法的措置という便利な言葉を使い、他者の自由を奪う人権主義者の矛盾

※例によって主語のない記事である。何が言いたいのかは、おのおので考えていただきたい。

矛盾って言葉がある。何でも貫く矛と何でも防げる盾を売る商人に、「その矛で盾を突いたらどうなる?」という話だ。これにより、矛盾とはつじつまが合わないことを指す言葉となった。
パラドックスという言葉がある。前提と結論が合わない事柄を示す言葉だ。有名なのはアキレスと亀のパラドックスだ。Wizardry3(FC版は2)にも登場したゼノ(Xeno)ことゼノンが提唱したパラドックスで、先行する亀には俊足のアキレスでも永遠に追いつけないという命題だ(余談だが、Wizardryには哲学者の名を冠するモンスターがちょいちょい現れる。有名なのはスパルタのリュクルゴス(FC版だとだとライカーガス))。

矛盾というものは意図せず現れるもので、これは人間の脳が都合良く物を忘れる機能を備えているからとも言える。そのため、矛盾そのものを悪とするのは難しい。その場を取り繕うための嘘と同じで、どんな人間も理論的に正でありつづけることが難しい以上、言葉の前後に矛盾を含んでしまうのは、仕方が無いことだと言える。

しかし、世の中には意図して矛盾やパラドックスを呈して何食わぬ顔をしている人達がいる。残念ながら。

人間、もしくは法人や組織には「自由」という権利がある。日本国内ではあらゆる人民には等しく自由が保障されており、その枠内で何をやろうが、自己で責任がとれるのであれば自由なのである。

しかし自由というものは、遂行するにあたり相手の自由を少しだけ奪う。たとえば誰かに道を譲ってほしいと思った場合、自身はまっすぐ歩く自由を行使するが、対向者はまっすぐに歩く自由を奪われ、横に退くことを強いられる。
これらの自由をどのように履行し、どのように折り合いをつけるのか。自由主義国の住民である日本人は、その折り合いを道徳とか社会規範という言葉で学ばされる。また、個々の経験によって、何が正しくて何が間違っているのか、という判断を下せるように成長する。

だが、これらの自由を平然と踏みにじる言葉が、最近軽々しく使われるようになった。

それが「法的措置」である。

自らは自由権、たとえば報道の自由であったり、言論の自由を謳いながらも、他者の同様の自由を「法的措置」という言葉で平然と脅迫する。明らかに前後に大きなパラドックスがあるのだが、彼らの頭の中では、どうやらパラドックスは生じていないらしい。

法的措置という言葉は、非常にビジネスライクである。そこにあるのは、利益と不利益の分水嶺のみだ。そして行使する側も、容易に利益を得るための方法として「法的措置」という言葉を使う。

後難を恐れる傾向にある日本人は、法的措置という言葉を極端に恐れる。ゆえに、法的措置という言葉は切り札として有効であり、自己の利益を護る言葉としては、「通常兵器としては最強」と言う程度には強い言葉、そして行動となりうる。

しかし、本来法的措置という言葉は、抗議のために使うものではない。対抗する相手と折衝を持ち、その結果断絶に至った場合に使われる言葉である。

だが、昨今はこの法的措置という言葉が、ディスカッション以前に使われることが多くなった。コミュニケーション能力という曖昧な概念が就職市場を支配して久しいが、これだけコミュニケーションが重要視される現代にあって、前提となる話し合いをもせず、簡単に断絶と脅迫を繰り返して止まない人間がいるのは、自由主義国家の限界を示すものとも言える。

言うなれば、彼らは自己の自由を謳歌したいだけのコミュニケーション障害的な存在なのだ。そんなコミュニケーション障害を煩っている、自己愛に満ちた人達が自らの自由のみを謳歌し、気に入らないものに法的措置の切り札を投げまくっている現状を見れば、果たして本来の報道とは、人権とはと考えなければならない。

言い切ってしまおう。話し合いの前に「法的措置」という言葉を使う人間は、ただの脅迫者である。

たとえば掲載された記事に対し、自分たちの不利益になるからと法的措置をちらつかせて記事を撤回させる、もしくは書き直しを強いる。このような事が、去年から私の周辺で何度か発生している。
もちろん、全て私が体験したことではない。言論に携わる友人達が「法的措置」という言葉で何度も記事を撤回させられているという話も聞き及んでいる。

たとえば、ある人達の人権を保護しようと盛んに発言している人権派の人達が、彼らの構造的な問題、もしくは発言の矛盾、行為のほつれ、もしくは利益に関する指摘を突いた記事に対し、盛んに「法的措置」をちらつかせて記事の撤回をさせているという。もしくはその問題を取材する編集チームが抗議によって解散させられたとか、どこまで本当かは分からないが、黒い話も聞こえてくる。さらには自分たちに都合の悪いものは正誤問わず法的措置をちらつかせて封殺しているというのだから始末に負えない。

なお、この記事に主語がないのも、法的措置を避けるためである。
おわかりいただけるだろうか。これが「法的措置」に怯えきった世界のなれの果てである。

彼らは分かっているのだろうか。そのような強権を発動しているうちに、自身ら存在や活動そのものの信用が損なわれていくことを。言葉の暴力に屈した人達のヘイトがうずたかく積もっていくことを。抗議によって周囲を敵だらけにし、いずれ孤立することを。

なお、実際に法的訴訟を行うつもりもなく、相手への威嚇として法的措置という言葉を使うのは脅迫罪に値する。便利なマジックワードだと思って他者を踏みにじっている人間には、いずれ罰が下ることになるだろう。

(文/団長)


団長

「てらどらいぶ」管理人。 ゲーム開発のディレクター、動画配信サイト管理人のプロデューサーなどを歴任。 心のゲームは「ウィザードリィ」と「ザナドゥ」。ドラクエとFFならドラクエ派。