【リポート】セクシー男優と南相馬の「今」を考える。東日本大地震チャリティーイベント2017(その3)

3/12に新宿レフカダで開催された「東日本大地震チャリティーイベント2017」のレポートも今回で最終回を迎える。
前回までの記事はこちらから。
今回はイベント内で語られたもっとも重い話題、「雇用と補償」についてお伝えする。
南相馬がおかれているいびつな人口構造と就労問題、そして補償の話に面接軍団が切り込んでいく。
■避難指示区域が解除されても進まぬ住民の帰還

震災後に若年層の多くが避難した南相馬では、経済が停滞している状況が続いている。20代~30代が担っていた産業と消費がぱったりと止まった状態になってしまったというのだ。

この世代は子育てを行っている世帯も多いため、子供を放射能の影響から逃すために遠方に避難した方が多い。そもそも地元が地震と津波、原発事故で壊滅状態となり、仕事もなくなってしまった若年層、特に妻子を養わなければならない世帯が南相馬にとどまるメリットはなかった。

さらに森林さんは「除染作業員を差し引いた、現在の男女比はどれくらいですか?」と質問。それに対し田中さんは「子供と一緒に逃げた母親が多いため、地元の女性は少ない」と答えた。
この質問は、南相馬の経済状況を把握するのに要点を衝いたといえる。
作業員は、実は地元経済という観点から見ると、消費者以上の役割を果たさない。彼らの労働力は除染など、原発事故に関わる事柄以外には使われないからだ。
次に就労の面。地方でも男女の働き分けは進んでいる。女性が少ないとなると、女性が担うべき分野の産業に圧倒的な人手不足が発生していると予想される。
三つ目は消費の面。当然だが、男性と女性の需要の違いは大きい。食べ物にしても好みが分かれる。生活用品もそうだ。つまり女性が少ないと、女性の消費によって支えられていた需要と産業(例えば美容院など)の回復もままならない。
中には田中さんのように、妻子のみを震災区域から避難させ、自身は南相馬に残るという選択をした人も少なくない。ただ、残留を決めた方よりも避難した人が多く、その大半は今だ南相馬に帰還していないという。
■南相馬を覆う深刻な労働者不足。
若年層の離脱、男女比の偏りにより、労働力不足が浮き彫りとなった。
まず女性が不足しているという現状が重要だ。特に女性が就労比率が高い飲食店や介護は、働き手が圧倒的に足りない現状となっている。コンビニすら働き手がおらず、ハローワークでの申込みすらないという。
一方で、震災後も残り続けて商売をしていた店舗にお客が殺到する。営業している店舗が少なく競合がいないため、数少ない営業店舗が需要の全てを呼び込んでしまうためだ。
一見景気の良さそうな話に見えるが、そうではない。需要過多となった結果、店舗でのオペレーションが間に合わない。提供できる商品も限りがあるので早々に品切れとなる。なにより、需要に対して供給が少なすぎるため、消費が頭打ちとなる。供給を受けられない消費者のフラストレーションも強いはずだ。
このような状況になった一因として「被災者は東電からの賠償金がもらえるので、働く必要がなくなったため」と田中さんはいう。
東電の賠償は逸失利益補償であり、得るべき利益を失ったことに対する補償である。
つまり、労働して収益を得ると「利益が逸失していない」ことになり、補償が打ち切られてしまうのだ。
要するに、賠償金以上の世帯年収が見込めないのなら働かない方が良い、という事になってしまうのだ。
■賠償は諸刃の剣になりつつある

もちろん、補償が良くない、賠償を請求している方が悪いわけではない。
実際に原発事故により土地も家財を失っている人たちがほとんどなのだから賠償は当然のことである。被災者も受け取る権利がある。

だが、補償が招いた労働力不足が、街の再建を停滞させているのも事実だ。そして経済復興の立ち後れが被災者の自立を阻害するという悪循環に陥ってしまっている。

一方で、補償がもらえる立場であるにも関わらず、街の立て直しのために働いている方もたくさんいる。
被災者の自立をどう促せばいいのか。銀次さんは「労働やチャレンジへの支援ができればいいのでは?」と提案する。
労働より補償に目が行ってしまうのは、働くことに対して精神的・経済的なメリットが感じられないためではないか。
田中さんはこう答える。「市民の間でも、補償をもらい続けようとする気持ちと、市民みんなで街を作りなおそうという気持ちがせめぎあっている」と。

今は働かなくてもお金が入るが、補償もいつまで続くか分からない。除染や廃炉が進めば、いずれ補償は打ち切られる。
それまでに南相馬の経済が回復しなければ、結果的に収入の途を失うことになりはしないか。

補償はあくまで一時的な支援だ。恒久的な収入ではない。それは補償を貰っている人たちも分かっている。このままではいられないことも理解しているだろう。

しかし、復興に向けての新たな一歩が踏み出せない。その一歩を踏み出すこと、得られるものと失うものが釣り合わない。そこに労働することで得られる経済的な補償と、心理的な満足感を与えることで、自立を促せるのではないかと銀次さんは考えたのだ。難しい業界を生き抜いてきた経験から得られた経験則とでも言おうか、ともかく慧眼である。

一方で、人口回復・労働力確保に向けた新たな取り組みもはじまっている。

それがトライアルステイ事業だ。
名前の通り、試しに南相馬に住んでもらうというものだ。
これにより、南相馬への移住を促進し、人口問題の解決を図ろうというものである。
すでに制限解除を受けたように、南相馬市は安全な土地となっている。放射性廃棄物の最終処分場が決まらないため、がれきを入れたままの積み上げられたトン袋も残されているが、

ただ、ここでもまた賠償の問題が影を落とす。

トライアルステイ事業は、空き家となった住宅を移住希望者に提供することで
しかし、空き家でも資産であることには変わりはない。所有していることで賠償金の対象となるため、手放さないオーナーも多い。せっかくのトライアルステイ計画だが、試用居住が確保できず、コーディネートが進まないという実情があるそうだ。

補償は薬となり毒となりて、南相馬と被災者の間に複雑な事情を生んでしまっている。

■本当の復興に向けて

「福島だけに寄り添う復興は、もう終わりにしたい」と田中さんはいう。
福島を、そして南相馬を、いつまでも「被災地」のままではおけないと言うのだ。
田中さんはいう。「相双(地方)からすれば原発がなくなるまでは危機は続く。しかし、物理的の支援はもう断ってもいいのではないのか。そして経済的に厳しくても、メンタルだけは自立を考えてもいいのではないか。政府側も自立を促す政策を進めてほしい」
その言葉には、故郷の南相馬を憂う田中さんの強い意志が込められていた。
いつまでも被災地のままでは、復興も進まない。同情されるまま支援を受け取り続けては再スタートはきれない。
南相馬市が震災前の状態に回復するにはまだまだ時間がかかるだろう。それまでの道のりは困難を極めるに違いない。
南相馬の抱える内憂難題はとても重く苦しいものと感じられた。しかし田中さんのような前向きな人たちが、いずれそれらを乗り越え、復興への道筋をつけていくのだろうと思うと、未来はそう暗いものではないように思えた。
外部の我々としてはできる最大の被災地支援は、福島、被災地、そして原発事故を正しく理解し、それを身近な人たちに伝えることだ。今回のイベントは、原発や被災地、そして被災者情報に関するリテラシーの大切さを教えてくれた。
募金だけではない。正しい情報を広めることも、立派なチャリティなのだ。

本イベントはセクシー男優の吉村卓さんが主催したイベントである。さらに性愛について独特の哲学を持つ代々木監督率いる面接軍団が全面協力している。
セクシービデオ業界も福島同様に、強い偏見に晒されている。いまもなお人権や法的な問題で難しい局面を迎えている。
その中でもがき、苦しみ、そして新たな道を見いだせた彼らだからこそ、偏見に苦しむ被災地の現状を理解し、伝えられたこともあっただろう。
私のつたない文章力でどれだけ伝えられたか、正直自信がない。田中さんの考えや卓さんや代々木監督たちの思いが少しでも伝われば幸いである。
(文/団長)

団長

「てらどらいぶ」管理人。 ゲーム開発のディレクター、動画配信サイト管理人のプロデューサーなどを歴任。 心のゲームは「ウィザードリィ」と「ザナドゥ」。ドラクエとFFならドラクエ派。

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