きても対処が後手に回らざるを得ない理由

余談が過ぎたが、南相馬の問題に戻る。

すでに被災地では、作業員による性的暴行も発生している。

以下は2014年11月16日にNHKのWebサイトに掲載された女性乱暴した容疑で男2人逮捕の記事の魚拓だ。

福島市で25歳の女性を空き地に無理やり連れ込み乱暴したとして、警察は、30代の除染作業員の男2人を婦女暴行の疑いで逮捕しました。
逮捕されたのは、いずれも福島市矢剣町に住む同じ会社の除染作業員の(中略)2人です。
警察によりますと、2人は、今月10日の午後11時ごろ、福島市内でウォーキングをしていた25歳の女性を無理やり空き地に連れ込んで乱暴した婦女暴行の疑いがもたれています。
被害があった日に女性が警察に被害届を出し、捜査したところ、日高容疑者と高橋容疑者が乱暴した疑いが強まったとして16日、逮捕しました。

警察によりますと、「2人で乱暴した」と容疑を認めているということです。

11月16日 12時28分

このニュースだけだと、除染作業員の環境と女性暴行の因果関係を立証できないが、全く関係がないとは言い切れないだろう。

もちろん、全ての作業員が性的暴行を起こすような危険性を持っているわけではない。自らを律している方が大半なのは言い添えるまでもない話だ。

しかし、何らかの方法で性欲の解消ができていれば、上記の事件も起きなかった可能性はある。

性欲の管理に対し、国も自治体も消極的なことは問題である、と田中さんは言う。

性的なコンテンツに触れる機会も少なく、ましてや女性とのふれあう機会がない作業員にとって、さらなる我慢を強いるのは酷な話だ。普段の作業が過酷ならなおさらといえる。どれだけ肉体が疲れていても性欲が衰えないのは、第一次世界大戦以後の戦争を見ればいくらでも例示できる。

田中さんは南相馬、もしくは周辺地域に作業員が楽しめる歓楽街を建設するべきだと主張する。たとえば、ビニ本の自動販売機を置くだけでも変わってくるのではないか、という。
実際、視察に訪れた某国会議員にこの件を提言した。したしその議員は苦笑いしながら断ったそうだ。
これに話に対し、佐川銀次さんは「その議員だけでは建設の確約ができないから、返答を避けたのではないか」と分析。その議員自身、作業員の現状を鑑みて、歓楽街の必要性は分かっているかもしれないと推察し、性に蓋をする日本の悪癖がすべての原因ではないか、と看破した。
そこに日本人特有の精神論や忍耐、そして悲劇を好む性質が加わる。
被災地は悲惨であるべきで、そこには苦しい生活に耐える人たちがいる。娯楽なんて楽しんでいるヒマなどない。もしくは楽しんではならない、という、「かわいそうな被災者像」を求める考えがあるのではないだろうか。
その考えが一層、歓楽街を作るという提案に強烈な違和感を抱かせるのかもしれない。
しかし、除染作業員や、彼らが居留する南相馬市からすれば、それは切実な希求なのだ。
■性が脅かされているのは、作業員ばかりではない
同トークでは、南相馬の居住者の性の問題も明らかにされた。
南相馬のラブホテルは、現在作業員の宿泊所として借り上げられているケースが多い。
そのため夫婦間(特に子供がいる世帯)や恋人同士で性交渉を行える場所が急速に消えている。
そのため、居住者がいない破れ屋に忍び込んで行うケースも増えているそうだ。
性行為を行える相手がいても、この状況なのだ。南相馬をめぐる性の問題は実に根深いといえよう。
銀地さんは「被災地以外でも日本人全体の性の勉強が必要。性の意識改革は国が主導すべき。性の問題は忌避されがちだがそれでよいのか」と総括する。
おおっぴらに性の問題を語ることもすら許されない日本。
日本人、いや、日本の社会は性については、いつも目をそらす。それは不行き届きな性教育の現場や、昨今の性的コンテンツをめぐる一連の議論でも明らかだ。目をそらし続けた結果が性への知識不足であり、旧来の道徳や人権意識ばかり肥大化した的はずれな性の議論である。基本的な知識がないのだから、性病の蔓延もゾーニングの問題も解決しない。それは放射能とその偏見に苦しむ福島の関係性と類似している。
そして、性を直視しない日本の体質が、作業員たちや被災者たちの性を縛り続けているのだ。
次は、雇用と補償というデリケートな問題に、面接軍団が挑む。
「その3」の完結編に続く。
(文/団長)

団長

「てらどらいぶ」管理人。 ゲーム開発のディレクター、動画配信サイト管理人のプロデューサーなどを歴任。 心のゲームは「ウィザードリィ」と「ザナドゥ」。ドラクエとFFならドラクエ派。

コメントを残す