下町ボブスレーと雰囲気販売型ビジネス

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下町ボブスレーがジャマイカ代表から使用拒否されたことでちょっとした騒ぎになっています。

事の顛末については詳しく解説してくれているサイトがあるので、そちらを参考にしてもらうとして、ここでは私が感じた事をつらつらと書き連ねてみます。

 

技術大国ニッポンのモノづくりのプライドと意地。いかにも日本人好みの話であり、長い不況に苦しめられた日本人のプライドを刺激してくれるナイスな企画…のはずでした。

しかしこの下町ボブスレー、なぜか日本代表には使ってもらえず、ジャマイカ代表に提供されることになっていました。

日本代表に採用されなかった理由は様々でしょうが、少なくとも現在日本代表が使っているそりよりも高性能であれば、まちがいなく使われているはずです。これは性能の問題というより企業や組織の政治の問題もからんでくるのでしょうが、ともあれ採用されなかったという事実は揺るぎません。

ここで日本人好みの企業小説であるならば、日本代表に使ってもらうために頑張る!というのが、本来の「ストーリーで売る」ではないかと思うのですが、下町ボブスレーは、おそらく実績優先、そして平昌オリンピックでの滑走を優先して、採用されやすい(だろう)ジャマイカに話を持っていきました。

これ、日本代表だと五輪に出れないからカンボジアに国籍を移した猫ひろしとやってること変わらないなぁとも思うのです。

 

ところで日本におけるウィンタースポーツの設備は多くありません。
スキーのようなメジャーなスポーツならまだしも、ボブスレーのコースとなると日本に数カ所あるかどうかだと思います(うち、国際大会で利用できるのは長野市ボブスレー・リュージュパークのみ)。
私の知り合いにエアリアルの国際競技選手となった方がいるのですが、練習するには福島の練習場に行かなければなりませんでした(その方は埼玉県民です)。

つまり、ウィンタースポーツをやるということは、温暖な日本では大変だということです。そのような状況下で、国際大会でも通用するボブスレーを開発するというのは大変な困難をともなうはず。ゆえに燃える展開もあるのだと思いますが、少々無理筋だったのではないかとも思えます。

それでも、例えば日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟と完全に連携し、オールジャパンで戦おうという体勢だったならまだしも、日本代表に採用されていないのだから、下町のモノ作りスピリッツを発揮したところで、有名自動車メーカーがビルドしたり、経験豊富な元ボブスレー選手が作るそりに勝てるはずがないと思うわけです。

ならば、いきなり世界水準のモノを目指さず、連盟と協力してボブスレー人口を増やすために安価なボブスレーを供給するとか、地ならしが必要だったのではないかとも思うのです。そのように使われていく中で蓄積されていく経験測があれば、いずれ世界に通用するそりも作れたはずです。

なぜ、成果を急いでしまったのか。最初から世界一という高すぎる目標を掲げてしまったのか。せっかくなら世界一のものを、という気持ちは製造に関わる人なら誰しも掲げる目標だと思うのですが、何にせよ段階というものがあるわけで、一足飛びに世界一になんてなれるはずがありません。

日本の製造業が世界屈指のオペレーションを誇るのは、そこに蓄積された経験があるゆえです。ならば下町ボブスレーが敗れさったのも、また経験の足りなさで説明ができるのではないでしょうか。

 

ところで、今回のボブスレー騒動で思い出されるのは、去年物議をかもしだした、世界一のクリスマスツリーです。

こちらも「氷見山中でひっそり立っていた弧木」だとか「落ちこぼれの木が世界一になる」とか、いろいろなストーリーが付加されていました。そこにとってつけたように、神戸の阪神淡路大震災の鎮魂とか復興の願いまで加わり、イベントテーマが何なのか分からない状況となり、糸井さんも老いたなって印象しか残らなかったですね。

ボブスレーとクリスマスツリーの「世界(一)」はまったくニュアンスが違うのですが、これらを売り込もうという意図は意外と似ているのではないかと思うのです。

ボブスレーの場合、それそのものが商品ではないのですが、下町ボブスレーというブランドが構築されていく過程で、そのIPを使ったコンテンツや付帯商品が生まれていきました。多くは下町ボブスレーを応援するという雰囲気のもとで動いていたと思うのですが、そのような空気ばかりが先行してしまったきらいはあるように思います。

こう見ていくと、製造の現場とは関係のないところで話が進んでしまい、ビジネス化されていく過程が見えていくなとも思えます。企業で言えば、製造や開発のセクションをさしおいて、ビジネス優先でスケジュールを引いてしまう、ダメな文系がハンドリングしているメーカーとでも言えばいいでしょうか。

今回の件、日本の物作りの敗北ととらえる向きも多いですが、私はそうは思っていません。どちらかといえば、世界一とか、付帯情報でビジネスしようとしている人たちが勝手に敗北しただけであって、ボブスレーそのものは別に負けてないと思うんですよね。
当然、日本の物作りが否定されたわけでもありません。足りないのは経験と時間であって、物作りの能力ではありませんから。

今回の件一つで見れば、確かに不採用という結果になってしまいましたが、これをバネに再起してこそ、日本人ごのみの展開だと思うんです。がんばってほしいなと思います。

(文/赤蟹)

 


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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