【ネタバレあり】君の名は。長い月日を待ち続ける女は、やはりいい。

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1/3に「君の名は。」が地上波初放送。もちろん、きっちり録画したのですが、あまりにも良すぎて(「おもしろい」ではなく「良い」なのです)、昨日(1/7)一日で三回も視聴。さらにはマルチプラットフォームで視聴したいという理由で、Amazonビデオで購入してしまいました。

新海誠監督の作品は「秒速5センチメートル」を見て苦手意識を持ってしまったので、「君の名は。」も見ずにいたのですが…。なんともったいないことをしたのだろうと、今更ながら強く後悔しました。

各所でこの映画の素晴らしいところは語られていると思うので、ここでは私が一番心奪われた、エンディングの、瀧くんに「あの! 俺、君をどこかで!」と声をかけられて、「私も!」と涙を流して振り返る三葉の事を書こうと思います。

この「振り返り」は、瀧くんと三葉がなしとげた全てのこと、すなわちこの映画のプロットの全てを帰結させるものです。

彗星の落下から年月がたち、当時高校生だった瀧くんも大学4年生となり、就活の真っ最中。入れ替わりの「夢」から5年がたち、忘れてはならない「名前」すら思い出せない瀧。奥寺先輩に糸守に行った事をふられても、なぜ糸守にいったのか、そこで起きたことは何であったのかすら分からなくなっています。一方で糸守町に起きた出来事に漠然とした関心を抱き続けています。

その輪郭のない心のひっかかりが、瀧の心を5年間、ゆるやかに縛りつづけていました。

一方で糸守から上京してきた三葉も、はっきりと映像には出てきませんが、瀧と同じく、胸を離れない淡い感情を抱いたままで東京で暮らしていました。鏡の中の顔に面影を探したり、時折町ですれ違うと気配を感じて立ち止まることはあっても、お互いがあの入れ替わりの相手だと明確な確証を得られず、すれ違いつづける毎日が続きます。

そしてある春の日に、併走していた電車ごしにお互いの姿を認め合い、ようやく再会できたところで映画は終わります。

瀧と三葉は、もう思い出すことができない、それが人であったのか、現象であったのかさえ掴めない、なにかの心のつかえを抱いて大人になっていったのですが、この二人、特に三葉については「大人になる」という一言では簡単に収まらない事情があります。

これは瀧も同様なのですが、彼が過ごした年月は「たった」5年です。
しかし三つ年上で、瀧くんよりも3年はやく入れ替わりを体験した三葉は、当然ながら瀧くんより3年も長く、実に8年という長い年月を、記憶の片隅にひっかかった何かに囚われ続けました。

その3年という差は、最後の再会時にあらわれます。
それほど容姿が変わらない22歳の瀧に対し、三葉はすっかり大人の女性へと変わってしまいました。

二人の時間の差。そして過ぎていった8年という年月が、少女の頃から雰囲気さえ変わってしまった三葉のビジュアルに凝縮されます。その姿が、彼女の過ぎた時間、過ごした時間を感じさせて、胸にグッときます。

うろ覚えになってしまったものの、記憶の片隅に残る、気持ちを通わせた「あの人」を探し求めて、女盛りである10代後半から二十代前半をおそらく独り身で過ごし、ただひたすら名前を忘れてしまった「あの人」、すなわち瀧の面影を探していたのだろうと思うと、それだけでぎゅっと心が締めつけられます。

その切なさ、狂おしさが三葉の最後の泣き笑いとなって解放され、感動の余韻につながっていくのでしょう。

この、大人になった三葉が振り返って涙を流すシーンに魂を奪われた私は、このシーンだけをン十回と繰り返し見てしまいました。我ながら偏執的だなと思ってしまうのですが、それだけこのシーンは、自分にとって深く心に刻まれたシーンとなりました。

さらにオープニングを見返すと、最初からこの時の隔たりが謎かけとして描かれているのですよね。最後の三葉の笑顔を見たあと、オープニングで胸の前でぎゅっと手を握っている大人の三葉を見ると、二人を隔てた時間とその結末に思いをはせて、一層の感動が押し寄せてきます。

ホント、秒速5センチメートルのように、すれ違いで終わらなくて良かったです…。

この、三葉が8年という年月を待っていたというシチュエーションは、私が愛して止まないパー子(星野スミレ)に通じるものがあります。
パー子もおそらく10年以上、バード星へ行ってしまったみつ夫を待ち続けています。三葉も瀧くんとの再会を8年待っていました。
パー子も三葉も、再会できるという確約もないままに待っていたのですから、なんといじらしいことでしょうね。

多分私は、こういうシチュエーションがたまらなく好きなのでしょう。

 

いつまでも「夢」の欠片を抱き続けた瀧と三葉。そんな二人を見て、村下孝蔵の「初恋」の一節が頭に浮かびました。

「浅い夢だから、胸を離れない」

 

(文/赤蟹)

※画像はAmazonより


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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