【ポンこれ】貴重な新人を自殺に追い込む暴力研修

非常にポンこれ向きのニュースが報じられました。

ゼリア新薬の22歳男性「ある種異様な」新人研修受け自殺 両親が提訴(Yahoo!ニュース)

バズフィードさん、ホント頑張ってますね。ダビデ像の股間アップのプロモーションはどうかと思いますが。

今回とりあげるニュースはどんなものでしょうか。

製薬会社・ゼリア新薬工業に勤めていた男性Aさん(当時22歳)が、新入社員研修で「過去のいじめ体験」を告白させられ「吃音」を指摘された直後の2013年5月に自死し、「業務上の死亡だった」として2015年に労災認定を受けた。

労災認定まで2年、提訴まで4年ととんでもない時間がかかっていますが、ご両親側はゼリヤ新薬や研修を担当したビジネスグランドワークス社と折衝を続けた結果、真摯な対応をいただけなかったので提訴に踏み切ったというこということでしょう。両社とも親御さんのことナメてかかってたみたいですね。結果として裁判沙汰にされ、全国にその悪行をバラされてしまったのだからリスクヘッジもコンプライアンスもへったくれもない結末になってしまいました。とんだ赤っ恥です。

 

■未来ある若者の人生を奪う「暴力研修」

自殺のきっかけとなったAさんが受けた問題の研修内容は以下の通り。

中央労基署の認定によると、労基署が注目したのは、4月10日~12日の3日間、ビジネスグランドワークス社が請け負って実施した「意識行動改革研修」。その中で、Aさんの「吃音」や「過去のいじめ」が話題になった。講師から過去の悩みを吐露するよう強く求められた上で、Aさんはこうした話をさせられていたという。

Aさんは、研修報告書に、次のように書き残していた。

「吃音ばかりか、昔にいじめを受けていたことまで悟られていたことを知った時のショックはうまく言葉に表すことができません」

「しかもそれを一番知られたくなかった同期の人々にまで知られてしまったのですから、ショックは数倍増しでした。頭が真っ白になってその後何をどう返答したのか覚えていません」

「涙が出そうになりました」

一方、研修の講師は、Aさんの報告書に赤字で次のようなコメントを残している。

「何バカな事を考えているの」「いつまで天狗やっている」「目を覚ませ」

 

以前てらどらいぶでも記事にしましたが、この手の暴力的、強圧的な新人研修というのは、新卒社員に社会人の厳しさを教えるという名目で行われます。

【ぽんコレ】新社会人の「人間の尊厳」を奪う苛烈な新人研修の意味を問う

上記記事にも書きましたが、新卒社員は確かに社会人としては未熟でしょうが、それでも22年人間と生きてきた結果、様々な矜持や自信、個性をもっていきてきたわけです。
それらを「社会人として自覚してもらうため」と称して、若者の人間としての尊厳をごりごりすりつぶすのがこの手の暴力研修です。

人材コンサルタントをやっていた経験から言わせてもらうと、この手の研修は非常に無駄です。若者が萎縮し、本来持っていた持ち味を失ってしまうからです。

そもそもその子を採用した理由は、新人の個性や能力であったはず。それをわざわざリセットすることがどれだけバカげているのか、小学生だって分かる話です。たぶん。

にもかかわらず、この手の暴力研修がまかりとおっているのでしょう?

理由は簡単です。研修導入を決めている人事のお偉いさんは、このような暴力的な研修受けたことがないからです。

 

■なぜこのような研修を外注するのか

この手の研修で外部のコンサルティングを使う理由は、会社側が直接やるとパワハラ認定を受けるからです。
会社が新人に対して「プライドを捨てろ」「いつまでも天狗になっている」と言って強圧的な研修を行えば、パワハラにうるさくなった昨今、どのような問題を被るかわかりません。それこそ電通の過労自殺のような結果を招きかねません。

しかし、コンサル会社が入れば、コンサル会社のカリキュラムであって当社としては発注しただけど言い張れるわけです(なお、同様の手口にリストラを人材コンサルに外注するという方法もあります)。

その上で今回の事件に対するビジネスグランドワークス社の言い分はこうです。

一方、ビジネスグランドワークスの宮崎雅吉代表は、BuzzFeed Newsの取材に次のように回答した。

研修内容は問題がないものでした。労基署からは事情聴取がなく、労災認定は事実誤認です。当社の研修が問題なく終了した後、ゼリア新薬で実施した研修中に不幸があったと認識しています」

研修は3日間の日程で、4月10日が朝9時から夜9時まで、4月11日は朝6時から夜9時まで、4月12日は朝6時からで、午後4時に解散した。

宮崎代表は「いつまで天狗やっている」「バカヤロー」等の言葉はあったと認めたが、それは「本人に気付いてもらうため」だと説明。研修中に泣き出す人もいるという点については、「審査暗記したものを時間内に発表する審査があり、その審査に合格した人が感激して泣き出す人はいます」とした。

出ました。「暴言は本人に気づいてもらうため」
DVでもなんでもそうですが、暴力を容認させるために「あなたのため」という言葉を使いたがる人間にろくな人間はいません。先日公開した漫画「レッド」のレビューも読んでみてください。共産主義者が総括と称して何をやって、どうやって同志を殺していったのか、よく分かりますので。

70年代の学生運動、そして共産主義の狂気が分かる怪作「レッド」

本人に気づいてもらうために暴言を容認するという姿勢からしてイカれてますが、これはビジネスグランドワークス社に限らず多くの新人開発プログラムを持つ人材コンサルタントに共通する部分です。

要するに、それだけ暴力研修にビジネスニーズがあるということなのです。

 

■新人育成に暴言なんて不要!

そもそも、新人研修を外注する時点で間違っているのです。だって、それなりの予算書けて採用した貴重な「人財」ではないですか。

これから何十年と会社を支えてくれる人材です。そんな人材を暴力的な研修に送り込み、社会人としての自覚を身につけさせるという誤った幻想をぶち殺してやりたくなります。そもそも修正すべきは若者の価値観ではなく、いまだ軍隊的な研修で若者が育つと考えてる旧態依然とした考え方そのものです。

断言しましょう。新人育成に暴言なんて不要です。

私が人材コンサルタントをやっていた時に心がけていたのは、クライアント新人ひとりひとりと膝をつき合わせて話をし、どのようなキャリアパスを考えているのか、社会人として不安なことはあるのかをしっかり聞いた上で、その子の得意分野は徹底して褒めてあげる、不得意な部分は一緒に解決策を考えてあげる、ということです。

これは心理の問題になるのですが、「あなたのことをしっかり考えていますよ」というポーズをとることで受講者の信頼を得ることができます。この人だったら話を聞いてもいいと思わせることができます。これができれば、強圧的な態度で社会人の厳しさを教える必要なってありません。

褒めてあげるというのは大切な事です。「誰かに認めてもらえた」という気持ちが、次の仕事のモチベーションとなります。新卒の子だったら、この会社でがんばっていきたい、という気持ちになってくれるはずです。

 

そこを踏まえてビジネスグランドワークス社の研修内容はどのようなものかというと…。

原告たちの聞き取りに対し、ゼリア新薬の新人研修担当者は、「自分も受講したことがある」として、次のように供述したという。

「軍隊みたいなことをさせる研修だなと感じました」
「いつも大きな声を出す必要があり、機敏な動きを要求され、指導員が優しくない」
「指導員は終始きつい口調」「大きな声で命令口調だということです」
「バカヤローといった発言も多少はあった」
「最終的には感極まって涙を流す受講者も出るような研修」
「研修会場はある種異様な空間でした」
「個人的にはもう受けたくない」
「途中で体調不良者が出ることもあります」

中央労基署は、このビジネスグランドワークス社の実施した「意識行動改革研修」の中で「相当強い心理的負荷があった」と認め、それが原因でAさんは統合失調症を発症して、自死に至ったと結論付けた。

そもそも意識行動改革研修というネーミングだけで失笑ものです。

「個人的にはもう受けたくない」の一言が全てを物語っていると思います。そして自分で受けたくない研修ならやめろよと。
(おそらくインタビューに答えている担当者にその権限はないかと思いますが)
なにより二度と受けたくないって、講師と受講者の信頼関係がまったくできていないということですよね? 二泊三日も一緒なのに。

そんな研修になんの意味があるんでしょうね?

そもそも論ですが、実際ビジネスグランドワークス社の研修を受けたことで新人のスペックが向上したのかとか確認しているのでしょうか。
なにかとKPI、KGIが重視される世の中ですが、これら研修を受けさせることで、どれだけの効果があるのか、人事にせよ会社のお偉いさんにせよ、数値化して具体的な成果を確認しているのでしょうか??

 

先にも述べましたが、新卒教育を外注するのはパワハラ逃れという側面があります。そういう裏道をつかって新人を育てようと考えている時点でゼリヤ新薬の新人教育のウェイトの比重がよく分かる話ですが、これはゼリヤ新薬にかぎらずビジネスグランドワークス社をはじめとした人材コンサルに新人教育を任せている会社全般に言えることです。

それで本当に、人を育てているなどと言えるのでしょうか?

最近の若者はドライです。実際に会社に入ってみて、自分にメリットがないと分かった途端に見限る子も増えてくるでしょう。
そしてこれからは若者が減り続けます。そんな安易な理由で会社をやめたとしても、ひろってくれる会社はいくらだってあるのです。
これからは「最近の新人はすぐやめる」などと言っていられなくなります。やめられたら上司の指導力や統率力が疑問視され、評価がさがるようになるでしょう(すでに、そのような評点をつける会社も現実にはあります)。

修正すべきは新入社員の鼻っ柱ではなく、安全なやり方で若者のプライドを折り曲げてやろうと考えている会社側だと思いますけどね。私は。

まして社員の過去の失敗をつまびらかにして鼻をへしおり、ストレスで自殺に追い込むなんてどうしようもない話です。
今回亡くなったのは男性社員だからこんなもので済んでますが、これがまた東大卒の美女だったらビジネスグランドワークス社もゼリヤ新薬もタダじゃ済まなかったでしょうね

本件、ポンコツ上司コレクターとして今後も注視していくことにします。

(文/赤蟹)

 


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。